高周波・通信

主な製品

表面波フィルタ(SAWフィルタ)、高周波モジュール、樹脂多層基板(メトロサーク™)、コネクティビティモジュール

表面波フィルタ(SAWフィルタ)

表面波フィルタは、圧電基板上を伝わる弾性表面波を利用して、特定の周波数帯の電気信号を取り出すフィルタです。無線通信において各種機器がスムーズに遅延なく通信するためには、必要な周波数帯だけを通過させ、不要な周波数帯のノイズを取り除く特性を持った高性能なフィルタが求められます。

事業機会 強み
  • 5Gの進展による通信市場の拡大
  • IoT機器への無線通信機能の付加
  • フィルタの高周波化・複合化・小型化といった技術トレンドの進展
  • 豊富な製品ラインアップ、高いシェア
  • これからの通信市場で求められる優れた特性(高周波・広帯域・高減衰・低挿入損失・小型化)
  • 安定した品質
  • 業界最大の生産能力と安定した供給力

成長戦略

① 高付加価値品での差異化とコスト競争力の強化による収益機会の確保

独自のI.H.P.技術やTC-SAW技術に加えて、新規技術のアライアンス強化を進めるとともに、同業各社の台頭への対応として生産性向上によるコスト競争力の強化に努めます。

② XBAR技術を用いたフィルタの量産化

5Gや次世代Wi-Fi規格の普及にともない、帯域幅の広い高性能な高周波フィルタのニーズが高まることが予想されます。XBAR技術は高周波・広帯域での高い特性やSAWフィルタの製造工程との高い親和性を有します。フィルタの差別化技術として事業の強化につなげます。

③ 5Gで拡大する通信市場でムラタの強みを活かした新たな用途・お客様の探索

IoT化の広がりによりスマートフォン以外のさまざまなアプリケーションにも無線通信機能が搭載されるようになっています。また5Gの導入にともない、搭載される周波数帯の組み合わせがより複雑になるなど、フィルタに求められる技術の難易度は高まっています。ムラタの強みである技術力を活かして新しい市場でビジネス拡大を図ります。

<成長戦略の進捗> 競争環境の変化を受けた表面波フィルタ事業の戦略

2023年に入り、スマートフォンの生産台数の伸び悩みに加え、全体に占めるミドル・ローエンド端末の割合が増加しています。表面波フィルタの需要も同様に伸び悩む中、競合企業各社との競争が激しさを増しています。一方、ハイエンド端末では引き続き高機能化・高密度実装化によりモジュールの搭載比率も上昇しており、モジュール向けに小型で優れた特性を有する表面波フィルタのニーズも高まっています。

そのような状況下において、当社は小型品やXBARなどの差異化技術を用いた製品の開発を加速させることで技術的な優位性を確立するとともに、競争環境が強まる製品群においてはコスト競争力を強化していきます。これらの取り組みを推進することで業界トップシェアを堅持していきます。

高周波モジュール

高周波モジュールは、無線機器のコミュニケーションをつかさどるアナログ高周波回路を、各種キーデバイスを小型のパッケージに集積することによって実現する電子部品ユニットです。表面波フィルタなどの受動デバイス、送信回路の高出力増幅器(PA)、受信回路の低歪増幅器(LNA)、アンテナ切り替えスイッチといった半導体デバイスから構成されており、スマートフォンやタブレットPCなど、さまざまな無線機器で採用されています。

事業機会 強み
  • 5Gの普及による周波数帯の増加、通信技術の高度化
  • 電子部品のモジュール化・小型化の進展
  • フィルタなどのキーデバイスの内製とパッケージ技術
  • 販売および技術サポート網を活用した顧客動向の把握と製品提案力
  • 一貫生産によるビジネススピードおよび安定した品質と供給力

成長戦略

① 差異化できる技術へリソースを投下し、事業成長を実現

現在の競争環境として競合企業の技術レベルは拮抗しています。差異化技術を育成もしくは獲得することで競争優位性を確立していきます。

② Digital ET技術の戦力化

2021年9月に買収したEta Wireless社の「Digital ET技術」により競合企業との差異化を図り、事業機会の獲得につなげていきます。

③ 伸びゆく市場でのポジション向上を目指した基盤力の強化

5G、さらにはBeyond 5Gとも呼ばれる6G時代では、「超低消費電力」、「超高信頼通信」が要求されます。グローバル競争の中で生き残っていくため、これまでムラタが培ってきた高い技術力と高品質なモノづくりを強化していきます。

<成長戦略の進捗> 生産進捗の「見える化」による製造現場の変化対応力向上

高周波モジュールを生産する小諸村田製作所(長野県)では、スマートファクトリー化に積極的に取り組んでいます。高周波モジュールの強みは差異化技術を用いてお客様とのすり合わせによってそれぞれのお客様に最適なカスタム品を提供することですが、生産面では多品種生産となるため、生産状況の把握が難しく、急な需要変動への対応のために生産進捗を緻密に管理する必要があります。その課題に対応するために生産ラインをヒートマップで監視するシステムを導入しました。その結果、生産効率の向上に加え、需要変動への対応力が向上しました。小諸村田製作所の事例を他工場にも展開し、グループ全体で生産効率の向上に努めます。

