もはや地球の未来のために不可避の課題となっている気候変動対策。ムラタは以前から、その解決のため積極的な省エネなどに取り組んできたが、近年の電子部品需要の拡大にともなう増産、M&Aや新規事業の展開により、温暖化ガス(GHG)排出量(*1)は2018年度まで急速に増加していた。
*1 対象:Scope1+Scope2
そこで同社は現在、省エネに加えて、再生可能エネルギー(再エネ)の導入量を拡大する取り組みを推進している。2020年度には業界に先駆けて、事業活動で使用する電力を2050年度までに100%再エネにすることを目指す国際的なイニシアチブである「RE100」に加盟。また、2030年度までにGHG排出量46%削減といった目標設定が、国際的イニシアチブ「SBTi」によるSBT認定を取得している。その目標に沿って、主力製品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)の焼成時における電力負荷を低減し、グループ15拠点以上にソーラーパネルを設置するなど、イノベーションと積極的な設備投資に取り組んだ。
その結果、GHG排出量は2018年度をピークに減少に転じ、2020年度には二酸化炭素換算で前年より17.4万トン相当のGHGを削減。同社はさらに、2030年度までに2019年度比で46%削減して、排出量を87万トンに抑えることを目指している。
再エネの導入比率は、「RE100」の目標に沿って、2030年度に50%、2050年度に100%を達成させる計画だ。これにむけて、タイの工場の屋根に太陽光パネルを設置し、同社最大規模となる4.5MWのメガソーラーシステムを稼働させるなど、積極的な投資を継続している。
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- Murata Electronics (Thailand), Ltd.の太陽光発電システム
持続可能な資源利用で地域環境を守る
世界的な人口増加にともない、資源の枯渇、廃棄物量の増加といった社会問題が深刻化してきている。これらの問題に取り組みつつ、持続可能な成長を目指していくために、ムラタは同社の目指すべき姿と2050年までの目標を定めた。
- 持続可能な資源利用実現にむけたムラタの取り組みイメージ
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持続可能な資源利用においても、ムラタの排出物の総量削減が重要となっている。そのために、廃液削減にも取り組んでいる。たとえば、生産子会社の富山村田製作所は、主要な廃液であるアルカリ廃液を処理できるプラントを設置し、委託処理から自社処理に切り替えることで、廃棄物の削減を実現した。
また、製造工程で大量に使用する水資源についても、以前から使用量削減の取り組みを進めており、国際的な環境非営利団体CDP(*2)によるCDP WaterでもA-という評価を得ている。今後もさらなる削減に取り組む計画だ。
こうした取り組みの多くは、「社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献していく」というビジョンの共有のもと、本社と各グループ会社が一体となって推進している。
*2 CDPについて
CDPは、企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境NGOのこと。2021年度は総運用資産110兆米ドルに上る590強の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を通じて、各企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護への対応と戦略などをヒアリングし、取り組みを評価している。現在、世界の時価総額の64%強に相当する13,000強の企業と1,100強の自治体を含む世界の14,000強の組織が、CDPを通じて環境情報を開示している。また、TCFDに完全に準拠した世界最大の環境データベースを保有しており、CDPスコアは持続可能で柔軟性が高い脱炭素社会の実現にむけて投資や調達の意思決定を促すために広く利用されている。なお、CDP ClimateはAリスト評価に選定。詳細は以下のウェブサイトを参照。
CDP Global Website
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- 富山村田製作所の廃液処理施設