ムラタの人材

安全・安心な職場と健康経営

ムラタでは、経営資本を”社是の実践を通じて培ってきた価値創造の源泉”と位置付けています。なかでも「人」は価値創造の中核であると考えており、人的資本における重要課題の1つである「エンゲージメント」に、安全・安心な職場と健康経営を掲げています。
これに基づき、2030年のありたい姿を「安全な職場で、従業員一人ひとりが自身のことを健康だと実感しながら、働けていること」としました。ムラタで働くすべての人が、「心」「体」「人と社会との関係」が調和された健康状態で、自然体の安全行動をしていること、職場環境においては、仕事に安心して専念でき、ヒヤリ・ハットが少ない状態であることを目指します。

Link: 人権・労働に関する基本方針 村田製作所グループ EHS防災方針 ムラタ健康宣言

目標

ムラタで働くすべての人が、安全・安心な職場や自分自身が健康だと実感しながら働ける環境を目指すために、以下のように2024年度目標、2030年度目標を設定し、健康安全活動を推進していきます。

2024年度目標
  • 死亡重大災害:0件
  • 労働災害千人率:1.35未満
  • 発火事故件数:2019-21年度平均比(見込み)30%削減
  • 主観的健康観:80%(内、非常に健康と回答14%)
2030年度目標 死亡重大災害がなく、従業員が怪我をせず、事故もなく、いきいきと働けている職場にする。
  • 死亡重大災害:0件
  • 労働災害千人率:1.0未満
  • 発火事故件数:0件
  • 主観的健康観:80%(内、非常に健康と回答20%)
  • ※ ムラタでは、休業災害と不休業災害を含めた千人率で管理しています。

健康安全推進体制

ムラタでは、トップマネジメントをグループ全体の健康安全活動の統括責任者に置き、サステナビリティ推進部が事業所を横断しての健康安全活動を支援・推進しています。
また、トップマネジメントの諮問機関である健康安全推進委員会では、健康経営および安全衛生に関わる以下の内容を審議・共有をしています。健康安全推進委員会で議論された事案は、CSR統括委員会へ報告・審議されるとともに、議論した内容については取締役会の監督を受けています。

  • 方針とありたい姿

  • 重要課題と目標

  • 施策と実績報告

健康安全推進委員会の参加者は、各事業所の事業所EHS責任者および安全専門委員で構成しております。事業所においては、トップに常勤経営責任者を置き、事業所EHS責任者の指示のもと事務局が健康安全活動を支援・推進しています。また、事業所の健康安全活動を円滑かつ、確実に実施することを目的に、会社と労働組合が従業員の安全・健康などに関して協議する場として、安全衛生委員会を開催しています。
なお、産業保健職に関しては、専属産業医16名と保健師・看護師64名を配属しています。

健康安全推進体制のイメージ図

Link: コーポレート・ガバナンス体制の概要

安全で安心な職場環境づくり

マネジメントシステム

ムラタでは、労働安全衛生法およびISO45001要求事項に基づき「EHSマネジメントシステム」を構築しています。
また、EHSとの統合やISO化も見据え、独自の「防災マネジメントシステム」も構築しており、安全で安心な職場環境づくりを達成させることを目的に、この2つのシステムを運用しています。

これらのマネジメントシステムはEHS防災方針を基に「リーダーシップとコミットメント、組織の役割・責任と権限、働く人の協議と参加、リスクや機会の特定と評価・運用方法の決定、危険源の特定、法的およびその他の要求事項の決定、取り組みの計画策定、EHS目標やそれを達成するための計画策定、リスクアセスメントによる評価と対策、資源・力量・認識・コミュニケーション、文書化した情報の管理、インシデント(労災・環境事故・火災)の記録と報告、運用の計画および管理、緊急事態への準備および対応、モニタリング・測定・分析・パフォーマンス評価、順守評価、内部監査、マネジメントレビュー、改善の機会の決定、インシデント・不適合および是正処置など」それぞれの規定に沿ってPDCA管理しています。

  • P:

    ①危険源の特定、リスクアセスメントおよび新規管理策の決定
    ②法的およびその他の要求事項
    ③目標および実施計画

  • D:

