ナノワットレベルの稼働を目指す、自己発電型のセンサネットワーク
センサネットワークは、もともとムラタが得意とする技術。自己発電型にすることで、設置場所を選ばず、メンテナンスフリーとなった。今はμWレベルの発電で感知と通信を行うが、世界的な最先端の研究はすでに次の段階に入っており、nW (ナノワット: 10-9) で稼働する仕組み作りへと移っている。実現のためには、nWで動くセンサや通信モジュールを開発しなければならず、もう一度、材料の選定や通信規格の見直しが進められるだろう。高い技術を要求されるので競合他社はあまりいないが、この概念を理解してもらうのに時間がかかった。
つまり、無駄な人造エネルギーは使わずに、無尽蔵に散在する最小のエネルギーで仕事を行う。従来は必要な機能を得るために、必要な電力を計算し、どのように供給するかを考えていた。エネルギーハーベスティングの概念は、まったく逆で、与えられた小さな電力で動かせる装置をいかに作るかということ。これが所与のエネルギーで生存と快適を両立させる究極の省エネの形だと思う。
科学技術の急速な発達により、人の五感にあたるセンサ技術、頭脳にあたるコンピュータ、神経にあたるネットワーク技術の高度化が進み、こうした生物のような仕組みが建築に導入されるようになった。建物自身が生きた人間のように機能するための研究 (生命化建築) も進んでいる。ムラタを含めた国内の企業50社近くが集まって、エネルギーハーベスティングのコンソーシアムも立ち上がった。マーケットは大きく熟してきている。5年後には100億円ほどの事業規模にすることを目指して、製品開発を進めている。