環境とムラタ

公害防止と化学物質管理

公害防止と化学物質管理

ムラタでは、「公害防止と化学物質管理」を重点課題に設定し、各種施策を推進して継続的な改善に取り組んでいます。

マテリアリティ設定の背景

近年、各国で環境規制が強化されています。ムラタはこれらの規制に先んじた取り組みを促進することで環境への負荷を限りなく低減するなど、持続可能な事業プロセスを追求するために、当マテリアリティを設定しました。

目指す姿

従来の枠にとらわれない持続可能な事業プロセスを追求することで、環境負荷を低減し、社会と調和したモノづくりの実現を目指します。

2024年度目標
  • 重大な環境インシデント件数:0件
  • VOC排出量:2021年度排出量以下
  • 洗浄用途化学品への対象VOC含有を廃止していること。
2030年度目標
  • 重大な環境インシデント件数:0件
  • VOC排出量:2021年度比30%減
2022年度実績
  • 2022年度は重大な環境インシデントが4件発生しました。重大な環境インシデントの発生リスク低減のためのありたい姿を策定して、2024年度目標達成にむけた課題と取組施策を設定しました。
  • VOC排出量の削減にむけて、事業部・事業所別のVOC排出量を集計し、現状を把握しました。
  • 洗浄用途化学品の使用開始前に対象VOCの含有がないことを確認する仕組みを構築しました。現在、試験運用を進めています。また、各事業部で、代替施策とスケジュールの策定に着手しました。
現状の課題と取り組み
  • 2022年度に策定した重大な環境インシデントの発生リスク低減のための施策を実施していきます。2023年度は、過去に発生したインシデントに基づき、各事業所がインシデント発生リスクを漏れなく抽出し、リスク低減策を講じることができる仕組みの見直しを実施します。
  • 対象事業所においてVOC排出量削減施策とスケジュールを策定し実施します。
  • 対象VOCを含有する洗浄用途化学品の代替にむけたスキーム構築に取り組みます。

詳細な取り組みはこちらをご覧ください。
Link: 環境インシデントの低減
Link: VOC排出量削減
Link: 洗浄用途化学品への対象VOC含有の廃止

公害防止

環境インシデント・土壌汚染の防止

ムラタでは、化学物質による汚染を重要な環境リスクと認識し、敷地境界での法規制値超過を重大な環境インシデントと定義して、これらを発生させないことを目標に設定しています。

2022年度は、液体化学物質の漏洩による重大な環境インシデントが4件発生しました。これらは、軽油や生活排水が少量漏洩して敷地境界で法規制値を超過したインシデントでしたが、近隣への重大な環境面の悪影響や生産停止、罰金、浄化指示などの行政処分はありませんでした。
なお、2022年度も、生産停止や罰金、浄化指示等の行政処分・罰則などの重大な法規制違反はありません。

これまでムラタは、環境インシデント発生のリスクアセスメント、および、化学物質の貯蔵や移送時の漏洩や拡散を防止する自主基準設定などの取り組みを実施してきました。

今後は、環境インシデント発生リスクのさらなる低減のため、リスク抽出の強化や徹底した再発防止の実施など、現行の仕組みを強化した取り組みを推進していきます。

重大な環境インシデント・重大な法規制違反件数
  • ※1

    重大な環境インシデント:敷地境界での法規制超過

  • ※2

    重大な法規制違反:生産停止や罰金、浄化指示等の行政処分・罰則などの事案

未然防止のための自主的なルール
  • 地下埋設タンクの原則禁止
    燃料、有機溶剤、酸、アルカリの新液/廃液の貯蔵タンク、排水処理の原水槽は地上化を原則とする。やむを得ず地下に設置する場合には必ず二重化する。
  • 浸透防止塗装
    燃料、有機溶剤、酸、アルカリの新液/廃液の取り扱い場所は、浸透防止塗装もしくはステンレス製の受け皿を設置する。
  • 地下埋設配管の禁止
    燃料、有機溶剤、酸、アルカリの新液/廃液、工程排水の移送配管は架空とする。
  • 緊急遮断装置
    タンクローリーなどによる新液受け入れや廃液引き抜きの作業場所は、インシデント発生時の敷地外への漏洩を遮断できる構造とする。
  • 環境インシデントレベルの設定
    ムラタでは3段階の環境インシデントレベルを設定し、敷地境界での法規制値超過だけでなく、建屋内での化学物質の漏洩も環境インシデントとして捉えている。一番小さな、建屋内の化学物質漏洩も把握して原因分析と是正を行うことで、より大きなインシデント発生抑制に努めている。
  • 事業所から排出する環境影響の測定および自主基準値の設定
    事業所から排出する環境関連法令の規制に関する定期的なモニタリングを行っている。そのうえ、法規制値より厳しい基準値を自主的に設定している。その基準値を超過したタイミングで原因分析と是正を行い、法規制値を超過しない仕組みを構築している。
富山村田製作所の架空配管
PHILIPPINE MANUFACTURING CO. OF MURATA, INCのローリーヤード
東北村田製作所の自動遮断弁

土壌・地下水汚染の調査・浄化

ムラタでは、過去の事業活動によって発生した土壌・地下水汚染に対し、いち早く調査を実施し、早期の浄化完了を目指して、積極的な対応を進めてきました。
具体的には、土壌の性質、汚染濃度、汚染源の位置によって原位置バイオ法、原位置鉄粉法、原位置酸化分解法、そのほか最新技術の浄化法により、汚染源に適した浄化を進めています。さらに敷地境界域に井戸を設置して、地下水の浄化状況を監視しています。