    ①力量、教育空連および自覚
    ②資源、役割、実行責任、説明責任および権限

  • C:

    内部監査

  • A:

    経営層による見直し(マネジメントレビュー)

また、マネジメントシステムを運営・推進する上で、生産拠点の担当者同士のネットワーク構築が重要であると位置付け、定期的に担当者会議を実施して、目標を達成するために情報交換会を行い、推進体制の強化を図っています。

EHSマネジメントシステムのイメージ図

実績(2024年度目標に向けた2022年度の振り返り)

ムラタでは、従業員が安全・安心に仕事ができる職場環境づくりにむけ、安全衛生活動を推進してきました。また、休業災害・不休業災害ともに根本原因は一緒であると捉えて、目標指標の労働災害千人率は、休業災害だけでなく不休業災害も含めて管理を行い、労働災害の削減に取り組んでいます。
2022年度の労働災害千人率(対象:社員、派遣社員、常駐請負社員)実績は、増加ピークであった2018年度に比べて約40%減となっています。今後も、2024年度目標達成にむけて、継続して安全衛生活動を推進していきます。

労働災害千人率※1 / 重大災害発生件数

  • ※1

    労働災害千人率 …1年間の労働者1,000人当たりに発生した死傷者数の割合を表しています。
    ムラタでは休業災害と不休業災害を含めた千人率で管理しています。
    対象:社員、派遣社員、常駐請負社員

その他のデータに関しては、 ESGデータ集 / GRIスタンダード対照表 / SASB対照表をご覧ください。

<その他のデータ>

  • 休業災害度数率(LTIFR)
  • 重大災害発生件数
  • 労働災害千人率 従業員別
  • ISO45001認証取得割合
  • 専属産業医の人数

2022年度重大労働災害発生と事後対応

2022年度は2018年度から5年連続で、死亡事故および後遺障害の残る重大労働災害の発生はありませんでした。
※(対象 : 社員、派遣社員、常駐請負社員)
今後もリスクアセスメント実施によるリスク低減対策の実施、社内通達や社内安全パトロールの実施など労働災害の抑止施策を徹底し、重大労働災害の未然防止に努めていきます。
重大労働災害の発生時には、類似災害の未然防止のため以下の手順に基づき迅速に対応します。

  • 発生後即、災害発生事業所は、災害速報を本社へ連絡

  • 連絡受信後即、本社は、災害速報を経営層と全社へ連絡。災害内容により、お客様へ報告

  • 発生後2週間以内に、災害発生事業所は、災害原因や再発防止対策の詳細を本社へ連絡

  • 連絡受信後即、本社は、災害原因や再発防止対策の詳細を経営層と全社へ連絡。災害内容により、経営層と再発防止策対策を審議し、全社へ水平展開

  • 再発対策完了後、災害発生事業所と本社は、経営層が出席する全社委員会にて、完了報告の最終審議

従業員の安全と健康

教育・啓発

ムラタでは、役割別・階層別の安全衛生教育を実施しています。現在、労働災害分析から「技術不足」・「知識不足」により、新入社員や作業に未熟な若年社員の労働災害発生件数が、全体の約半数を占めているため、危険感受性に焦点を当てた危険体感研修も実施しています。この危険体感研修を通じて、実際に危険を疑似体験し安全意識を高めることで、作業中の事故の未然防止を図っております。危険体感研修は国内生産拠点を中心に導入しており、海外拠点への導入も進めています。さらに社会価値目標の達成にむけた取り組みを後押しする経営管理制度であるサステナビリティ投資促進制度を活用しながら当研修の整備を進めていきます。

福井村田製作所MS(Murata Safety)センター 危険体感研修

安全文化の醸成

ムラタでは、安全文化の醸成にむけた様々な取り組みを実施しています。社会価値と経済価値の好循環を目指す中で、社会価値向上やESG活動の推進に対して著しい貢献を果たしたと認められる活動を対象に、社長表彰のひとつとして「社会価値貢献賞」が設けられており、2022年度は、Murata Electronics Philippines Inc. の労働災害ゼロ状態を維持している着実な活動が表彰されました。また、リスクアセスメントの仕組みを見直し、リスク抽出の網羅性を高めた新リスクアセスメントの国内拠点を中心に導入するとともに、海外拠点では中華圏安全交流会開催などの現場に入り込んだ安全活動や必要な人材育成を行い、安全文化の醸成を図っております。

