環境とムラタ

目指す姿

RE100※1やSBT※2に沿った事業運営によって、モノづくりにおける温室効果ガス(以下GHG※3)の削減を目指します。

2024年度目標
  • GHG排出量(2019年度比):128万t-CO2e(-20%)
  • 再生可能エネルギー導入比率:25%
2030年度目標
  • GHG排出量(2019年度比):87万t-CO2e(-46%)
  • 再生可能エネルギー導入比率:50%
2050年度目標
  • 再生可能エネルギー導入比率:100%

※対象:Scope1+Scope2

ムラタは従来よりモノづくりにおける環境負荷低減の活動を実施しています。現在は「気候変動対策の強化」を重点課題(マテリアリティ)に選定し、GHG排出削減の総量目標を掲げて事業運営を行っています。

近年の電子部品需要拡大にともなう増産、M&Aや新規事業の展開により、2018年度までGHG総排出量が急速に増加していました。一方でパリ協定発効以降、企業の事業拡大に関わらずGHG排出総量を削減することが求められています。

そこでムラタでは、取締役常務執行役員を委員長とする気候変動対策委員会を中心に、省エネルギー(以下、省エネ)、再生可能エネルギー(以下、再エネ)導入拡大などの気候変動対策を推進することでGHG総排出量削減に取り組んでいます。また、下部組織であるイニシアチブ推進部会では委員会と連携して主な気候変動イニシアティブ対応、目標設定や、TCFD※4提言に沿った情報開示について議論を進め、2020年度は新たにRE100宣言に向けた取り組みを進めました。

さらに、これまでの設備投資を中心とした省エネだけでなく、自社のセンシングとIoT技術を組み合わせた新たなエネルギーマネジメントシステムを構築し、生産におけるエネルギー使用を最適化することをはじめています。

なお、ムラタではGHG総排出量について第三者認証を取得しており、GHG総排出量や気候変動対策の取り組みを積極的に情報開示することでCDP※5気候変動調査など、社外からも高い評価を受けています。

  • ※1

    RE100 (Renewable Energy 100):国際NGO「The Climate Group」がCDPとのパートナーシップのもと運営する、世界で影響力のある企業が再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアティブ

  • ※2

    SBT(Science Based Targets):パリ協定に整合した科学的根拠にもとづく温室効果ガス排出削減目標

  • ※3

    Greenhouse gas:温室効果ガスの総称

  • ※4

    気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略。気候変動のリスクと機会について情報公開を行う企業を支援する組織

  • ※5

    Carbon Disclosure Project:企業や都市などの環境への取り組みを調査・評価し、開示する国際NGO(非政府団体)

気候変動対策の強化

国際的な環境イニシアティブ「RE100」への加盟

2020年12月、ムラタは事業活動で使用する電力を100%再エネにすることを目指す国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟しました。2050年度までに事業活動での使用電力の再エネ導入比率を100%、2030年度時点で50%を目標として設定し、持続可能な社会の実現に向けて貢献します。

当社の主力製品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)などの電子部品は、焼成工程において高温状態を維持する必要があり、多くの電力を使用しています。一度に焼成できる個数はスペース的な制約があるため、MLCCの軽薄短小化の取り組みを推進し、焼成時における環境負荷(電力・原材料使用)の低減に取り組んでいます。

このような生産プロセスでの環境負荷低減に加え、国内外の生産子会社における再エネの利用促進を目指しています。既にグループ15拠点以上でソーラーパネルの設置を行っており、2021年以降も大規模な投資を行っていきます。今後、ムラタの蓄電池と組み合わせることで発電量を最大限活用できるように整備し、事業所内での電力利用の最大化を進めていく予定です。

参考Link: RE100別ウィンドウで開く

RE100はThe Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで主催し、We Mean Business連合の一部としても運営しています。日本では2017年より日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が、RE100の公式地域パートナーとして日本企業の参加と活動を支援しています。

脱炭素社会の実現を目指す「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)へ参画

持続可能な脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきと考える企業が多く参加している、気候変動問題に対し野心的に取り組む団体である日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)に2018年より正会員として参画しています。社外の知見を活用してムラタのバリューチェーンを通した脱炭素化の活動を加速させるとともに、参加企業との協働により世界の気候変動対策に寄与する事業の立ち上げ、JCLPを通じた日本政府への提言のための意見出しも積極的に参加・検討していきます。

