環境とムラタ

生物多様性の保全

生物多様性保全の基本的な考え方

生物多様性は、地球上のすべての生命体が相互に依存し合い、支え合って生きていることを示す重要な概念です。
ムラタは、地域社会や自然との共生を重視し、長年に亘り築いてきた地域との信頼関係を基盤に、自然資本を活用する企業としての責任を果たしながら事業活動を展開しています。

「EHS防災方針」のもと、生物多様性保全にむけた取り組みを積極的に推進し、バリューチェーン全体での環境負荷低減に努めています。その際、脱炭素、資源循環、生物多様性保全の各取り組みがトレードオフに陥らないよう配慮し、環境の維持・回復・充実を図っています。1988年に制定した「ムラタの緑化方針」に基づき、事業所緑化や「ムラタの森」による里山保全など、地域の生態系保全に継続して取り組んでいます。私たちは、従業員一人ひとりが多様な生態系を守る意識を持ち、地域社会と協働しながら自然との調和を目指し、グローバル規模での持続可能な社会の実現とネイチャーポジティブの推進に貢献していきます。
Link: 村田製作所グループ EHS防災方針

TNFDに対する基本的な考え方

ムラタは、TNFDに基づき、LEAPアプローチを用いた評価と分析を実施しています。TNFDの枠組みやガイドラインへの適合を図るとともに、ムラタの事業活動による生態系への影響や自然資本への依存度を正確に把握し、リスクと機会に適切に対応することが重要だと認識しています。ビジネスモデルと生態系の関係を見直し、環境配慮と経済的価値が両立する持続可能な成長モデルの構築を推進します。

  • ※Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然と社会の相互作用を分析し、その結果を開示していく枠組みのことです。

ガバナンス

ムラタは、生物多様性保全に関するガバナンス体制を構築しています。この体制には、現場から経営層まで一貫したコミュニケーションラインがあります。

取締役会は、自然資本を含むすべてのリスクと機会について説明責任を負っています。代表取締役社長と常務執行役員は、それぞれCSR統括委員会と環境委員会の委員長を務めており、ムラタの事業活動が依存する自然資本への影響を把握し、監督する責任を負っています。環境委員会では、環境取り組みに関する全体的な戦略を統括し、グループ全体の目標の達成状況を監督する役割を担っています。環境委員会は活動実績をCSR統括委員会に報告し、CSR統括委員会はその内容を取締役会に報告し議論を行っています。取締役会は、ムラタの事業が自然資本にもたらすリスクや機会を勘案し、関連するムラタの方針、現在の取り組み状況を踏まえて、経営計画や事業戦略を監督しています。

各事業所では、全社の環境目標の達成にむけてそれぞれの目標を設定し、四半期毎に本社サステナビリティ推進部に達成状況を報告して進捗を管理しています。また、事業所が立地する地域に根付いた環境取り組みや緑化活動を推進し、担当者同士が定期的に意見交換できる場を設けて社内の交流を活発にしています。さらに、インセンティブの一環として、各事業所の取り組みに対し表彰制度を設けており、社内で設定する基準や指標に基づいて功績のある取り組みを表彰しています。

ガバナンス体制図

戦略

ムラタは、対象とする事業および拠点を選定し、評価ツールを用いて、自然資本への依存度と周辺環境に与え得る影響度(インパクト)を評価しました。(表1)

ENCOREでは、ムラタの事業がどのような自然環境に依存し、影響を与えているかを評価しました。
評価の結果、水供給や水の浄化、流量調整および洪水や嵐が起きた時の緩衝といった自然システムに依存していること、汚染(水質、土壌)に関して影響度が高いことが分かりました。
また、WWF Risk Filter Suiteを用いてサプライチェーン上の川上、川下産業の自然への依存度、影響度もまとめました。(表2、3)

表1 使用した評価ツール
使用したツール 評価対象
ENCORE 自社の依存度および影響度(インパクト)
WWF Risk Filter Suite 自社およびサプライチェーンの川上・川下にあるステークホルダーの依存度および影響度(インパクト)
WWF Biodiversity Risk Filter 土壌、水、生態系、大気等の物理的リスク
WWF Water Risk Filter/Aqueduct 水ストレス、枯渇リスク、洪水リスク
表2 サプライチェーンにおける自然への依存度

大きい画像を見る 別ウィンドウで開く

表3 サプライチェーンにおける自然への影響度(インパクト)

