持続可能な未来に向けたムラタの挑戦
~再エネ推進を支える担当者の想い~

1. 社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営

ムラタは、2030年のありたい姿を描いた長期構想「Vision2030」の中で、「ステークホルダーとの共創」を軸に、イノベーションによって「今を支える」「未来を切りひらく」「社会と調和する」の3つの価値を回し(下図参照)、このサイクルによって社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献していくことを目標に掲げています。

Innovator in Electronics
ムラタのイノベーションで社会価値と経済価値の好循環を
生み出し、豊かな社会の実現に貢献していきます

Global No.1部品メーカー

〜ムラタがお客様や社会にとって最善の選択となる〜

2. 気候変動対策の経営目標

ムラタは、2050年度までに事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー(以下:再エネ)にすることを目指す国際的なイニシアティブ「RE100」に、2020年12月に加盟しました。主力製品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)の焼成時における電力負荷を低減したり、15拠点以上にソーラーパネルを設置したりするなど、イノベーションと積極的な設備投資に取り組んでいます。

Link: 環境とムラタ 気候変動対策の強化

3. グループ会社と本社の共創による再エネの推進

国内外拠点において、さまざまな手法で再エネの推進を図っていますが、ここでは、本社・グループ会社メンバーが一丸となって、再エネ導入効果を最大化するために、2021年からソーラーパネル+蓄電池+制御ソフト(efinnos※1)を組み合わせたシステムを導入し、実証実験を進めてきた事例について詳細をご紹介していきます。この取り組みでは、発電が可能な日中は、生産量の増減や天候の変化をモニタリングしながら自家発電の利用と蓄電池の充放電を効率的に行い、系統電力の供給負荷を安定的に低減します。また、夜間は日中の電力需要に備えた蓄電池への充電を行い、系統電力の供給負荷の安定化に寄与します。2023年には4グループ会社への導入も完了し、5グループ会社合わせたCO2削減効果は年間累計で-2,265tになりました。

Link: efinnosについて別ウィンドウで開く

  • ※1

    設備容量、再エネ率、経済性等の試算を行い再エネ×蓄電池を最適制御するソフトウェアの名称

グループ会社と本社の共創による再エネの推進のイメージ1
グループ会社と本社の共創による再エネの推進のイメージ2

各グループ会社への導入を進める中で、再エネ利用による気候変動対策という本来の目的に付随して、グループ会社メンバーから環境課題への従業員の意識を高める工夫が自発的に生まれてきました。

本社 推進メンバーのコメント

本社 推進メンバーのイメージ

左:的野 有祐
(主に金津村田製作所への導入担当)
右:吉田 守登
(主に仙台村田製作所への導入担当)

的野:
金津村田製作所は、自社開発した再エネシステムを初めて導入したグループ会社です。私も4か月間、現地に長期出張し、グループ会社の従業員と協力してシステムの立ち上げまで進めました。
稼働後、メディアを招いて記者発表を行った際には、社内外から大きな注目を浴びました。以前は数あるグループ会社の一つでしたが、現在では環境面でグループをリードする拠点になりました。
さらに、2023年に制作したCM撮影地にも選ばれるなどますます注目度が高まっています。これは拠点の方のこれまでの環境への取り組みに加えて、私たち本社事業部が開発した再エネシステムが相まって成し遂げられたものであり、非常に喜ばしいことだと思います。
今後はこの取り組みをムラタのグループ会社だけでなく社外にも広めていきたいと考えています。

吉田:
金津村田製作所で導入した再エネシステムをモデルチェンジし、次に仙台村田製作所に導入しました。仙台村田製作所への導入時はSW(=ソフトウェア)とHW(=ハードウェア)の組み合わせに苦労しなかなかシステムとして立ち上がらず、すぐに再エネシステムを利用できずご迷惑をおかけし申し訳ない思いでした。
また、12月と冬の寒い時期であり屋外設置の電池盤などの立ち上げ作業で長時間屋外にいると体が冷える環境だったため辛い部分はありましたが、仙台村田製作所の方々がホッカイロやヒータなど準備してくれ、なんとかやりきることができました。
導入時、導入後も、問題や課題はあるものの本社事業部とグループ会社が一緒になって改善しながら、太陽光・蓄電池の再エネシステムが動作しているのをみると、ムラタのRE100の取り組みに貢献できたんだなと思います。

