自動車の電装化にICは不可欠ですが、その動作をつかさどるクロック源としてタイミングデバイスが必要です。近年、車載ECUはCANやFlexRayなどの車内LANにつながり、大量のデータを瞬時に処理するため高精度で高品質なクロックが求められます。この要求に対応したのが新商品である車載用HCRです。
ムラタは1995年に車載用チップセラロック®CSTCCシリーズを、2000年には小型でCAN通信が要求する狭公差にも対応したCSTCR、CSTCEシリーズをリリース。これらは全世界の車載電子機器に搭載されています。セラミック発振子は使い勝手、経済性の高さが特徴であり、セラロック®は車載セラミック発振子市場で95%以上のシェアを確保しています。HCRはセラロック®のパッケージ基本構造を踏襲して内部に水晶素子を搭載した新商品で、セラロック®では対応できない高い周波数精度要求を満たすものです。
HCRはHDDやUSB、NFC等の民生、通信用途ですでに使用され3年以上の市場実績を持つタイミングデバイスです。車載用途に展開するにあたり、PowerTrain系の主要クロックである12MHzから24MHzの周波数範囲を、2.5×2.0mmの小型サイズで商品化しました。
PowerTrain系を制御するECUでは、特に高温動作、耐久性、高品質 (ゼロディフェクト) が求められます。従来の水晶発振子はガラス封止や溶 接などの気密パッケージ構造が採られていますが、HCRはセラロック®で実績のある独自の非気密パッケージ"CapChip"構造を採用しています。この構造はセラミック平板に金属キャップを樹脂で接着したシンプルな構造ですが、他のパッケージより製品サイズ比でより大型の水晶素子搭載を可能とし、低ESRを実現するとともに、セラロック®で蓄積してきた生産技術力、品質管理力を結集して、経済的でかつ高品質な水晶発振子を実現しました。車載用HCRはタイミングデバイスハウスを目指すムラタの新たな一歩となる商品です。これに満足することなく、今後もさまざまなクロックニーズに対応するよう商品開発を進めてまいります。
自動車用水晶発振子"HCR"2.5×2.0mmサイズ
"Cap Chip"構造