Murata Electronics Philippines Inc. MSセンター 不安全状態体感トレーニング

今後の取り組み

目標指標 実績 単年度目標
2022年度 2023年度 2024年度
死亡重大災害 0件 0件 0件
労働災害千人率 1.44 1.42未満 1.35未満
今後の取り組み
  • 新リスクアセスメントをすべての拠点に導入する
  • 新リスクアセスメントを継続して現場に即した教育体制を構築する
  • 安全衛生教育体系を整備する
  • 何も起こらない平穏状態であることに価値を置く風土を作る

今後は、各生産拠点などで、新リスクアセスメントの教育から実施までを自律して運用管理できる体制の構築や安全衛生教育体系の整備、健康安全安心評価制度の導入を展開していきます。これらの組み合わせを通じて、従業員一人ひとりの安全リテラシーのさらなる向上、経営・管理職層が責務を負う「安全配慮義務」と従業員自身が担う「自己保健義務」との双方で、健康安全安心を奨励する文化の醸成を目指します。

安全衛生教育(共通) 安全衛生教育(専門)
①階層別教育 ②知識・スキル教育 ③免許・特別教育・技能講習等 ④安全衛生
専門家教育
管理職

マインド教育

  • コンサルタントによる現場視察&講話など

役職者教育

資格教育

  • 安全管理者選任時教育

能力向上教育

  • 安全管理者
  • 衛生管理者
  • 作業主任者
  • 職長

など

資格教育

  • 第1種衛生
    管理者
  • 衛生工学衛生
    管理者
  • 化学物質管理者

など


専門教育

  • ISO-45001
  • 安衛法の基礎
    知識

など

役職者

マインド教育

  • コンサルタントによる現場視察&講話など
  • メンタルヘルス

資格教育

  • 衛生管理者

職長教育

一般職

シニア向け
安全教育

  • 高齢労働者向け教育

など


マインド教育

  • 各職別階層教育
  • メンタルヘルス
  • 危険体感

など

一般教育

  • EHS一般教育
  • SDGs教育

など


【特定従事者】

  • 正しい保護具の使い方
  • 外国人向け
    安衛教育

など

EHS教育

  • 作業リスク
    アセスメント
  • 化学物質リスク
    アセスメント

など

防災教育

  • 自衛消防隊
  • 消火器取扱訓練
  • 救命講習
  • 心肺蘇生法とAEDの使い方

など

技能講習

【作業主任者】

  • プレス機械
  • 乾燥設備
  • 特定化学物質
  • 有機溶剤

など


【就業制限業務】

  • 床上操作式
    クレーン
  • フォークリフト運転
  • 玉掛け

など

免許等

  • 衛生管理者
  • ボイラー技士
  • X線作業
  • 危険物取扱者
  • 高圧ガス
  • 毒劇物取扱者

など

特別教育

  • 研削砥石
  • 動力プレス
  • 低圧電気
  • 5トン未満
    クレーン
  • 1トン未満
    玉掛
  • 酸素欠乏
  • X線/γ線照射
  • 粉塵作業
  • 産業用ロボット
  • レーザー安全
    管理者

など

  • 雇い入れ時教育
  • 配属時教育
  • 危険・有害業務従事者教育

安全衛生教育体系(イメージ図)