事例1:金津村田製作所(福井県あわら市) 
~率先して取り組むプロジェクトリーダー~

もともとは金津村田製作所単独で始めた小さなプロジェクトでしたが、グループ全体の「再エネ100%工場」のパイロットに選定され、本社との共創が始まり、北陸最大規模となる796kWの太陽光発電システムと、容量1,234kWhの蓄電池システムを設置しました※1。これにより自家発電して蓄える電気の全量を工場内で消費し、不足分は再エネによる電力を外部から購入することで、2021年11月に再エネ化100%を達成しました。

北陸は、冬は曇りや雪の日が多く、太陽光発電の効率的な利用が困難な地域です。そうした場所で、気象を予測しながらいかに多くの電気をつくり、また、生産計画に沿っていかに過不足なく消費するかという実験を行っています。プロジェクトメンバーたちは、再エネ利用100%が困難な北陸で成果を上げれば、その技術やノウハウを世界中の拠点に展開でき、ムラタだけでなく、社会全体の再エネ電力の普及にも貢献できるはず・・という強い想いで推進してきました。

2021年当初、金津村田製作所が自家発電している電力は約13%で、残りは外部から賄っていました。気象データをもとに予測を立てても、太陽光パネルに積もった雪がなかなか溶けず、期待どおりの発電量が得られなくなることもある不利な気象条件の中ですが、現場で得たデータを丹念に積み上げながら、予測の精度を上げ自家発電量割合を拡大してきています。

従業員に取り組みを周知するのに一役買ったのが、蓄電池ラッピングデザインの募集と投票でした。最終22案の中から、恐竜王国福井らしいデザインが採用され、「守ろう地球環境」のメッセージとともに、再エネ100%を目指すプロジェクトリーダーの意気込みの象徴として従業員を見守っています。「RE100」に取り組むことは、「世の中の役に立っている」という従業員の誇りにつながり、気候変動対策への意識をより高めることにつながっています。さらに取り組み全体を「金津村田製作所クリーンエネパーク」と称し、従業員ボランティアスタッフが小学生などへ環境教育を行い、地域の方々の環境意識向上にもつながる活動も始めています。そして、ムラタグループのサステナブルな挑戦の象徴として2023年12月から放映開始したCMシリーズの「社会と調和する篇」ロケ地にも選ばれました。

Link: 金津村田製作所脱炭素の取り組み
Link: CMサイト別ウィンドウで開く

  • ※1

    2024年1月現在(導入当初は太陽光発電システム:638kW、蓄電池システム:913kWh)

事例1のイメージ1
事例1イメージ2

金津村田製作所担当者のコメント

金津村田製作所担当者のイメージ

左から:酒井 孝典、齋藤 雄太、
深田 康夫、東 尚暉

本社事業部との先進的な取り組みにより、ムラタグループで初めての再エネ100%を達成し、ムラタの存在感を高めることに貢献でき嬉しく思いました。また、環境価値向上を目指し、全従業員が参加する省エネ活動や意識向上活動も展開しました。
メディアへの発表やCMの放送によって家族からも良い取り組みをしている会社だねと話題にあがり社内外からも多くの反響があったこと、またラッピング企画や環境教育などを通じて、従業員の環境問題への関心も高まりました。これによって従業員一人ひとりが自ら行動する意識が芽生え、全員が参加できる活動に広まっていきました。
今後も金津村田製作所は再エネモデルの事業所として更なる発展を目指します。技術革新や省エネ活動に取り組むことでムラタグループおよび社会全体に貢献できる存在でありたいと考えています。

事例2:仙台村田製作所(宮城県仙台市) 
~みんな(従業員)を取り組みの中心(主役)に~

気象条件や生産品目など、拠点によって大きく異なる操業条件下でのシステム稼働状況を分析し、知見の蓄積を行い、各製造拠点で効果的に活用できるシステム開発に取り組んでいくことを目的に、次の展開先として選ばれたのは仙台村田製作所でした。857kWの太陽光発電システム※1と、容量1,076kWhの蓄電池システムを設置しました。

仙台村田製作所は2021年7月に金沢村田製作所から分離・独立し、強みである「追求力」と「結束力」を活かして「東北に仙台ムラタあり」というプレゼンスを発揮すべくグランドデザインを策定し、浸透を進めている時期でした。またSDGs取り組みを従業員に啓蒙していく時期とも相成って、「SD”M”Gs ~みんながまん中SDM的SDGs~※2」という想いを込め、SDGs関連のアイコンをまとった蓄電池ラッピングが完成し、環境に配慮したMade in Sendaiの製品が世界中に届けられていく様子を見守っています。こちらの取り組みは、せんだいE-Action※3にも取り上げていただきました。