樹脂多層基板(メトロサーク™)

メトロサーク™は、LCP(液晶ポリマー)シートを積層した樹脂多層基板です。優れた高周波特性を有し、低吸水性により安定した性能の基板を実現できるとともに接着層が不要なため薄型で複雑な曲げ加工にも対応できる点などが特長です。また、ムラタの持つ一括積層技術を用いることにより高多層化することができ、自由度の高い設計が可能です。スマートフォンやウェアラブル機器などに採用され、機器の小型・薄型化、高性能化、低消費電力化に貢献しています。

事業機会 強み
  • 5GやUWB(Ultra Wide Band)といった高周波通信市場の拡大
  • 低吸水性、形状保持特性などの特性を活かしたお客様の課題解決への貢献
  • 高周波帯における低伝送損失性能での優位性
  • 高多層、低吸水性、複雑な曲げ加工ができる屈曲性
  • LCPの豊富な量産実績

成長戦略

① 新規事業領域および新規顧客への拡販活動推進

既存事業領域での収益に加え、社内シナジーの強化も含めた顧客基盤の拡大と収益源の多様化を図ります。

② 差異化技術のさらなる強化

5Gでのミリ波帯やUWBの領域において、特性面での競争優位性をさらに強化していきます。

③ スマートファクトリー化の推進やコストダウン技術の開発による生産性向上

生産性向上の活動を継続することでモノづくり力とコスト競争力を強化していきます。

<成長戦略の進捗> 5Gミリ波帯の市場拡大に備えて

5Gで使用される周波数であるミリ波はインフラ整備の遅れ、サービスの少なさ、エリア展開の難しさが課題となり、グローバルで普及に遅れが見られます。ただし、ミリ波は大きな可能性を秘めた技術です。ミリ波は、電波の直進性が高く、広帯域性(一度に送ることができるデータ量が多い)などの特長を持っています。ミリ波により高速大容量通信が実現できるようになり、その特性を活かした新しいアプリケーションの誕生とエレクトロニクス市場の広がりが期待できます。

メトロサーク™は、超高周波での低伝送損失性能を活かせるミリ波伝送線などで強みを発揮することができます。さらに、使用される周波数が高くなる程、伝送損失に関して競合技術に対する優位性を発揮することができます。ミリ波の市場は将来的に大きく拡大することが見込まれることから、当事業においても成長戦略を着実に実施して、広がる市場で事業機会の獲得に努めます。

コネクティビティモジュール

コネクティビティモジュールは、さまざまな機器間を無線で接続する際に欠かせない複合部品です。我々の生活において身近な、スマートフォン、タブレットPC、デジタルカメラやエアコンなどの家電、カーナビゲーションなどの車載機器に搭載されています。また、写真や音楽のダウンロード・アップロード、自動車内におけるハンズフリー電話にも活用されるなど、さまざまな場面で活躍しています。

事業機会 強み
  • 5Gの普及・拡大
  • Beyond 5Gの検討本格化
  • IoT社会の進展にともなう自動車やさまざまな機器での無線通信の搭載拡大
  • 独自の樹脂多層基板を活用したミリ波モジュール
  • 小型・高性能・高信頼性を実現する設計技術
  • 接続性を向上させるソフトウェア技術
  • スマートフォン向けビジネスで培った通信への知見を活かした製品提案力とお客様とのパートナーシップ

成長戦略

① ポートフォリオの見直しを実行

スマートフォンを主軸とする事業構造を見直し、今後成長が見込まれるモビリティやIoTを中心とした多様な領域でのビジネス拡大を目指します。

② 新規市場の開拓と新製品の開発・拡販

通信システムの変化にともなう事業機会の拡大に対して、将来の種まきを実行します。

③ 通信の領域でのさらなる市場拡大を見据えた体質強化

開発と製造の連携を一層強化の上、太く短いバリューチェーンを実現し、多様なお客様からの要求に効率的に対応できる生産体制を追求します。

<成長戦略の進捗> IoT/モビリティ事業へのシフトと新製品開発・量産

スマートフォン市場主体の事業から、IoTおよびモビリティ市場での売上比率が拡大し、事業ポートフォリオの見直しが進んでいます。それにともない、これら市場からの多様な顧客ニーズへ応えるため、変種変量へ対応した工場での生産体制、ウェブツールを活用した顧客対応体制の強化も併せて進めています。

また、コネクティビティ領域で将来広がりが期待される各通信規格である、ミリ波、UWB、Radar、V2X対応のモジュールや、あらゆるデバイスがつながるIoTの世界との親和性が高いエッジAIモジュール製品の開発・量産化を進め、事業成長を目指します。