参考Link: JCLP別ウィンドウで開く

TCFDへの対応

気候変動は、人類と地球の健全性を脅かす脅威となっており、また私たちのビジネス、お客様、サプライチェーンにも影響を及ぼしています。2021年に発表された国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の科学評価では、重大な気候変動の影響を回避し、住みよい地球を維持するためには、この10年間で大幅な脱炭素化を早急に図ることが求められています。

ムラタは、この気候変動に向き合う企業の一つとして、世界の気候変動対策に向けて果たすべき重要な役割があると考えています。また気候変動は、コストの増加や事業の中断といったリスクをもたらす一方、社会に新たなニーズを生み、ムラタとして新たな価値を創出する機会であるとも認識しています。そのため、次の10年は、「文化の発展に貢献する」というムラタの使命を果たしながら、革新的な技術やソリューションを生み出し、新しい領域に事業を拡大する機会であると捉えています。

ムラタは金融安定理事会(FSB)※1により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」)」による提言への賛同を表明しました。TCFD提言に基づき、気候変動が事業に与えるリスク・機会について分析を進め、ガバナンス・戦略などの関連する情報開示に取り組んでいきます。
ムラタはTCFD提言の中で推奨される4つの中核的要素「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について、以下の枠組みで取り組みを進めています。

  • ※1 Financial Stability Boardの略

ガバナンス

ムラタは、気候変動対策において、ガバナンス体制を強化しています。取締役会は、気候変動を含むすべてのリスクと機会について説明責任を負っています。代表取締役社長と取締役常務執行役員は、それぞれCSR統括委員会と気候変動対策委員会の委員長を務めており、気候変動対策を監督する責任を負っています。

気候変動対策委員会は、ムラタの気候変動に対する全体的な戦略を統括し、グループ全体の気候変動に関する目標の達成状況を監督する役割を担っています。
同委員会は、製造部門、研究開発部門、環境担当部門、その他の事業部門の責任者で構成され、年に2回以上実施し、特定のテーマについては臨時で開催しています。2020年度の委員会では、製造拠点でのGHG排出量削減の取り組み、お客様のCO2削減目標の達成を支援する軽薄短小・高効率製品の開発、さらに、SBTの設定や再エネの導入などを検討しています。

気候変動対策委員会の下部組織であるイニシアチブ推進部会は、環境担当部門の部長を部会長とし、関連する部門のシニアマネージャーで構成されています。この部会では、気候関連の戦略の実行面を検討するとともに、部門横断的な連携や取り組みの好事例の共有を行っています。

ムラタは、気候変動対策委員会での議論を進め、2050年までに再エネ導入比率100%を目指す世界的なイニシアティブ「RE100」に加盟することを決定しました。これを受けて、同委員会では、2021年度に電池事業部門や事業開発部門、環境担当部門などで構成される再エネ推進部会を新たに設置し、全社的な再エネの導入促進に向けた取り組みを開始しています。

気候変動に関するさまざまな課題について、気候変動対策委員会は、CSR統括委員会に報告し、その報告を受けたCSR統括委員会は内容を精査した上で、取締役会に報告しています。取締役会では、気候変動がもたらすリスクや機会、それから考えられるムラタの方針、現在の取り組み状況を踏まえて、経営計画や事業戦略を監督しています。
また、インセンティブの一環として各事業所のCO2削減取り組みに対する社長表彰および委員会表彰制度を設けています。この表彰では主に省エネ・再エネによるCO2削減効果をベースに、経済性や合理性など、ムラタ独自で採用している基準を設けて選定された事例を表彰します。

気候変動の課題に対するガバナンスをさらに強化し、長期的な視点で企業価値を高めるため、2021年度からCO2削減量に金銭的価値を付与し、その価値を投資指標に組込む社内のカーボンプライシング制度を導入しました。具体的には、長期的な観点で、CO2排出量とそれにともなう事業コストの削減やリスクの低減を図る投資を促すシャドープライシング制度を導入しています。今後は、管理会計システムや各部門の業績評価にこの制度を取り入れることを検討していきます。

戦略

気候変動は、ムラタにとってきわめて重要な課題です。気候変動がもたらすリスクと機会は、中長期的には事業の持続的な発展に大きな影響を与えることが予想されます。このような潜在的な影響を予測し、その影響を適切に戦略立案のプロセスに組込むために、ムラタの主要な資産および市場がどのように影響を受けるかについて分析しました。

