もはや3工法だけでは不十分、現状に満足せず新たな工法を探る
EMIの技術的背景として、三つの製造方法 (工法)がある。「巻線」「薄膜 (フィルム) 」「積層」である。この3工法を自社内に保有していることは、ムラタの大きな優位性である。しかし、もはや、これらだけでは足りないと思っている。三つの工法は、「マーケティング」と「材料技術」の兼ね合いによって、どれを採用するのかが決まってくるので、我々としては、これらを組み合わせて、お客様の要求を満たしていく。できる限り多くの工法・技術を持ち、それぞれを組み合わせることで、要求を満たすためのベースを作りたい。
EMIの場合、お客様が組まれた回路にあわせて対策を考える。どんな回路が組まれるかはわからない、回路もICの構造もお客様によって違う。ムラタには、ESI (Early Stage Involvement) と呼ばれる活動がある。製品開発の段階からお客様に密着し、的確な提案を継続して行うものだ。開発動向に関する情報をどれだけ的確に把握しているかで勝敗が分かれるEMIにおいては、技術マーケティングが欠かせない。
材料技術の面では、東光 (株) との提携が大きい。同社には、他社に先駆けて開発した金属系磁性材料、および加工技術のノウハウがある。今後、関係が深まっていけば、特にパワーインダクタの分野では大きな成果があがると思う。
EMI三つの工法
- 巻線: 電線を巻いて作る工法。0.8mmの長さのコアに、細い銅線を巻きつけられるところまできている。パワーインダクタ・チョークコイル・高周波コイル (LQH、LQWシリーズ) 、コモンモードチョークコイル (DLWシリーズ) など。
- 薄膜 (フィルム) : エッチング技術を利用してパターンを露光して、薄膜でコイルを作り出すもの。10µm幅での形成が可能。高周波コイル (LQPシリーズ) 、コモンモードチョークコイル (DLPシリーズ) など。
- 積層: セラミックコンデンサにも使われている技術。厚さ数十µmのフェライトシートを成型し、何層にも重ねあわせる。パワーインダクタ・チョークコイル・高周波コイル (LQG、LQMシリーズ) 、コモンモードチョークコイル (DLMシリーズ) 、フェライトビーズ (BLMシリーズ) など。
ムラタでは、より高性能で、より使いやすく、より安価なノイズ対策部品、インダクタ部品を提供できるよう、三つの工法を駆使して革新を続けている。