大気汚染物質の排出抑制

大気汚染の原因のひとつである揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)の排出について、ムラタは、JEITAを含めた電機・電子4団体の取組に賛同し、2000年からVOC排出量の多い事業所で排ガス処理装置(RTO)の導入により、特定の20種類のVOC排出量を自主的に削減してきました。2022年度からは、グローバルな規制動向を受けて、削減に取り組むVOCの対象物質を拡大※1させて、VOC排出量削減の全社目標(2030年度目標:2021年度比30%減、2024年度目標:2021年度排出量以下)を設定し、さらなる排出量削減に取り組んでいます。
2022年度実績では1,690tのVOC排出量で、21年比で220t減少しました。今後、生産の増加にともなってVOC排出量は増加していく見込みではありますが、2030年のVOC排出量削減目標の達成にむけて、除外装置の設置だけではなく製造工程で使用するVOC使用量の削減にも取り組んでいきます。

  • ※1

    標準大気圧下で沸点250℃以下の揮発性有機化合物

VOC排出量の目標と実績

地域住民との環境リスクコミュニケーション

ムラタでは、事業活動が地域社会におよぼすリスクの最小化をCSRの重要な課題と認識し、問題発生時の迅速な対応に努めています。

2022年度は、グループ内で騒音などについて、7件の苦情がありましたが、地域住民の方々と相談のうえ、速やかに対応しました。

また、環境保全に積極的に取り組んでいることを地域の方々にご理解いただくため、会社見学会を開催するなど情報の公開にも努めています。

野洲事業所の地域住民の方々との交流
無錫村田電子有限公司地域住民の
方々の会社見学会

化学物質管理

ムラタの化学物質管理

ムラタは、持続可能な社会システムを目指して、地球環境への負荷が少ない製品の提供に努めています。
RoHS指令やREACH規則などの法令遵守はもとより、環境負荷物質のグローバル・トレンドやお客様からのご要求を取り入れたムラタの自主基準を設け、下図のような管理体制で、目標も個別に設定し、製品に含有される環境負荷物質の削減・禁止に積極的に取り組んでいます。

目標と実績

中長期目標
  • 2024年度目標: 製品コンプライアンス違反件数:0件
    製品に含有する環境負荷物質の積極的削減
  • 2030年度目標: 製品コンプライアンス違反件数:0件
    製品に含有する環境負荷物質の積極的削減
2022年度~2024年度目標
  • 製品コンプライアンス違反件数:0件
  • 化学物質管理のガバナンス強化を図る
  • 製品に含有する環境負荷が懸念される物質を積極的に削減する
  • 環境負荷物質に関わる最新の科学的知見や社会動向の変化を早期に捉え、適合にむけた先進的な取り組みを遂行する
2022年度実績
  • 製品含有化学物質に関するコンプライアンス違反件数は0件でした。
  • 最新動向を踏まえて内容を更新した化学物質管理の社内教育を行いました。
  • 法規定によらない積極的削減取り組みとして、製品中の「鉛」使用量のさらなる削減を定め、具体的施策の検討を開始しました。
  • ストックホルム条約POPRC18で廃絶勧告された物質を2021年以前より先行規制していましたが、廃絶・代替が完了できていることを確認しました。

管理体制

製品が規制を上回る環境負荷物質を含まないように設計 

開発

部資材の成分情報を仕入先様から入手認定された部資材のみ購入できる仕組み

調達

製品に環境負荷物質が付着しないように、製造装置などの検証を実施   

製造工程

禁止物質を含む製品は、許可が得られたお客様以外に出荷ができない仕組み

出荷

さらにムラタは、環境負荷物質の法改正にも先回りの対応を実施しています。
残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)に関するストックホルム条約(通称:POPs条約)は、代表的な環境負荷物質削減・廃絶の国際協調枠組みです。2022年6月に開催された、その第10回締約国会議(COP10)では新たに「ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)とその塩及びPFHxS関連物質」が附属書A(廃絶)に追加されました。ムラタは2009年開催のCOP4で「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩」が附属書B(制限)に加えられた際に、類似の有害性を持つPFHxSを先行して自主的に禁止しています。

今後は、製品への化学物質管理だけでなく、製造工程で取り扱う化学物質による作業者への暴露リスクを低減するための取り組みも推進していきます。優先取り組みとして、洗浄の用途で使用する化学物質に対して、2025年3月までに対象9物質※1の含有を禁止とする取り組みを推進していきます。

Link: 製品に含まれる環境負荷化学物質の規制表(一部抜粋)
Link: 工程で使用される環境負荷化学物質の規制表

環境汚染物質の管理

ムラタは、国内事業所で取り扱っている化学物質に関する情報を登録したデータベースを構築し、個別の化学物質の使用実態を容易に把握管理できるシステムを運用しています。

「特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」における排出・移動量の算定の際には、このシステムを利用して算出を行っています。

この法律における報告対象物質462物質群のうち、2022年4月1日~2023年3月31日に国内グループ全体において1t以上の取り扱いがあったものはトルエン、キシレン、鉛およびその化合物など30物質群でその量は以下のとおりです。

PRTR物質の使用量と排出・移動量(国内合計)