気候シナリオ分析への取り組み方

物理的なリスクと移行措置の観点から、温暖化が最も進むシナリオと気温上昇の抑制に向けて政策や規制が最も進むシナリオの2つを選択し、どちらのシナリオに進んだとしても、適切な事業戦略および気候変動対策を実施し、ムラタの企業価値が向上することを証明するために、シナリオ分析を行いました。

  • 4°CシナリオはIPCCの代表的濃度経路シナリオ(RCP)8.5に基づいており、気候変動に関する現在の政策のままではGHG総排出量が現在の割合で増加し続け、2100年までに世界の平均気温が4℃上昇するというものです。このままの状態が継続すると、気候変動による物理的な影響はますます顕著になり、企業や社会全体が、熱波・猛暑、台風、洪水、干ばつなどの異常気象による災害のリスク拡大にさらされます。
  • 2°Cシナリオでは、IPCC RCP 2.6に基づいており、パリ協定の目標に沿うことで、2100年までの世界の平均気温の上昇を2°C以下に抑えることができます。しかし、気候変動による物理的な影響は、抑制することはできますが、回避することはできません。

シナリオ分析では、2030年および2050年における気候変動がムラタの事業に与える物理的な影響や、世界が低炭素社会への移行を目指す中で、政策や規制の変化によってもたらされるリスクと機会に焦点を当てています。

気候シナリオ分析の前提条件(分析項目及び変数)

アプローチ

定量的・定性的な手法を組み合わせて実施

  • 物理的な影響:主に定量的なアプローチ
  • 移行措置の影響:主に定性的なアプローチ

シナリオ

IPCC RCP 2.6(2°Cシナリオ) および RCP 8.5(4°Cシナリオ) を選定

  • 物理的な影響:異常気象による10の災害※1が、今回選定した資産へ与える影響を検証
  • 移行措置の影響:主要市場が位置する地域・国の政策や目標を検証

対象範囲

  • 物理的な影響:20ヶ所の主要な製造拠点および事業所を選定
  • 移行措置の影響:主要市場(売上高ベース)を選定

時間軸

地球温暖化や公共政策の策定過程の特性を考慮して、以下の時間軸を設定

  • 中期:2030年
  • 長期:2050年

気候モデル/データセット

以下を含む査読済みのモデルやデータを参照し、AIを用いて予測と分析の質の向上に取り組む

  • CMIP5(第5期結合モデル相互比較計画)※2
  • GFS(気温データ)
  • GPM(洪水・降水データ)など

物理的リスク

10の災害が選定した資産へ与える影響を検証
なお、資産への直接的な物理的影響に絞って検証し、今後当検証結果の精度を高めるとともにサプライヤーや製品輸送なバリュー チェーン全体への影響を分析予定

バリュー・アット・リスク(Value-at-risk/以下、VaR)

選定したシナリオと期間のもとで、想定される災害がすべて発生した場合、対象となる資産において、一定の確率で発生しうる1年間の経済的損失(予想損失額)。
マクロ的な視点で、以下の2つの側面に基づいてVaRを算出

  • 資産損傷による損失:過去の事象、資産の種類、対象地域での建設費などを参考に評価
  • 事業中断による損失:国のGDP、人口、土地利用(農業、商業、住宅、製造業など)、都市化などのマクロ要因に基づいて評価

政策

主要事業所・市場や電子部品業界が関連する地域・国の政策、その国のCO2削減目標、パリ協定の「国が決定する貢献(NDC)」などを参照
2°Cシナリオでは政策がより厳しく、逆に4°Cシナリオでは弱まっていると仮定

  • ※1

    高潮、降雨による洪水、河川氾濫、地滑り、台風、干ばつ、豪雨、海面上昇、融雪、熱波・猛暑

  • ※2

    CMIP5(Coupled Model Intercomparison Project)は、世界気候研究計画(WCRP)によって設立された、気候システムの理解促進のための国際的なフレームワーク。気候モデル間の相互比較を行い、信頼性を担保。

    Link: WCRP別ウィンドウで開く

想定される影響の把握

シナリオ分析においては、ムラタが緩和または適応措置を取らなかった場合を前提にしております。そこで想定される重大な影響を踏まえ、事業戦略の中での気候変動の位置づけや、そういった環境下における戦略のあり方について、整理しました。