大きい画像を見る 別ウィンドウで開く

リスクと機会の管理

CSR統括委員会では、社会、環境、経済に関わる重点課題(マテリアリティ)を、構造化されたプロセスで定期的に評価しています。
Link: マテリアリティの特定

ムラタでは、気候変動や循環資源など環境に関連する社会動向や顧客の要求について、各担当部署が責任を持って定期的に情報を収集し、事業活動に影響を及ぼすリスクや機会を把握しています。これまでに進めてきたリスクと機会の分析成果は、今後の生物多様性保全の取り組みに活用していく予定です。

現在は、生物多様性保全に関するリスクおよび機会についてのデータ収集を進めており、TNFDのガイドラインに沿った評価方法や指標を定め、シナリオ分析や対応策の検討を深めてまいります。
Link: TCFD対応におけるリスク評価

表4 リスク
カテゴリー 内容
物理リスク 急性リスク 例)
  • 火災や自然災害による生産の停止、化学物質の漏洩等の環境事故事故への法的制裁
慢性リスク 例)
  • VOCの使用、気候変動に伴う洪水、事業サイト周辺での水枯渇や水質汚染
  • 枯渇リスクの高い資源の確保、原材料の高騰、環境規制強化による経営コストの上昇
移行リスク 政策 例)
  • 日本国内、および生産拠点を置く諸外国での法令や規制の変化
  • 変化する規制による対応費用の増加
市場 例)
  • 投資家やお客様からの環境配慮へのご要請
  • サプライヤーチェーンにおける持続可能性要求の高まり
  • 資源の枯渇リスクおよび地政学リスク、エコ製品やクリーンな調達への関心の高まり
技術 例)
  • 新技術の開発遅れによる市場シェアの低下
評判 例)
  • サステナビリティ報告書等の不備への信頼性の低下、業界内での信頼の失墜
  • 顧客からの批判や訴訟、ソーシャルメディアでのネガティブキャンペーン
責任 例)
  • 環境被害に対する賠償責任、取引先との契約違反、商品の欠陥に対するクレーム
  • 持続可能性目標の未達成に対する説明責任
表5 機会
カテゴリー 内容
物理リスクへの対応 短期的な機会側面 例)
  • 環境保護活動を通じた企業イメージの向上
  • 自然災害に備えたインフラ整備による競争優位性の確立
長期的な機会側面 例)
  • 循環型経済モデルへの移行、自然資本の共創活動による地域との連携強化
移行リスクへの対応 政策 例)適切な環境規制対応による新規顧客の獲得
市場 例)
  • エコ製品ラインナップ拡充による新しい顧客層へアクセス
  • 環境配慮型材料を使用した製品による市場の開拓
  • 投資家やお客様からのESG重視トレンドへの適応
技術 例)
  • 環境技術革新がもたらす、新しい製品開発や事業の展開
  • 再生可能エネルギー活用技術導入によるブランディング強化
評判 例)
  • 環境意識が高いお客様からの支持によるブランド価値の向上
  • 地域との共生や自然環境への貢献による企業イメージの向上

指標と目標

TNFDのガイドラインで示されるコア指標に基づき、社内で目標を設定している項目について、データの分析、評価、第三者認証を受けて情報開示を行っています。
目標設定やデータの分析を行えていないものについては、今後の開示に向けて分析ツールの選定や数値の精度向上に努め準備を進めています。

