Strategyムラタの環境戦略

共創によって社会価値と経済価値の好循環を目指す

スマートフォンや自動車など、私たちに身近な製品や、産業に欠かせない製品に搭載される多様な電子部品を製造するムラタ。「エレクトロニクス産業のイノベーションを先導していく存在でありたい」という想いから「Innovator in Electronics」をスローガンに掲げ、優れた電子部品を安定供給することでグローバルブランドを確立した。

いまや同社が製造するコンデンサやインダクタ(コイル)などの電子部品は、世界中のさまざまな製品に使用されているが、事業規模の拡大とともに、同社が社会に与える影響も格段に大きくなっている。

真の「Innovator in Electronics」として価値を創造していくためには、顧客だけでなく、社会課題に対するイノベーションへと価値提供の幅を広げなければならない。そう考えたムラタは、2030年にありたい姿を描いた長期構想「Vision2030」を策定した。

その絵姿は、「ステークホルダーとの共創」を軸に、イノベーションによって「今を支える」「未来を切りひらく」「社会と調和する」の3つの価値を回すというもの(図参照)。このサイクルによって社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献していくことを目標に掲げている。

社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営
社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営
社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営

「Vision2030」を実現するための成長戦略のひとつとして、ムラタは「社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営」に取り組み始めている。なかでも、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域については9つのマテリアリティー(重点課題)を設定し、グループ会社やサプライチェーンを含む企業活動全体として、その解決に取り組む意思を明確にした。まさに「ステークホルダーとの共創」による課題解決である。

このうち環境(E)領域では、気候変動対策の強化、持続可能な資源利用、公害防止と化学物質管理という3つのマテリアリティーを掲げた。いずれも、製造過程で大量の熱や電力を消費し、鉱物などの資源を利用するムラタだからこそ責任を負うべき、として挙げた重点課題だ。

これらの環境関連の課題解決に、ムラタはどのように取り組んでいるのか。詳しく見ていこう。

Efforts目標値にむけた取り組み

国際的なイニシアチブも高く評価する気候変動にむけた取り組み

もはや地球の未来のために不可避の課題となっている気候変動対策。ムラタは以前から、その解決のため積極的な省エネなどに取り組んできたが、近年の電子部品需要の拡大にともなう増産、M&Aや新規事業の展開により、温暖化ガス(GHG)排出量(*1)は2018年度まで急速に増加していた。

*1 対象:Scope1+Scope2

そこで同社は現在、省エネに加えて、再生可能エネルギー(再エネ)の導入量を拡大する取り組みを推進している。2020年度には業界に先駆けて、事業活動で使用する電力を2050年度までに100%再エネにすることを目指す国際的なイニシアチブである「RE100」に加盟。また、2030年度までにGHG排出量46%削減といった目標設定が、国際的イニシアチブ「SBTi」によるSBT認定を取得している。その目標に沿って、主力製品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)の焼成時における電力負荷を低減し、グループ15拠点以上にソーラーパネルを設置するなど、イノベーションと積極的な設備投資に取り組んだ。

その結果、GHG排出量は2018年度をピークに減少に転じ、2020年度には二酸化炭素換算で前年より17.4万トン相当のGHGを削減。同社はさらに、2030年度までに2019年度比で46%削減して、排出量を87万トンに抑えることを目指している。

再エネの導入比率は、「RE100」の目標に沿って、2030年度に50%、2050年度に100%を達成させる計画だ。これにむけて、タイの工場の屋根に太陽光パネルを設置し、同社最大規模となる4.5MWのメガソーラーシステムを稼働させるなど、積極的な投資を継続している。

Murata Electronics (Thailand), Ltd.の太陽光発電システム
Murata Electronics (Thailand), Ltd.の太陽光発電システム

持続可能な資源利用で地域環境を守る

世界的な人口増加にともない、資源の枯渇、廃棄物量の増加といった社会問題が深刻化してきている。これらの問題に取り組みつつ、持続可能な成長を目指していくために、ムラタは同社の目指すべき姿と2050年までの目標を定めた。

持続可能な資源利用実現にむけたムラタの取り組みイメージ
持続可能な資源利用実現にむけたムラタの取り組みイメージ
持続可能な資源利用実現にむけたムラタの取り組みイメージ