ムラタのビジネスへの影響

物理的な影響

20ヶ所の主要な製造拠点および事業所を評価
主な拠点の所在地域:日本、中国、東南アジア

4°C(シナリオ)リスク

  • 2050年に上記の拠点の1つまたは複数が異常気象によって災害を受けるリスク:2020年比80%以上増加
  • 急性および慢性の物理的リスクレベル:
    高い~非常に高い 猛烈な台風、熱波・猛暑:
    それぞれリスク確率70%以上増加
    干ばつ、地滑り
    洪水、海面上昇
    影響なし 豪雨、高潮、河川の氾濫、融雪
  • VaR:10億円程度の見込み(今後ムラタ固有の情報をもとにした分析を予定しており、その結果によってはVaRが増加する可能性あり)
  • 事業コストへの影響:
    供給・流通網の中断や原材料の価格上昇を引き起こし、事業コストの増加につながる可能性あり

2°C(シナリオ)リスク

  • 2050年に上記の拠点の1つまたは複数が異常気象によって災害を受けるリスク:2020年比25%以上増加
    4℃シナリオと比較して、リスクは60%近く低下
  • 急性および慢性の物理的リスクレベル:
    中の上~高 猛烈な台風、熱波・猛暑:
    それぞれリスク確率50%以上増加
    干ばつ、地滑り
    洪水、海面上昇
    影響なし 豪雨、高潮、河川の氾濫、融雪
  • VaR:数億円程度の見込み(今後ムラタ固有の情報をもとにした分析を予定しており、その結果によってはVaRが増加する可能性あり)
  • 事業コストへの影響:
    上記記載の通り、VaRは小さく、物理的な影響よりも、排出規制、炭素価格などの政策による移行措置の影響を受ける可能性あり

移行の影響

主な市場 (売上高ベース) および事業拠点を分析
主な市場の所在地域:日本、中国、米国、EU、東南アジア、韓国

移行リスク

リスク要因 想定リスク
2020年度の地域別でみると、ムラタの売上高の7割以上が、ネットゼロ目標を掲げる国で占められる。評価対象地域においては、電子部品は厳しい排出規制の対象ではないが、政策的介入(炭素税や炭素取引制度など)の可能性あり 生産活動におけるエネルギーコストの増加
評価対象のほとんどの国では、設備のエネルギー効率の改善目標を導入 生産設備の導入コスト上昇
一部の国では、エネルギー効率基準や国境炭素税の導入を検討 市場への参入コスト増加

移行機会

機会要因 想定される機会
評価対象のすべての国で、2025年または2030年までに再エネと電気自動車(以下、EV)普及の目標を設定 再エネの普及促進、EVの世界的な急拡大による高性能なムラタ製品に対する需要の増加
過去4年間、世界の自動車販売台数は18%減少したが※3、2020年度のムラタのカーエレクトロニクス向け売上は、前年度比3.7%増の2,732億円 多くの電子部品を必要とするEVの割合が自動車市場において増加し、ムラタ製品の需要増加
気候変動への社会的関心や世界的にグリーンな経済への移行を求める政策ニーズの高まり 中長期的に小型で高効率な部品の需要が増加することにともなう収益拡大や新規市場への参入機会の増加
世界平均気温の上昇を2°C以下に抑えるには、現在の「国が決定する貢献(NDC)」では不十分との考え 今後より厳しい政策や新技術の積極的な導入が求められ、ムラタ製品や革新的な技術の需要の高まりが拡大
中長期的にはグリーン投資に対する投資家の関心の高まり ムラタの環境経営が評価され投資対象となる可能性
対策と戦略のレジリエンス

(物理・移行リスク共通)

気候変動対策委員会で主導する全社的なGHG排出削減の取り組みにより、GHG排出量は2018年度をピークに継続的に削減

  • 省エネの推進:CO2の主な排出源である電力使用量の削減の取り組み
    具体的には、空調設備の最適化や機器の待機電力の削減、センシング/IoT技術を活用した生産設備のエネルギーマネジメントシステムの性能向上などを通じて、CO2排出量や運用コストの削減を実現。
  • 再エネの推進:太陽光発電設備の導入と再エネ調達の取り組み
    具体的には、事業所への太陽光発電設備の導入、再エネ電力や再エネ証書の調達により再エネ電力は約4億kWh相当(再エネ導入比率約15%)となり、約24万t-CO2の削減に貢献

