人工水晶の欠陥及び不純物量は、成長速度、添加物、原料などに影響されます。特に成長速度は赤外線吸収係数 (α: Q値と相関あり) と周波数温度特性という人工水晶の重要な特性に影響を及ぼします。成長速度が速いとαが増加 (Q値は低下) し、周波数温度特性にバラツキを生じます。
初期の人工水晶品質指標は、水晶振動子のQ値であり、5次オーバトーン5MHz振動子が水晶片の保持や振動子製造上の諸条件によるバラツキの影響を受けにくく、そのQ値が人工水晶自体の内部損失をより正確に反映するため使用されました。しかし、この方法では直径の大きい水晶片が必要であり、目的とする振動子をZ領域から製造できない事もありました。振動子製造によるQ値の測定は、多くの時間と労力を必要とするために現在では赤外線吸収係数αを測定してQ値を推定する方法が採用されています。この方法は微小領域の測定が可能であり成長による変化も検出でき簡単に測定できるという利点があります。
推定Q値グレードC以上の人工水晶は、良質な天然水晶と同等な周波数温度特性を示しますのでこのような結晶は高周波数帯域の高品質振動子などの使用に適しています。育成工程での条件が管理された同一ロット内でのαのバラツキは非常に少ないので特定の製造ロットから評価のためのサンプルを抽出する際にはロット内でZ寸法が最も大きい水晶を選択します。その理由は、αは成長速度に比例して大きくなるので、Z寸法が最大の結晶は同一ロット内でαの最大値 (最低のQ値) を示すからです。