円形を7等分した外輪、そこに突き刺さる3本のスポーク すべてが純国産の木材で作られた、組み立てるだけで強固さが増す車輪

天然乾燥させた木材を伝統的な技法で車輪にしていく

車輪の製造は、材料である木材を調達し、寝かせるところから始まる。乾燥状態を見ながら3~5年、天然乾燥させる。最近では人工乾燥も普及しているが、高周波で加熱する強制乾燥となるため、木材に割れが生じやすい。車輪にとって割れは大敵で、車輪を構成する40点近い部品の一つにでも割れが生じると、車輪全体が壊れることになりかねない。割れを防ぐ上で、天然乾燥の工程は重要だ。ただ寝かせる期間が長いため、注文を受けてから作業を行っていたのでは納期に間に合わない。あらかじめ木材を確保しなければならない。

車輪の製造で最も難しいのは、最後に大羽をはめる工程。ほとんどの車輪は、7枚の「大羽 (オオバ) 」とそれをつなぐ「小羽 (コバ) 」、それを支える21本の「輻 (ヤ) 」、そして中心の「轂 (コシキ) 」などで構成されている。なぜ、360度の円に用いる部品が割り切れない「7」という枚数、奇数なのかはよくわかっていないが、1500年もの間、同じやり方で作られてきた。

360度を7等分する角度を出すために用いられるのは、「さしがね」という大工道具である。直角のL字型をしており、表裏、両方の辺に目盛がある。日本で使われているものは、目盛が33分の1m単位でふってあり、長さは尺貫法の1寸になる。裏の目盛は、表の1.414倍でふられ、その数値は2の平方根に等しい。この目盛で木材の直径を測れば、丸材からとれる角材の最大幅が求められる。

先人たちは、こうした技術によって「7」という数字を基本とする部品を作り、車輪を組み立ててきた。

タイヤのルーツ 連綿と受け継がれてきた製造技術

日本では、平安時代の牛車以降、車輪は乗り物の部品としては発展してこなかったが、明治時代になり、西洋文化の導入に伴って、ようやく車輪の文化が広まることとなった。以降、日本では、人力車やリヤカーなどが普及して車輪の需要が増し、各地で多くのメーカーが設立された。

そして、今日。「以前は何軒かあった車輪製造の会社も今は皆無。おそらく京都では当社のみになった」と、竹田氏は言う。車輪は、強度を増すために、鉄の輪をはめたものが長らく作られてきたが、やがてゴムを使った「タイヤ」へと進化する。このように車輪は進化を遂げてきたわけだが、基本の大切さを考えるとき、連綿と受け継がれてきた製造技術は貴重だ。

竹田工務店にも、ある自動車メーカーが製造工程を調べにきたことがあるという。1000年以上もの時を経て継承されてきた技術、車輪の原点を知ることは重要なことである。

車輪ができるまでの主な工程

木材を寝かせる天然乾燥の工程

材料となる木材は樹齢300年ほどで、最低でも直径75cm以上あるもの。丸太で調達された材料は、100×30×21cmの四角柱に切り出され、最低でも3年、理想的には5年かけて天然乾燥させる。中心部分の「轂 (コシキ) 」といわれる部分はケヤキが使われ、他の部分はカシが使われる。カシもアカガシが望ましいが、最近では原木が不足しておりシロガシで代用する場合も多いという。また、寸法の面でも、近年は上記の条件を満たす大木が減り、材料の確保が難しくなりつつある。

A: Natural seasoning of wood

材料を切り出し、組み立てる工程

乾燥した材料から一つひとつの部品を作っていく。各部品が車軸に対して直角に入らなければならないため、「さしがね」などを使って角度を計算しながら作業を進める。部品が完成すれば、あとは組み立て。7等分された円弧状のものを、クギも接着剤も使わず、伝統の木組み工法によって組み立てる。最後の大羽は外側から内側へ、なかば強引にはめ込む。その際、スポークである輻 (ヤ) の角度を調整しながら、巨大な木槌で打ち込んでいく。このときも、角度が車軸に対して直角でなければならず、力がかかりすぎると、輻が折れたりする。ただ、いったん組み立ててしまえば、縮められた輻が元に戻ろうとする力が大羽と小羽を支え、どこかが破損し、割れない限りは外れることはない。竹田工務店では、部品をはめ込むときの専用の油圧ジャッキ、車軸に対して直角に穴をあけるボール盤を内製化し、作業性の向上を図っている。

B: Construction of parts, wheel assembly

円形に切り出され、完成にいたる工程

車輪は組み立てられてから円形に切り出される。円形にするために、4角形を8角形に、そして16角形にという具合に、角を切り落としていく。最後には飾りビョウが打たれ、塗装が施される。祇園祭の鉾に使われる車輪は、一輪の重さが500kgほどにもなる。用途にもよるが製品寿命は100年以上。その間、壊れた部分のみを取り換えて使用する。祇園祭では江戸時代初期 (1600年代) に製作されたものも、いまだに使われているという。「壊れたところだけを修理して息長く使う。それが木造の良いところ」と、竹田氏は語る。

C: Rounding and finishing of wheel

車輪各部の名称

Wheel part terminology