また、ムラタでは社内制度整備や新たな目標設定を進めています。

  • 社内制度整備:
    • 2021年度から社内カーボンプライシング制度を導入し、投資の意思決定とCO2排出削減への取り組みを連動
  • 新たな目標設定:
    • RE100に加盟し、再エネ導入比率2030年50%、2050年100%を目標に設定
    • SBT基準に適合したCO2削減目標を設定するための申請を予定

これらの取り組みは、製品やプロセスの革新を促進し、低炭素社会への移行促進に貢献すると考えています。
今後、Scope3目標についても、幅広く関係する部門間で連携しムラタのサプライチェーン全体での気候変動対策を推進していきます。

(物理リスク)

  • 今回の分析結果では、VaRは数億~10億円程度を見込んでおり、財務面においては重大な影響を及ぼす可能性は低いとの考えであり、上記の損失額は、2020年度の当期純利益の0.5%未満
  • 今後ムラタ固有の情報をもとにした分析を予定しており、その結果によってはVaRが増加する可能性あり
  • 事業継続計画(BCP)では、災害による事業への影響を最小化を検討(参考Link:事業継続計画

(移行リスク)

  • 省エネ関連の設備投資プロジェクトは、ほかの投資活動と比較して、投資経済性の基準を緩和している。このような省エネ投資の費用は、長期的にはエネルギーコストの低減に繋がる
  • 今後も多くの電子部品を使用するEV市場が伸びると考えられるため、長期ビジョン「Vision2030」でモビリティ市場を事業機会と位置付ける
  • 同様に環境関連のビジネスも事業機会と位置付け、蓄電池などの製品を有する電池事業の収益拡大に取り組む
  • ウェアラブル製品、家庭用および発電所用センサなど、安全性が重視される用途に活用できる全固体電池の開発
  • 市場をリードするコンデンサや圧電部品を支える技術の進化
  • 国内外の投資家の皆様と効果的なコミュニケーションを図るため、TCFDのフレームワークを活用し、気候関連の情報開示を強化

リスク管理

CSR統括委員会が、社会、環境、経済のさまざまなマテリアリティ(重点課題)を、構造化されたプロセスで定期的に評価しています。
最新のマテリアリティ評価では、気候変動による影響は重大なリスクとして認識されており、それに対しての監督や取り組みを経営の重要課題として取締役会で承認しています。
(参考Link:マテリアリティ

戦略面においては、気候変動対策委員会が変化する気候関連リスクを継続的に注視し、ムラタの気候変動に関する課題を設定し、その対応状況を管理しています。
2021年度には、将来の気候変動がもたらす潜在的なリスクと機会、および事業戦略のレジリエンスを評価するために、シナリオ分析の活用をはじめました。

オペレーション面においては、事業所でISO14001認証を取得し、環境リスクを評価しながら継続的な改善を推進しています。

気候変動に起因するリスクは、CSR統括委員会のもと全社的なリスク管理の項目に組込まれています。
たとえば、悪天候時の対応のガイドラインは、事業の中断を最小限に抑えるために事業継続計画(BCP)に定められています。
(参考Link:リスクマネジメントの強化

また、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)などの業界団体や、RE100などのグローバルアライアンスに加盟し、気候変動に関連する新たなリスクや機会を含む最新動向の把握に努めます。

指標と目標

ムラタは、平均気温の上昇を1.5℃に抑えるための世界的な取り組みに貢献するために、SBTの申請を進めています。
また、「RE100」のメンバーとして、再エネ導入率を2030年までに50%、2050年までに100%達成することを宣言しています。
2021年度は、事業規模は拡大(売上高:前年度比6.3%増)※1する見込みですが、GHG排出量(Scope1+Scope2)は2020年度比2.4%減の140万t-CO2eに削減することを目標としています。
今後、気候シナリオ分析の対象範囲拡大と深堀りにより将来のリスクと機会のより精緻な特定に取り組みます。また、それらを考慮した計画を策定し、バリューチェーン全体での脱炭素化も加速させていきます。
(Scope・カテゴリー別のCO2排出量の内訳はESGデータ集を参照)