健康経営

健康に関するムラタの経営課題と健康経営プラン

従業員の健康づくりに真摯に取り組むために、中期の指針として「ムラタ健康経営プラン」を策定しています。2019年度に策定したプランを、2020年に半年かけて見直しました。新型コロナウイルス感染症の出現により、従業員の健康に対する意識や職場環境が大きく変わったためです。こうした変化に問題意識を強く持ったスタッフ約40名が、11事業所から集まり、産業医、保健師・看護師、健康推進機能の事務スタッフ、安全機能スタッフ、健康保険組合といった立場の違いを活かして議論をしました。最初に、社是や「CS/ES(経営の最上位の価値観)」を振り返った上で、ムラタの健康経営のありたい姿を定めました。次に、従業員の実態を定量データ(健康診断やストレスチェックの結果、労災データなど)と定性情報(面談や巡視などの健康管理業務を通じて把握した従業員の心身の実態)から分析し、課題と施策を導きました。そして、「地に足の着いた健康経営」をコンセプトに以下の4つのプランを設定し、達成にむけ取り組みを進めています。
健康経営プランは、人的資本の重要課題の1つである、「エンゲージメントの維持・向上」のための施策になっています。特に、ムラタのモノづくりを支える交替勤務者の睡眠改善と会社規模の急拡大、新しい働き方による負の影響を緩和するためのストレスマネジメントの強化にも力を入れています。これらの取り組みによって、従業員がやりがいと成長をより感じられる状態をつくっていきます。

プラン1 健康経営を進める体制づくり
全従業員の体と心の健康実態を踏まえて、様々な機能が協働し、予防に努める
プラン2 データと従業員実態に即した健康施策の実施
睡眠改善・喫煙対策・運動・食生活
プラン3 ストレスマネジメントの強化
セルフケア・ラインケアの充実、ストレスチェックの運用改善
プラン4 ヘルスリテラシーの向上

健康経営プラン内容

ムラタ健康経営戦略マップ

健康経営で解決したい経営課題を特定し、その課題解決のための方向性を示すことで、具体的な施策の遂行につながるよう、健康経営戦略マップを作成しています。

ムラタ健康経営戦略マップ

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健康経営プランに基づく健康経営の推進

健康経営プランは、本社や経営層からの一方的な指示で推進していくのではなく、各事業所が現場実態に基づいて、主体的に施策を具体化し実行しています。実効性を高めるために、「健康経営プラン対話会(年4回開催)」を設置し、PDCAサイクルを回しています。この対話会では、27事業所の産業医、保健師・看護師と健康推進機能の事務スタッフ、安全機能スタッフ、人事機能スタッフ、健康保険組合のメンバーが参加し、全社テーマの振り返りと、各事業所の取り組み事例の共有や相互相談を行います。「PLAN」として、ありたい姿や各プランの目的を確認し、向こう1年の全社重点テーマと、各事業所での取り組みを決めます。より良い「DO」を実現するために相互にヒントを得る場と、テーマを振り返って効果の「CHECK」をする場として対話会が機能しています。ここで得た知見をもとに各所で「ACTION」を検討し、改善を重ねています。さらに、全社の産業医が集う「産業医会」や、保健師・看護師が参加する「保健スタッフ会」には、定期的に担当役員が参加し、ムラタの健康経営の進め方について対話をしています。このようにして、Vision2030に掲げた「自律分散型の組織運営」を健康経営の推進においても実践しています。

Link: Vision2030(長期構想)

健康経営の図
健康経営プランに基づく健康経営の推進

健康経営がもたらす効果

健康経営で解決したい経営課題は、人的資本の重点課題の「エンゲージメントの維持・向上」です。
そこで掲げる「安全な職場で、従業員が自身の健康を実感して働いている」かを、以下の指標で把握しています。

1. アウトカム指標

(1)主観的健康観

ムラタでは、「健康」とは「病気ではない、弱っていない」ということではなく、「体」「心」「人・社会との関係」が調和した状態であると捉えています。よって、医学的な状態だけでなく、従業員自らが健康であると実感できていることが重要だと考えています。「主観的健康観」とは、健康診断などの数値結果ではなく、自身の健康状態を主観的に評価する指標です。ストレスチェックの質問項目に「疾患の有無に関わらず、あなたのことを健康だと思いますか?」を設け、数値把握をしています。

(2)プレゼンティーズム/アブセンティーズム

健康経営プランの重点取り組みのひとつとして、「ストレスマネジメントの強化」を掲げています。健康を実感している従業員がパフォーマンスを発揮することで、顧客への価値創造・提供(CS)を実現します。そのプロセスの中で、従業員自身がやりがいと成長(ES)を実感することを目指しています。ムラタでは、ここから生み出されるものが「エンゲージメント」であると捉えています。事業環境や働き方の変化など、ムラタを取り巻く環境が大きく変わる中でも、土台である従業員の健康が大きく影響を受けることなく、パフォーマンスを発揮し続けられるよう支援しています。この取り組みの指標として、プレゼンティーズムとアブセンティーズムを設定しています。

