ムラタでは、経営資本を”社是の実践を通じて培ってきた価値創造の源泉”と位置付けており、なかでも「人材」は価値創造の中核であると考えています。"Innovator in Electronics"として持続的な価値創造を実現していくために、従業員のやりがいと成長を組織力の強化に結びつけ、人的資本の強化を図ってまいります。
やりがいと成長を感じることで生み出される「エンゲージメント」
ムラタのエンゲージメント
CSとESは今までも、これからもムラタの大切な価値観であり続けます。CSの範囲が社会課題の解決にまで広がってきているからこそ、その担い手となる従業員のESもより高めていく必要があります。ここでいうESは、「仕事を通じて従業員一人ひとりがやりがいを感じ成長し続けること」です。
ムラタでは、「エンゲージメント」とは、「従業員一人ひとりが、やりがいと成長を実感できていること」と考えます。またその従業員の成長が、組織(ムラタ)の成長と連動していることも重要だと考えています。
ムラタの活かす環境
これまでも、ムラタの強みである人的資本を維持・強化していくために、長期のキャリア形成を前提とした取り組みを行ってきました。複線型の処遇制度を整備し、会社のニーズと個人のキャリアプランをすり合わせながら、成長を目的としたローテーション、技術開発やモノづくりのための専門性の能力開発、そして、個人の力を組織の力に変えるためのマネジメントの育成にも注力しています。また、多様な人材一人ひとりが、それぞれのライフスタイルに合わせて働きやすい環境や制度も引き続き整備していきます。
1.グローバルサーベイを活用した組織風土の改善
ムラタは、CS「お客様が認めてくださる価値を創造し、提供すること」とES「仕事を通じて従業員一人ひとりがやりがいを感じ成長し続けること」を最上位の価値観としています。CSとESをスパイラルアップしていくことでInnovator in Electronicsとして持続的な価値創造を実現します。
CSの範囲が社会課題の解決にまで広がってきているからこそ、その担い手となる従業員のESもより高めていく必要があります。全従業員を対象としたグローバルサーベイ結果を従業員の生の声として真摯に受け止め、従業員自身がやりがいと成長を日々の仕事の場でどれだけ実感しているかを定期的に確認し、組織風土の改善に必要な施策を確実に実行していくことが、従業員の活力を高め、Vision2030のありたい姿を実現するための力になると考えています。
関連する取り組み
従業員エンゲージメントへの取り組み
ムラタは2004年以降、組織風土改革を通じ、従業員のやりがいと成長につながる企業風土の実現に向けてさまざまな活動に取り組んでいます。仕事を通じて従業員一人ひとりがやりがいを感じ成長し続けることを大事な価値観として掲げ、各拠点で従業員サーベイを実施し、現状把握と課題分析を行いながら継続的改善に取り組んできました。
2021年度から全世界共通のサーベイ調査を実施し、グローバルでPDCAのサイクルを回していきます。今後の長中期のベンチマーク指標として、「従業員エンゲージメント」の肯定回答比率を置き、2024年度に70%、2030年度に76%以上を目指します。
従業員の知的財産権
ムラタは、従業員が開発した新技術に対する報奨制度を設けています。詳細は下記をご覧ください。
Link: 知的財産に対する取り組み
2.経営層と従業員の対話促進
ムラタは、会社の持続的な成長のためには、会社の理念や存在意義や事業の目的に対する従業員の理解と共感を得ることが重要だと考えています。
ムラタでは、激化する環境変化の中でも変わらずに社是を実践して価値を提供し、成長を続けるために自律分散型の組織運営を目指しています。その実現のためには、従業員一人ひとりの行動変革が必要と考え、役員参加のパネルディスカッションを開催しました。そこでは、役員がそれぞれの組織や立場でどのように自律分散を実践していくか自身の経験や考えを従業員と共有し、意見交換を行いました。従業員からは「自律分散への自分なりの解釈や意見を持って行動することの重要性をあらためて感じた」「価値創造において、多様な意見を共有しあうことの有用性を体感した」といった声が挙がりました。このようなディスカッションのほかにも、組織変革の取り組みを従業員が共感し、納得感を持って実践できるような組織風土を醸成していくための、次のような切り口で、経営層と従業員の対話を促進していきます。