GHG排出量
(千t-CO2e/年)
期間
2018年度 2019年度 2020年度
総排出量 6,074 5,979 5,237
Scope 1 312 307 278
Scope2※2 1,320 1,302 1,157
Scope 3 4,442 4,371 3,801
  • ※1

    2021年7月29日発表の業績見通しより

  • ※2

    ムラタはCO2算定方法を2019年度からマーケットベースに変更

サプライチェーン全体での気候変動対策取り組み

ムラタのGHG排出量のうち、全体の73%をScope3が占めています。そのため、Scope1, 2に加えてScope3のGHG削減も不可欠であるという課題を認識し、現在SBT基準に適合したScope3削減目標を新たに設定する検討を進めています。

目標設定後は、その達成に向け、幅広く関係する部門間で連携しムラタのサプライチェーン全体での気候変動対策を推進していきます。

2020年度 ムラタのGHG総排出量(Scope1・2・3)
Link: サプライチェーン排出量算定の考え方(環境省)別ウィンドウで開くをもとに作成

温室効果ガス(GHG)総排出量の算出方法・第三者保証について

グローバルな算出基準であるGHGプロトコルに従い、以下のScope (範囲) で算出しています。

Scope1: 事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2※1: 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3: Scope1,2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他者の排出)

気候変動への取り組みが企業に求められる中、ムラタでは第三者による保証済みの確かなデータで温室効果ガス排出量を管理し、信頼性の高いデータを開示することが第一歩であると考え、温室効果ガス排出量について第三者保証を毎年取得しています。
また、ムラタでは太陽光発電の導入にも積極的に取り組んでいることから、太陽光発電量についても保証を取得しています。
Link: 独立第三者の保証報告別ウィンドウで開く

  • ※1

    ロケーションベース:その地域の電力網の平均CO2排出係数を使用して算定を行う方法
    マーケットベース:電力契約ごとのCO2排出係数を使用して算定を行う方法
    後者の方が精度が高く、近年主流になってきており、ムラタは算定方法を2019年度からマーケットベースに変更
    (参考Link:ESGデータ集 )
    (参考Link:GHGプロトコル ウェブサイト別ウィンドウで開く )

GHG総排出量の推移とGHG排出量削減の推進

ムラタは過去から継続して省エネの取り組みを実施しており、年間450-600件(4 ~ 5万t-CO2の削減)の省エネ施策を継続的に実行しています。しかしながら、近年では事業拡大ペースがその効果を上回り、GHG総排出量が増加してきました。

そこで、省エネに加えて再エネの導入量拡大に取り組んだことによりGHG排出量は、2018年度をピークに減少に転じ2020年度のGHG総排出量は143.5万t-CO2eで前年度比17.4万t-CO2eの削減となりました。2021年度140万t-CO2e以下を目標とし、また2024年度、2030年度の削減目標に向け取り組みを加速させます。

さらに将来のCO2削減を上積みするため、社内カーボンプライシング制度を設計し、2021年度から運用を開始しています。具体的には、CO2削減に金銭的な価値を与え、投資指標に組込むことでCO2削減効果のある投資実行の意志決定を促すシャドープライシングを導入しました。今後もより効果的なCO2削減に繋がる制度を整えていきます。

GHG総排出量の推移(対象:Scope1+Scope2)

ムラタは電子情報技術産業協会(JEITA)に所属しています。JEITAを含めた電機・電子4団体では、2020年に向けて経団連が策定した低炭素社会実行計画に参加し、生産プロセスのエネルギー効率を年平均1%改善することを目標としています。この目標達成のため、ムラタも工場やオフィスの省エネ施策実施等を通じてエネルギー効率改善に取り組んでいます。

Link: JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)別ウィンドウで開く

Link: JEITA Members別ウィンドウで開く

国内工場における原単位改善率の推移

2020年度におけるSCOPE1の排出量内訳(CO2換算)

Scope GHG種類 排出実績(t-CO2e)
Scope1 CO2 185,586
CH4 0
N2O 0
HFCs 328
PFCs 90,625
SF6 1,642
NF3 0
その他 0

液体PFCの削減

PFCは地球温暖化の原因となる化学物質であり、京都議定書の削減対象物質です。所属する電子情報技術産業協会(JEITA)の自主行動計画に賛同し、ムラタでは『2020年時点で、液体PFCをCO2換算で2002年度比65%減』という目標を設定して取り組みを推進してきました。2015年以降、液体PFC投入量の多い事業所に順次再生回収装置を導入しており、2020年度は2002年度比73%減と目標を達成しています。