持続可能な資源利用においても、ムラタの排出物の総量削減が重要となっている。そのために、廃液削減にも取り組んでいる。たとえば、生産子会社の富山村田製作所は、主要な廃液であるアルカリ廃液を処理できるプラントを設置し、委託処理から自社処理に切り替えることで、廃棄物の削減を実現した。

また、製造工程で大量に使用する水資源についても、以前から使用量削減の取り組みを進めており、国際的な環境非営利団体CDP(*2)によるCDP WaterでもA-という評価を得ている。今後もさらなる削減に取り組む計画だ。

こうした取り組みの多くは、「社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献していく」というビジョンの共有のもと、本社と各グループ会社が一体となって推進している。

*2 CDPについて
CDPは、企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境NGOのこと。2021年度は総運用資産110兆米ドルに上る590強の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を通じて、各企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護への対応と戦略などをヒアリングし、取り組みを評価している。現在、世界の時価総額の64%強に相当する13,000強の企業と1,100強の自治体を含む世界の14,000強の組織が、CDPを通じて環境情報を開示している。また、TCFDに完全に準拠した世界最大の環境データベースを保有しており、CDPスコアは持続可能で柔軟性が高い脱炭素社会の実現にむけて投資や調達の意思決定を促すために広く利用されている。なお、CDP ClimateはAリスト評価に選定。詳細は以下のウェブサイトを参照。
CDP Global Website
富山村田製作所の廃液処理施設
富山村田製作所の廃液処理施設

Case study事例:金津村田製作所

率先して取り組むことでグループ全体にムラタの想いを広げる

ムラタ本社とグループ会社の共創による代表的な環境関連プロジェクトのひとつが、金津村田製作所(福井県あわら市)による再エネ利用100%だ。

グループ全体で「RE100」の目標を達成するためのファーストステップとして選定された金津村田製作所は、北陸最大規模となる638kWの太陽光発電システムと、容量913kWhの蓄電池システムを設置。これにより自家発電して蓄える電気の全量を工場内で消費し、足りない分は再エネによる電力を外部から購入することで、2021年11月に再エネ化100%を達成した。

「もともとは金津が単独で始めた小さなプロジェクトだったのですが、『再エネ100%工場』のパイロットに選ばれたことで規模が一気に拡大しました。現在、金津だけでなく、北陸全体のムラタの工場における再エネ化100%の実現を目指して実証実験を行っています」と説明するのは、金津村田製作所 取締役工場長の飯山修治氏である。

北陸は、冬は曇りや雪の日が多く、太陽光発電の効率的な利用が困難な地域である。そうした場所で、気象を予測しながらいかに多くの電気をつくり、また、生産計画に沿っていかに過不足なく消費するかという実験を行っている。

金津村田製作所
金津村田製作所

RE100の実現のために自社技術を活用

「再エネ利用100%が困難な北陸で成果を上げれば、その技術やノウハウを世界中の工場に展開できます。当社だけでなく、社会全体の再エネ電力の普及にも貢献できるのではないかと期待しています」と語るのは、本社から技術面でプロジェクトをサポートしている技術・事業開発本部 新規事業推進部 新規事業推進1課 シニアマネージャーの堤 正臣氏である。

とはいえ、不利な条件の中で再エネ利用100%を達成するのは容易ではない。「気象データをもとに予測を立てても、太陽光パネルに積もった雪がなかなか溶けず、期待どおりの発電量が得られなくなるといったこともあります。現場で得たデータを丹念に積み上げながら、予測の精度を上げていきたい」と、金津村田製作所の飯山工場長は語る。

現在、再エネ利用100%のうち、金津村田製作所が自家発電している電力は約13%で、残りは外部から賄っている。不利な気象条件の中ではかなり高い割合だが、同製作所はこれを2023年までに約27%と倍増させることを目指している。

飯山氏は、「『RE100』に取り組むことは、『世の中の役に立っている』という誇りにつながっており、従業員を対象に行ったサーベイでも『ここで働き続けたい』という回答の点数が上がっています。従業員の行動や意識が明らかに変わってきたことを実感します。ムラタなら、環境という視点でさまざまなイノベーションが起こせることを、若いエンジニアたちにも積極的に伝えていきたい」と語る。

共創による社会課題解決への取り組みは、「豊かな社会の実現に貢献する」というムラタの想いをグループ全体に広げているようだ。

森のイラスト
本記事は、2022年3月17日より日経電子版広告特集として1ヵ月間掲載されました。