①プレゼンティーズム
従業員のパフォーマンス度合いを把握するために、プレゼンティーズムによるモニタリングを開始しました。まずは現状把握を行い、経年で数値を把握し、ムラタとしての適正レベルを検討します。

②アブセンティーズム(1か月以上の休業者率)
「休職者をゼロにする」のではなく、パフォーマンスが大きく低下している従業員が心身の不調を相談しやすい環境を整えることを重視しています。不調を早期に発見、対処(場合によっては早期に休職させる)することで、早期に復帰できるよう支援しています。不調を長期化させないことで、アブセンティーズムが大きく変動しないようモニタリングしています。

2. 意識変容・行動変容に関する指標

睡眠改善の指標(睡眠で休養が取れているか(ストレスチェック))
「体」「心」の調子に大きな影響を与える睡眠の改善に力を入れています。
取り組みの成果指標として、ストレスチェックの質問項目「よく眠れない」の回答のうち、否定回答をもとに推移を可視化しています。

アウトカム指標 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
主観的健康観の指標:「自分は健康である(ストレスチェック)」の回答率 ≪連結(国内)≫ 78% 78% 77% 77%
プレゼンティーズム:「病気やけがが無い時に発揮できる仕事の出来を10として、過去4週間の自身の仕事を0から10までで評価してください。」の平均回答 ≪連結(国内)≫ 7.1点 7.1点 7.1点 7.1点
アブセンティーズム:連続1か月以上の休業者率 ≪連結(国内)≫ 0.7% 0.8% 0.9% 1.0%
意識変容・行動変容に関する指標 睡眠改善の指標:「よく眠れない(ストレスチェック)」の回答のうち否定回答率 ≪連結(国内)≫ 80% 79% 79% 78%
  • ※ 2022年度データ更新に合わせて、データ抽出条件を見直ししています。これに伴い、過去データも再集計しています。

人的資本の重要課題「エンゲージメントの維持・向上」の実現を支える健康経営の取り組み

ムラタで実施している具体的な取り組みを紹介します。従業員一人ひとりが自身のことを健康だと実感しながら働ける環境を整えるために、今後も継続して取り組みを進めていきます。

感染症対策

ムラタは、従業員の体と心の健康を守りながら、お客様の期待に応え、社会のインフラを支える部品メーカーとしての社会的責任を果たすために、日常の健康管理として、感染症対策を徹底しています。
新型コロナウイルス感染症対応として、アルコール消毒液設置などの衛生管理、在宅勤務やフレックス制度・時差出勤の推奨、体調不良者の出社制限(法定以上の休業補償)、学校などの休校に対する特別有給休暇の人事制度面での支援、本社をはじめとする7拠点で、従業員および協力会社従業員に対してワクチンの職域接種を実施しました。
感染対策だけではなく、心身の不安を抱える方への産業保健職による面談対応、また、産業医による新型コロナウイルス感染症に関するオンライン説明会を実施し、従業員および協力会社従業員とその家族の健康と安全を守るために、資料を共有するようにしました。なお、インフルエンザに関しては、毎年、流行情報の提供や予防接種の呼びかけを実施しています。

ストレスマネジメントの強化支援の取り組み

健康経営プランのひとつ、「ストレスマネジメントの強化」は、テレワークの拡大による働き方の大きな変化を、従業員がいかに乗り越えられるかという観点から取り組みをしています。これを実現するためには、個人が「信頼・連携し合い、調和する」ことが重要と考えますが、最もそれが困難なのは、組織に新しく入ってきた従業員たちです。そもそも新しい環境に慣れ、人間関係を構築することにはストレスが生じます。そこで、「新入社員」「経験者採用社員」「国際出向者(海外拠点から日本に出向中の従業員)、海外出向者(日本から海外拠点への出向者)」に重点をおいた対応をすることを決めました。彼らが力を発揮し、多くの人と連携ができるようになるための、ストレスマネジメントを実施しています。