液体PFC投入量と削減率の推移 (国内)

物流における環境負荷低減

ムラタでは、製造段階だけでなく、製品を輸送する物流段階においても環境負荷削減に取り組んでいます。

輸送の効率化でCO2を削減するとともに、3Rを推進することで環境配慮型の物流を進めています。

国内物流CO2と海外物流CO2の実績把握

2015年度までは第5次環境行動計画に沿って毎年目標を設定して物流のCO2排出量削減に取り組んできました。その結果、国内物流CO2排出量について一定の成果(2007年度比実質生産高原単位で70%以上削減)を挙げてきました。

これを受け、2016年度以降の第6次環境行動計画では、物流CO2の削減の次の目標を設定するのではなく、通常業務として定着させるステップに移行しました。
引き続き、日常のモニタリングによって、環境に配慮した物流管理業務を継続していきます。

  • 2020年度の国内物流におけるCO2排出量は399t/月で、実質生産高原単位2007年度比74%でした。
  • ムラタの全世界における物流CO2排出量は約13,251t/月でした。
物流時のCO2排出量の推移

エネルギー消費量の削減

組織力を発揮した省エネ活動

ムラタは過去から継続して省エネの取り組みを実施しており、大小合わせて年間450-600件(4~5万トン相当のCO2削減、約7億円のエネルギー費用の削減)の省エネ施策を継続的に実行しています。2015年からは各事業所へのエネルギー監査(省エネ診断)を実施し、ユーティリティ及び生産設備に関する省エネ取り組みの中から水平展開が可能な約200件の省エネチェックリストを作成し、展開しております。その進捗状況や効果の確認、チェックリストの更新を本社主導で行っていきます。
主な省エネ施策としては(1)冷凍機設備などの高効率機器への更新、(2)廃熱回収機の導入、(3)設備待機電力の低減、(4)クリーンルームの加圧最適化による空調動力低減など、温室効果ガス削減効果の大きい施策を中心に改善を進めてきました。

また、自社技術を活用した、事業におけるエネルギーの見える化に積極的に取り組み、省エネ施策の立案・実行を効果的に行える体制の構築を進めています。具体的にはムラタが開発した無線センサを使用して工場内の温度や湿度、各種設備の電流値等のデータを収集し、ネット上で共有しながら工場や本社でともにエネルギー使用状況の分析を可能にするエネルギーマネジメントシステムの導入を推進しています。またこの仕組みはグッドデザイン賞、平成29年度省エネ大賞で「省エネルギーセンター会長賞」を受賞しました。これまでに小諸村田製作所では、このエネルギーマネジメントシステムを活用したエネルギーの見える化によって空調最適化、設備の待機電力低減などを実施し、工場全体の温室効果ガス排出量の2.2%削減を実現しました。ムラタは、今後もグローバルに活動拠点を持つグループ全体に対してエネルギーマネジメントシステムのような先進的な省エネ施策を導入できるよう継続して努力していきます。

さらに、これまで再エネや省エネ投資に関する基準を他の投資基準よりも緩和し、投資を促進してきたことに加え、2021年度からはさらに自助努力による将来のCO2削減幅を上積みするため、社内カーボンプライシングを導入しました。具体的には、CO2削減に金銭的な価値を与え、投資指標に組込むことでCO2削減効果のある投資実行の意志決定を促すシャドープライシングを導入しています。

全エネルギー消費量の推移
  • 全エネルギー消費量は電力購入量を一次エネルギー換算した数値を合計したものです。

省エネルギーを実現する電子部品製造装置を開発

ムラタではエネルギー使用効率の高い電子部品製造装置を開発しています。製造装置の省エネ指標は、単位製造製品数あたりの消費エネルギー(数量原単位)で表し、ベンチマーク機(従来設備)比▲25%以上削減を目標値として、省エネ型の製造装置を新規に開発しています。

工場で稼働している既存の製造設備においても省エネ改善を進めており、2020年度も引き続き、これまでに蓄積してきた約70の生産設備の省エネ施策の水平展開に取り組んできました。