表6 指標と目標
指標項番 自然へのインパクトドライバー 指標 開示内容/実績 2025-2027年中期目標
または、取り組み内容
C1.0 陸上/淡水/海水 総空間フットプリント 基準年度を設定し、改変を行った総面積を集計し公表する。 目標設定をしていない。
事業を行う拠点の新設や拡大等で土地を改変する際に測定および評価を行う。
C1.1 陸上/淡水/海水・海洋利用・変化範囲 緑化面積、ビオトープや里山活動を行っている面積を集計し公表する。 目標設定をしていない。
定期的に各拠点より取り組み状況をヒアリングし、集計および評価、取り組みの戦略策定を行う。
C2.0 汚染/汚染除去 土壌汚染に放出された汚染物質
  • 自社が保有する土地について、適切な土壌汚染防止対策を行っている。
  • 新しい土地の購入時または形状を変更する際には法的な対応を実施している。
  • 汚染の可能性がある物質の漏洩の可能性を確認した際の手順および管理方法を社内で用意しており都度適切に対処している。
目標および評価の指標設定は行わない。対応については、左記の通り。
C2.1 排水 排水量を公表している。
Link: 水資源管理
全社横断的な目標設定をしていない。ただし、水ストレスの高い地域での取水対策等の個別施策を計画し、施策の進捗を管理している。
C2.2 廃棄物の発生と処理 全廃棄物の排出量および有害廃棄物(非有害廃棄物)のそれぞれの排出量、埋め立て処分からの転換割合を公表している。
Link: 廃棄物管理
目標を設定している。
持続可能な資源利用率:16%(リサイクル材料の導入比率)
循環資源化率:41%
C2.3 プラスチック汚染 プラスチックの使用量およびリサイクル率を取りまとめて公表する。 目標設定をしていない。
プラスチックの使用量または再生利用可能性を法規制や規則を順守するための対応を進めている。
C2.4 非GHG大気汚染物質の合計 (NOx,SOx,VOC)のデータを公表している。
Link: 化学物質管理
目標設定している。
VOCの使用量について2030年に2021年比30%を目標値として設定している。
C3.0 資源の使用/補充 水不足地域からの取水と消費 高リスク事業所での水使用量を取りまとめ後数量を掲載する。 全社横断的な目標設定をしていない。ただし、水ストレスの高い地域での取水対策等の個別施策を計画し、施策の進捗を管理している。
C3.1 陸・海・淡水から調達するリスクの高い天然商品の量 調達高リスクの資源について、社内での対応検討中。
CSR調達ガイドラインを運用しており、サプライヤー様に遵守いただきたいことを明示するとともに、さらに上流での紛争鉱物の制限についても監視している。
目標設定をしていない。
C7.0 リスク 自然関連の「移行リスク」の評価を現在実施中。脆弱な資産、負債、収益、費用があれば取りまとめて開示する。 -
C7.1 自然関連の「物理的リスク」の評価を現在実施中。脆弱な資産、負債、収益、費用があれば取りまとめて開示する。 -
C7.2 事前関連の負の影響により、2024年度は罰金/科料/訴訟を受けていない。 -
C7.3 機会 定量的な数量の未算定。各種分類方法を参照して取りまとめを進める。 -
C7.4 自然に対して好影響となる製品開発およびサービスの創造を継続的に実施する。定量的な数量は未算定。 -

生物多様性保全への取り組み

緑化活動の推進

地域に生息する生物

ムラタでは、工場立地法の順守や景観の配慮だけでなく、地域のエコロジカルネットワークの保全・形成を意識した緑化活動を展開しています。

  • 1.

    樹木の植栽においては、地域に生息する野鳥を調べ、その野鳥の好む実のなる樹木を積極的に植栽しています。

  • 2.

    緑化活動で生じる雑草を堆肥化し土壌改良に再利用するとともに、剪定枝をチップ化しカブトムシなどの昆虫類の生育環境づくりなどに利用しています。

  • 3.

    生態系保全の障害となる除草剤の使用を控えるとともに、殺虫・殺菌材などの化学物質もなるべく使用しない配慮をしています。

  • 4.

    ビオトープをつくり、もともとその地域に生息していた生物の保全や、復元・再生活動を行い、従業員や地域の児童の生態系学習の場として活用しています。

  • 5.

    絶滅危惧種に登録されている植物の保全として、コモウセンゴケ、サギソウ、バイカモなどの保全・再生活動を行っています。

  • 6.

    敷地および敷地周辺にあるセイタカアワダチソウ、オオキンケイギク、セイヨウタンポポなど、生態系を脅かす外来種の拡散抑止、駆除を行っています。

福井村田製作所のサギソウ
岡山村田製作所のビオトープ

ムラタでは、地域貢献を主目的として、各事業所において緑化活動を続けてきました。

  • 1996年 野洲 滋賀県工場緑化コンクール銀賞
  • 1998年 福井 花のまちづくりコンクール 推進協議会長賞
  • 1998年 野洲 日本緑化センター 工場緑化推進大会表彰
  • 1999年 出雲 日本緑化センター 工場緑化推進全国大会表彰
  • 2000年 出雲 中国通商産業局長賞受賞
  • 2007年 本社 「モデルフォレスト運動」の日本実践第1号としてムラタの森活動開始
  • 2007年 本社、横浜、野洲、八日市、金沢、岡山
    社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)取得(関西第一号)
  • 2018年 アズミ 工場緑化推進全国大会 関東経済産業局長賞受賞
  • 2021年 八日市 緑化優良工場等近畿経済産業局長表彰
  • 2023年 岡山 環境おかやま大賞受賞

「ムラタの森」活動の推進

生物多様性保全の施策として、里山保全の重要性が言われております。ムラタでは、国内数ヶ所で「ムラタの森」と題した里山保全活動に取り組んでおり、地元住民の方々のご支援をいただきながら、当社従業員、家族ボランティアによる間伐や下草刈りなどを進めております。

この活動を通じて従業員・家族が心身ともにリフレッシュできる場となることも目的としています。

間伐
間伐材を利用したベンチづくり

「ムラタの森」所在地

  • 京都府亀岡市神前区
  • 福井県越前町小曽原地区
  • 石川県鳳珠郡穴水町