1. 新入社員・経験者採用社員向けへの支援

テレワークの浸透により、働き方や、コミュニケーションのあり方が大きく変わりました。オンラインツールの活用により、業務の効率化や多様な働き方が実現できました。一方で、オンラインでは、職場での人間関係の構築に時間がかかることや、把握できる従業員の様子が限定的で、不調に気づきにくいなどの課題も浮き彫りになりました。そのような事態を防ぐために、特に、この影響を受けやすい新入社員や経験者採用社員をターゲットにして、ストレスマネジメント強化の取り組みを行っています。
具体的な取り組みとして、新入社員向けにストレス対処法や一人で不安を抱え込まず相談することの大切さを体得することを目的とした研修を実施しています。そこでは、セルフケアの方法などを、グループワークを通じて学ぶ機会を設けています。研修アンケートやその後のフォロー面談で効果が確認できたことから、同様の環境にいる経験者採用社員に対してもストレスマネジメント研修を実施しています。

経験者採用社員に対するストレスマネジメント研修の資料より

2. 国際出向者(海外拠点から日本に出向中の従業員)・海外出向者(日本から海外拠点への出向者)への支援

グローバルにビジネスを展開するムラタでは、多くの経験、多様な考えを持った従業員同士が、グローバルで一体感を持ち、連携し合いながら、それぞれの能力を発揮できることを目指しています。ムラタでは、国際出向者や海外出向者が多くいます。しかし、テレワークの本格導入など、働き方の大きな変化により、赴任先での人的ネットワークの構築に時間がかかることが、大きなストレスとして彼らにかかっていました。そこで、国際出向者を対象に産業医によるセルフケア研修を実施しました。英語編と日本語編の両方を用意し、自身が使いやすい言語の回に参加してもらいました。(2023年度では、新規国際出向者130名中78名が参加しました。)この研修が、受講生同士がつながり、互いに共感し合う機会になりました。また、ストレスの対処法を学ぶことで、モチベーションの向上につなげることができました。
海外出向者には、安全・安心・健康に生活が送れるように、2020年度から健康面でのフォロー体制を強化しています。渡航前に、産業医による健康状態の確認や、必要な人への面談を実施しています。社内イントラネットには海外出張での注意事項をまとめた「海外出張はじめてガイド」を掲載し、情報を提供しています。グローバル人事部と健康管理室が協働し、出向者とその家族を対象に、危機管理・健康管理・メンタルヘルスについてのセミナーを実施しています。参加者からは、「今後の海外生活への理解も深まり、不安解消につながる」という感想が出されています。渡航後は、年1回の定期健診を実施し、結果に対するフォローを行っています。これらの取り組みは、人的資本の重要課題である「多様な人材の活躍」を健康面から支えるものです。

国際出向者に対するストレスマネジメント研修の資料より
国際出向者に対するストレスマネジメント研修
睡眠改善 : 交替勤務者のES向上にむけた取り組み

ムラタの製造現場を支える交替勤務者のES向上のため、睡眠改善に注力しています。健康管理室には、交替勤務者からの睡眠相談が寄せられます。これまでも産業保健職による睡眠教育研修や相談対応を行っていたものの、内容が一般的な睡眠のアドバイスに留まり、有効な対策を打てていないことが課題でした。こうした現場の実態にフィットする取り組みを行うことを決めました。2021年9月から概日リズム・体内時計の専門家である京都府立医科大学の八木田和弘教授を睡眠改善施策アドバイザーに迎え、以下の様々な施策に取り組んでいます。なお、施策の導入にあたっては、従業員代表である労働組合とも情報共有・協議した上で進めています。

Link: 体内時計の権威である京都府立医大の八木田教授を「睡眠改善施策アドバイザー」に任命 生産現場の交替勤務者の睡眠の質を改善し、健康をサポート

1. 従業員の睡眠相談に「睡眠質問票」と「睡眠日誌」を導入

従業員からの睡眠相談を受けた時の産業保健職の対応力向上を目的とし、睡眠の質を見える化する「睡眠質問票」、睡眠不足の原因解明につながる「睡眠日誌」を導入しました。これらのツールは、従業員の睡眠の質や生活リズムを可視化し、睡眠不調の実態や原因を把握するのに役立ちます。ツールから得られた情報と概日リズム・体内時計の知見を活用することで、従業員に有効な睡眠相談を行っています。