Link: せんだいE-Action動画別ウィンドウで開く

  • ※1

    2024年1月現在、導入当初は666kW

  • ※2

    SDM=SenDai Murata=仙台村田製作所のこと、ムラタ(Murata)のM、みんな(Minna)のMが真ん中にある=みんな(従業員)がこの取り組みの主役であるという意味を込めています

  • ※3

    震災時にエネルギーの大切さや有限性を認識した経験を活かし、持続可能な社会を築いていくために、一人ひとりがこれからのエネルギーの使い方を考え、できることから「省エネ・創エネ・蓄エネの3つのエネルギー=3E」を実践していく市民・事業者・行政協働の運動として、2013年(平成25年)にスタートされた活動

事例2のイメージ

仙台村田製作所担当者のコメント

仙台村田製作所担当者のイメージ

後ろ左から:浦山 祐輔、佐藤 光紀、
板垣 昌彦、氏家 光司、石井 聡、
齊藤 悦広
手前左から:小田島 豊、内ヶ崎 昭人、
小路 拓実、高橋 孝喜

仙台村田製作所は再エネ100%を達成していますが、太陽光発電は3%、残りは再エネ電力を電力会社から調達しています。さらなる再エネ推進のため、太陽光パネルの増設、再エネ電力発電所の開発や拡大に寄与する電源調達を引き続き検討していきます。蓄電池は、電力安定化の実証実験を行いつつ、ディマンド・リスポンス※4に活用しています。活用事例を積み重ね、蓄電池システムの普及に貢献したいと思います。再エネ100%達成により、温室効果ガス削減取組の優良事業者の一つとして仙台市HPで社名が公表されるなど地域社会に貢献している実感があります。従業員一人ひとりが、地域社会に貢献していることを実感し、さらに省エネ意識を高めていけるように取り組んでいきます。

  • ※4

    ディマンド・リスポンス:消費者が賢く電力使用量を制御することで、電力需要パターンを変化させることです。これにより、電力の需要と供給のバランスをとることができます。

事例3:伊勢村田製作所(三重県津市) 
~Pureチャレンジの実践に向けて~

2023年には、さらに3拠点で同システムが導入されました。その一つの伊勢村田製作所では1,316kWの太陽光発電システムと、容量538kWhの蓄電池システムを設置しました。伊勢村田製作所は中勢北部サイエンスシティ内に事業所を構えており、サイエンスシティは海抜30m以上の高台にある関係上、災害時の地域の方の避難所としての役割を担っています。災害発生時に停電になっても、太陽光発電を活用して避難者の方のサポートができる体制を考慮し、保安室および一部駐車場のLED照明をオフグリッド※1で稼働できるように準備し、従業員の一時帰宅困難者の安全確保や地域住民の方のスマートフォン・携帯電話の充電などのお役に立てることを計画中です。

従業員向け太陽光パネル完成セレモニーの際、伊勢村田製作所一丸となってRE100/SDGsに取り組んでいく想いを共有しました。その想いを表現する場として、蓄電池システムのラッピングデザインを従業員募集し、鮮やかな青と緑を基調とし、周りの自然環境と溶け込むPTI※2から、「持続可能な世界の実現を発信していく」という意志を込めたデザインが採用されました。伊勢村田製作所のグランドデザイン「PURE CHALLENGER」で目指す「Positive(前向きにチャレンジし続ける人財)ことを体現した取り組みとなり、ここから様々な自発的SDGs取り組みにつながっていっています。

Link: 三重県地球温暖化対策総合計画(P.45)別ウィンドウで開く

  • ※1

    電力会社に送電網(グリッド)に繋がっていない状態、あるいは電力会社に頼らずとも電力を自給自足している状態

  • ※2

    Polymer Technology Innovator としての伊勢村田製作所を表すムラタグループ内略語

事例3のイメージ1
事例3のイメージ2
事例3のイメージ3
事例3のイメージ4
事例3のイメージ5

伊勢村田製作所担当者のコメント

伊勢村田製作所担当者のイメージ

左から:秋野 高史、星野 幸治、
大野 真弘、田中 秀憲、大橋 篤

私たちは、再エネの重要性を理解するために、RE100について学び、啓発活動に取り組んできました。社内でのプレゼンテーションやイベントを通じて従業員の理解を深めるとともに、地域コミュニティを通じた情報発信も行いました。啓蒙活動は創エネ・畜エネ・省エネの3つのエネ活動を従業員が一丸となって取り組むための重要な活動です。これらの取り組みは再エネへの意識向上だけでなく、他企業と交流するきっかけ作りにもなりました。私たちは引き続きRE100を学び啓蒙活動を展開していきます。