- 社長方針説明会
- 従業員サーベイ
- 従業員向け研修(役員主催研修・階層教育・理念教育など)
- 役員との対話会
- 社内ポータルサイト・社内報
- 内部通報制度・相談窓口
関連する取り組み
多様な個人をつなぐ経営理念の浸透
多様な人材の活躍推進により、一人ひとりの従業員の特性に基づく強みが発揮されることが期待できます。一方で、それらの多様な強みを共鳴させムラタのイノベーションにつなげるために、ムラタが大切にしている価値観を全従業員で共有することがこれまで以上に重要になります。
ムラタでは、役員自らが講師となってムラタの経営理念(社是)を伝える役員主催研修をはじめとし、職場で社是について話し合う素材の提供、国内および海外グループ会社でのワークショップ開催など、グローバルで社是の理解を深める施策を実施しています。また、入社やM&Aなど新たな従業員を迎える場面においては、ムラタの一員として社是への共感を生み出すことからスタートし、各人の多様なバックグラウンドを経営理念の実践に活かす土台づくりに注力しています。
さらには、社是と歩んだムラタの歴史を学び、その上でこれからのムラタや自分自身について考える機会をオンラインで提供するなど、環境にあわせ新たな取り組みもはじめました。
新しい価値の創造に向けた「雑相(雑談と相談)」の場の提供
ムラタでは、自律分散型組織運営を目指しており、その実現には、従業員と社長の考えの共有や納得度を向上させることが必要と考えています。社内コミュニケーションツール「社長さんとの雑相部屋」を新たに導入し、社長からのメッセージを全世界の従業員に配信しています。また、従業員から社長に質問や相談、提案などをすることもでき、双方向でのコミュニケーションが活発に行われています。
3.働きやすい環境・制度の整備
ムラタは、多様な背景・価値観を持つ人材がやりがいを感じ、自律的な協働を通してイノベーションを実現するためには、従業員一人ひとりが働きやすい環境と制度が不可欠であると考えています。
そのために、従業員一人ひとりが仕事と生活のあり方を見つめ、職場で対話を重ね、生産性を高めていけるような、ワークライフバランスの取りやすい環境づくりに取り組んでいます。職場単位での仕事の進め方について、休暇の取得やメリハリのある働き方について継続的な対話を行うことで生産性を高め、従業員の成長と事業の持続的な発展を目指しています。具体的には、時間外労働抑制、テレワーク制度の拡充、フレックス勤務制度の充実、有給休暇の増加などをはじめ、育児・介護・病気治療などと仕事との両立支援などに継続的に取り組んでいます。
関連する取り組み
時間外労働抑制への取り組み
村田製作所では、1990年に生産性の向上・総労働時間の短縮を目的として、フレックス勤務制度を導入しました。さらに2009年には、より柔軟な働き方を実現するため、コアタイムのないスーパーフレックス勤務制度を導入しました。
また、36協定による月間の時間外労働時間上限を35時間と定めており、深夜時間帯に時間外労働を行う場合は労働組合への申請を行うことなどのルールを労使で設けています。さらに、必要に応じて労働組合・所属長・人事担当者による労働時間状況のヒアリングを実施するなど、労使でのモニタリングを定期的に行い、従業員が心身ともに健康で安全であることを最優先に時間外労働抑制に努めています。
ムラタらしいニューノーマル時代の「働き方・休み方」を見据えて
今後のムラタの持続的な発展のためには、生産性をより高め、適正な労働時間で従業員が心身ともに健全な状態で価値創造ができる環境にしていくことが必要不可欠です。安易に時間外労働に頼らない働き方を推進することで、多様な属性の人材がやりがいを感じながら活躍できる環境にできると考えています。2019年3月よりムラタでは生産性の向上を主目的としてテレワーク制度の運用を行っておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として在宅勤務が急拡大し、「全員が会社に出社して仕事をすること」があたり前ではない働き方に一変しました。会社と個人の関係性が大きく変容する中において、あらためてムラタらしいニューノーマル時代の働き方・休み方について労使で議論を重ね、「違い」「自律」「責任と義務」「自己選択」をコンセプトとして働き方、休み方に関する制度改定を実施しています。今後もムラタの持続的な発展のためにあるべき姿を議論しながら、従業員が心身ともに健全な状態で価値創造ができる環境を整備していきます。