2. 概日リズム・体内時計の観点を取り入れた睡眠教育コンテンツを作成

従業員や協力会社従業員にむけて、概日リズム・体内時計の観点を取り入れた睡眠教育コンテンツを作成し、展開しています。体内時計と生活リズムのズレを縮めるために、シフトパターン毎に、光を浴びるタイミングとその明るさ、食事をとるタイミングや食事内容、休日の過ごし方などのアドバイスをまとめています。今後は、睡眠教育コンテンツを社内に浸透させることで、従業員や協力会社従業員自らが、交替勤務を健やかに過ごす行動を選択できる状態を目指します。

睡眠教育コンテンツの資料より

3. より質の良い睡眠をサポートするために、光環境の整備に着手

岡山村田製作所では、交替勤務者がより質の良い睡眠をとれるように、光環境の整備に着手しました。光による影響をうけやすいという体内時計の性質をもとに、製造現場に高照度光療法器具を設置しました。約2か月のトライアル期間を経て、効果検証を行ったところ、一定の効果を確認することができました。現場作業者の意向を踏まえ、次なるステップとして、全体照明の工事に着手しました。今後も効果検証を行い、モデル工程以外の導入を検討します。

高照度光療法器具 : ブライトライト

全体照明変更後の製造現場の様子

このような睡眠改善の取り組みを通じて、ES(従業員のやりがいと成長)の礎となる「従業員の健康」を支え、従業員が自身の健康を実感しながら、いきいきと働ける状態の実現を目指します。また、良質な睡眠を実現することで、生活習慣病の予防にもつなげていきます。

  • ※ 効果検証には、村田製作所の「疲労ストレス計 MF100」を使用しています。当製品は、客観的な評価が難しかった「疲労・ストレス度」を可視化します。心拍・脈拍といったバイタルデータから心拍変動を高精度に測定し、自律神経のバランスなどを示します。睡眠改善の取り組みでは、取り組みを始める前と後のデータを取得し、従業員の心身状態の改善が分かるようにします。また、客観的なデータを示すことで、従業員の健康意識の向上を図ります。

疲労ストレス計 MF100
喫煙対策の取り組み

2018年から、健康経営の取り組みのひとつとして、喫煙対策を推進しています。健康保険組合と連携し、禁煙プログラムの展開と、受動喫煙防止のための環境づくりの両輪で進めています。この数年で、社内売店・自動販売機でのたばこの販売禁止、健康イベントの開催、喫煙者全員面談の実施、禁煙ポスターの掲示、屋内喫煙所の廃止などの対策を進め、「会社内で喫煙をしない環境づくり」をメインに取り組みを行ってきました。一方で、「そもそも喫煙しない人を増やす」ことがこのテーマの本質であると捉え直し、2021年度からは喫煙対策のアプローチを変えています。「禁煙したいと思う人の禁煙達成を支援する」というスタンスで、ナッジ理論を活用した周知や、健康保険組合と協働したICTを使った喫煙プログラムの導入を行っています。

ナッジ理論を活用した周知ポスター
がん治療と仕事の両立支援制度

がんは今日では通院治療を受けながら働くことが可能な病気となってきています。しかし、抗がん剤投与などを受ける場合には定期的に受診する時間を確保する必要があるなど、今までと同じように就業しながら治療を継続するには障壁があるのが実情です。こういった時間的制約に対する配慮として、がん治療にともない、通院しながら勤務する従業員を対象に、治療と仕事の両立を図るための支援制度を導入しています。この取り組みによって、健康管理室への事前(休職前)相談・問い合わせが増え、これからも従業員に寄り添ったサポートに力を入れていきます。
厚生労働省のHPにムラタの取り組み事例の詳細が掲載されています。