また生産設備の設計技術者の2年目を対象とした省エネ設計研修会を毎年開催し、生産設備の省エネ設計のノウハウを教育しています。

2020年度は新たな省エネ技術の導入検討や、新しい取り組みとしてムラタで開発したセンサと無線システムを組み合わせたエネルギー計測システムを構築して、省エネや生産性向上を図ってきました。

2021年度からは生産設備の消費エネルギーの見える化を進め、より効果の高い省エネ施策の展開につなげていきます。

ムラタは製造装置の省エネ化だけではなく、部資材購入、設計・開発、生産、使用、リサイクル・廃棄の製品の全ライフサイクルにわたる環境負荷に配慮した製品づくりを行っています。
自社独自の認定基準を設け、開発・設計段階から評価し、環境配慮製品としてご提供しています。

Link: 製品を通した環境貢献

再生可能エネルギーの導入

ムラタでは「気候変動対策の強化」の取り組みのひとつとして、事業活動にともなう消費電力における再エネ量の拡大に取り組んでいます。グローバル企業として、国内だけではなくタイなどの海外でも積極的に太陽光発電の導入を進め、再エネ証書の活用も取り入れてきました。2020年度は、太陽光発電設備による発電や再エネ証書の調達など再エネ由来の電力が約4憶kWhとなり、約24万t-CO2の温室効果ガス抑制への貢献量となりました。継続して国内外で再エネの導入を検討し、環境負荷低減に貢献してまいります。

国内外の再生可能エネルギー設備拠点のご紹介

2019年度、岡山村田製作所(岡山県瀬戸内市)が所有する1,200台分の社有駐車場を活用し、日本最大級となる駐車場型メガソーラーシステムを導入し、2020年3月に発電を開始しました。2021年1月にも500台分の駐車場型メガソーラーシステムを追設し、駐車場1,700台分、発電容量は3.7MWになりました。本システムには一般的な表面発電パネルではなく、裏面でも受光可能な両面発電パネルを採用しているため、表面への直射日光だけでなく、駐車車両や地面から受ける反射光による発電も可能であり、設置面積当たりの発電効率を向上させています。本システムによる発電能力は年間で387万kWh、一般家庭800世帯分以上に相当し、削減できるCO2は2,394tを見込んでおります。

岡山村田製作所の太陽光発電システム

2020年度にはタイの生産拠点(Murata Electronics (Thailand), Ltd.)にて工場内建屋6棟の屋根を活用し太陽光パネルを設置し、ムラタ最大規模である4.5MWのメガソーラーシステムを2020年8月に稼働しました。タイ工場は日射量が豊富であり、年間624万kWhの発電量、削減できるCO2は2,949tを見込んでおります。なお、発電した電気は全量タイ工場内で自家消費し、既設の太陽光発電システムと併せて工場全体の約8%を賄える計画です。

Murata Electronics (Thailand)の太陽光発電システム

2020年10月、シンガポールの生産拠点(Murata Electronics Singapore (Pte.), Ltd.)にて工場内建屋の屋根を活用し11,300㎡にもわたる2.2MWの太陽光パネルを設置しました。東南アジアの豊富な日射量を最大限活かし、年間230万kWhの発電量、削減できるCO2は約940tを見込んでおります。なお、発電した電気は全てシンガポール工場内で自家消費し、発電電気の余剰分は同工場敷地内に設置した蓄電池に充電し、電気の有効活用に努めています。

Murata Electronics Singaporeの太陽光発電システム

2021年11月より、金津村田製作所(福井県あわら市)は、使用電力の100%を再エネとするため、北陸最大規模の蓄電池システム「金津村田製作所クリーンエネパーク」を導入しました。金津村田製作所クリーンエネパークは大規模ソーラーパネルと蓄電池ユニットに、生産計画・電力消費・気象情報・発電予測の各情報を統合管理し、リアルタイムでエネルギー使用の最適化を行うことができる独自のエネルギーマネジメントシステムを組み合わせています。発電が可能な日中は、生産量の増減や天候の変化をモニタリングしながら自家発電の利用と蓄電池の充放電を効率的に行い、系統電力の供給負荷を安定的に低減します。また、夜間は日中の電力需要に備えた蓄電池への充電を行い、系統電力への供給負荷の安定化に寄与します。これにより、金津村田製作所は100%再生可能エネルギー利用工場になり、CO2削減効果は年間で約368トンとなる見込みです。

金津村田製作所の太陽光発電システム