2021年4月以降の就労制度改定
主な改定内容
(1)テレワーク制度の全面改定
- 制度目的の見直しによる適用者の拡大(生産性の向上に加え、私生活と仕事の調和を目的に含める)
- 統一的なテレワーク実施回数上限の撤廃
- テレワーク中の私用中抜けの許可
(2)フレックス勤務制度の改定
- 育児・介護短時間勤務者への適用解禁
- コアタイム時間の縮小
(3)年次有給休暇付与日数の増加(2021年10月~)
(4)所定就業日数の削減(国内グループ関係会社)
相互信頼に基づく安定した関係を構築
村田製作所では、電機連合加盟の労働組合が組織されています。
労使間の問題は相互理解と信頼によって、話し合いを基調に解決することを確認し、労使それぞれの立場から企業の発展と従業員の生活の安定を目指しています。労使にかかわる制度や基準の設置、その変更や見直しについてはすべて労働組合と協議し、双方合意のうえで実施しています。労働組合では、長時間労働(残業時間)を始めとして、労働者に関わる様々な内容をモニタリングし、その改善のために協力しています。また、労働組合のない国内グループ会社には、管理職を除くすべての正社員が加入する社員会といった従業員代表組織が結成され、経営層との協議や意見交換のほか、従業員間のコミュニケーションを図っています。なお、労働組合や社員会に属していない管理職や新任役職者に対しては、労使にかかわる制度や基準に関する説明会を適宜実施しています。
従業員がいきいき働き続けられる職場づくり
多様な人材が心身ともに健康的に活躍できる環境を目指して
ムラタでは、従業員が仕事だけでなく、家庭や地域社会における役割も果たすことで、人間的に成長し、豊かな人生観・キャリア観を醸成・獲得できると考えています。そのために、従業員一人ひとりが仕事と家庭を両立し、心身ともに健全な状態で価値創造ができる環境にしていくことが必要不可欠と認識しています。ムラタでは、生産性の向上や仕事と家庭の両立支援のため、柔軟な働き方を可能とする就労制度を積極的に導入し、多様な「働き方」の選択肢を整備してきています。
主な支援制度(村田製作所)
次世代育成支援対策推進法に対応し、家庭と仕事の両立支援・キャリア継続支援の観点から法定を上回るさまざまな制度を導入しています。
また2019年4月には、企業主導型保育事業所として長岡京市に「かえで保育園」、出雲市に「muRataゆめの森保育園」を開設しました。出産・育児休暇を取得した従業員のスムーズな復帰支援、ならびに子育てをしながら働く従業員の多様な働き方の支援を目的にしています。
次世代育成支援対策推進法の行動計画に基づき、次代を担う子どもたちの健全な育成を支援するために、従業員の子どもを会社に招くイベント「こども参観日」を各事業所で開催しています。親の働く姿や職場を見るという経験を通して、子どもたちが「働く」ことを肌で感じること、働く親への感謝の気持ちを育むことを目的にしています。
育児や介護以外の取り組みも行っており、一例として、健康保険料の負担割合は事業主と被保険者負担が折半することが原則として健康保険法で定められていますが、村田製作所では、事業主が標準報酬月額の4.726%、被保険者が同3.474%を負担することとしています。
4.安全・安心な職場と健康経営
ムラタは、ムラタの最上位の価値観であるCSとESの礎には、従業員の健康と安全・安心な職場があると考えています。
この礎を強固なものにすることで、人的資本の価値を高めていきます。Vision2030に基づき、「安全・安心な職場と健康経営」における2030年のありたい姿を「安全な職場で、従業員一人ひとりが自身のことを健康だと実感しながら、働けていること」としました。ムラタで働くすべての人が、「心」「体」「人と社会との関係」が調和された健康状態で、自然体の安全行動をしていること。職場環境においては、仕事に安心して専念でき、ヒヤリ・ハットが少ない状態であることを目指します。
Link: 安全・安心な職場と健康経営