参考

Link: ムラタの事例集別ウィンドウで開く

ムラタの事例のイメージ画像
女性の活躍推進

ムラタの女性活躍推進では「性別に関わらず誰もが経験を通じて能力を高められ、対話し切磋琢磨できる職場」の実現を目指す姿に掲げています。女性だけではなく、男性や管理職などすべての従業員を対象に、女性の活躍推進のありたい姿の実現を考える機会として、産業医によるセミナー「Women's health @ムラタ」を2日程開催しました。そこでは、「女性ホルモンとライフキャリア」の関係性を取り上げ、実際に多い不調や病気を紹介しました。498名が参加し、受講後アンケートでは90%以上の方が「満足」と回答しました。また、参加者からのコメントでは、女性からは「女性に寄り添うような声掛けに救われた」「任意の参加ではもったいないくらい良いセミナーだった」、女性以外からは「女性の健康について理解が深まった」「今更聞けないことが聞けた」など好評の声を多数いただきました。なお、セミナー内容は従業員および協力会社従業員の家族にも、当日の録画資料や配布資料を共有できるようにしています。
他にも女性活躍推進・健康支援の観点から、婦人科がんの早期発見、早期対応を目的として、健康保険組合から検診費用の補助を行い、婦人科検診の受診支援を実施しています。社内での婦人科検診では定期健康診断と同じ期間に実施し、受診率の向上に力を入れています。
今後もこのような取り組みを継続し、女性の活躍推進に支援していきます。

法令に基づく取り組み

ムラタでは定期健康診断の実施およびストレスチェックに基づいた組織診断や職場フィードバックなど、従業員および協力会社従業員の心身ともに健康な職場づくりに取り組んでいます。定期健診受診率は100%を維持できるよう取り組んでいます。ストレスチェックは、2022年度の受検率は単体で98%(対象者:10,559人、受検済:10,349人)でした。

健康経営の取り組みに関する指標 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
定期健診受診率 ≪単体≫ 100% 100% 100% 100%
ストレスチェック受検率 ≪単体≫ 98% 98% 99% 98%
ストレスチェックにおける高ストレス者率 ≪単体≫ 7.3% 7.2% 7.6% 7.7%
「健康経営優良法人 大規模法人部門(ホワイト500)」の取得

ムラタの“健康経営”にむけた理念や体制、取り組みが評価され、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人 大規模法人部門(ホワイト500)」を2017年から2023年まで連続7回取得しています。

健康経営優良法人ホワイト500のロゴ

村田製作所グループ EHS防災方針

村田製作所グループは、会社の経営理念である社是の実践行動の一つとして、環境負荷の低減(E)、健康・安全の確保(H・S)、防災活動の推進に全組織をあげて取り組みます。

  • 1.

    法規制並びに関連する団体等と同意した事項を順守します。

  • 2.

    村田製作所グループの企業活動を通じて次に掲げることに取り組みます。

    • 1.

      環境負荷の低減

      • 事業にかかわる環境負荷の低減
      • 環境汚染の防止
    • 2.

      健康・安全の確保

      • 労働災害の撲滅
      • 健康で安全な職場づくり
    • 3.

      防災活動の推進

      • 火災の撲滅
      • 自然災害による被害の最小化
  • 3.

    EHS防災マネジメントシステムを構築し、継続的改善に努めます。

  • 4.

    この方針は、社内外に公表します。

代表取締役社長中島 規巨

  • ※ この方針は取締役会で定期的に監督を受けています。

ムラタ健康宣言

ムラタの経営理念と健康の関係を表した「ムラタ健康宣言」を2019年4月に発表しました。
ムラタにおいて、健康は「安全・安心」を包含したものと捉えています。この宣言をベースにEHSのありたい姿や目標設定をし、EHS中期計画および健康経営プランに基づく取り組みを推進しています。

ムラタ健康宣言

ムラタは、変化する事業環境の中にあっても、
経営理念である「社是」を大切にし、ムラタらしさを追求します。
社是を共有する世界中の従業員は、イノベーションを起こし、新たな価値を創造していくために、
わたしたちは、健全な成長の礎である従業員とその家族の心身の健康づくりに取り組んで参ります。
そして、ムラタで働く一人ひとりが活躍し、やりがいを感じながら成長しつつ、心身ともに健康でいきいきと働くことで「Innovator in Electlonics」として、未来の発展に貢献いたします。

代表取締役社長中島 規巨