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自社の事業活動にともなう温室効果ガス(Scope 1)の削減は、製造業にとって重要かつ喫緊の課題です。カーボンニュートラルを目指すムラタでは、電子部品の開発技術を応用した世界初の技術「耐熱セラミック触媒」によって、これまで削減が困難だった工場の排ガス処理にかかる大幅な燃料削減を実現しました。
今回、最大で燃料削減率60%以上という経済的メリットも実現したこの挑戦について、セラミックコンデンサ事業本部所属の安田氏と、技術・事業開発本部所属の佐藤氏にお話を伺いました。
耐熱セラミック触媒の開発における課題や取り組みの背景について、技術・事業開発本部の佐藤氏は次のように説明します。
佐藤:「製造業では工場の排ガスにVOC(揮発性有機化合物)という有害物質が含まれることがあります。このVOCは大気汚染や健康被害が懸念されることから、世界的に規制が強化されています。 そこで、VOCを無害化するために、RTO(蓄熱式排ガス処理装置)※1という高温処理装置が用いられます。しかし、この処理には850℃ほどの高温を保つ必要があるため、膨大な燃料が消費されています。つまり、高温処理によってVOCが除去できる一方で、GHG排出量の増加と燃料コストという課題がともなってしまいます。耐熱セラミック触媒の商品化は、こうしたVOC規制への対応とGHG削減という、双方の課題に向き合ったことがポイントだったと思います。 また、商品化の背景には、電子部品応用の分野で使用されている材料の一部が、触媒応用の分野でも研究されていたことにあります。社内で継承されてきた材料技術を用いながら、ムラタにとっては新しい『触媒』という分野へ挑戦することができました。」
RTO(蓄熱式排ガス処理装置):VOCなど、排ガス中の有害物質を高温で燃焼し、無害化する処理装置のこと。
安田:「ムラタではこれまでも、環境やエネルギーの領域に注力し、GHG排出の削減にむけたさまざまな取り組みをしてきました。私自身も本領域において、10年ほど前から触媒事業のリーダーとして事業開発を担当しています。当初は3名ほどのチームでしたが、2021年に自社工場で耐熱セラミック触媒を使用したところ、想定を大きく上回る削減効果を発揮できたため、今ではメンバーも30名ほどに増え、スピード感を持って商品化に取り組んできました。」
耐熱セラミック触媒は、従来の触媒とは異なる構造と材料設計によって、高温環境下でも性能を維持することを目指した技術です。その実現には開発上の難しさや工夫があります。
佐藤:「既存の触媒では、ベース材料の表面に白金など貴金属のナノ粒子を乗せる構造が一般的です。しかし熱が加わると、ナノ粒子は熱によって移動し、凝集により表面積が低下して反応性が落ちるという課題がありました。ムラタの触媒では、ベース材に乗せるというよりも、ベース材と原子レベルで混ざった複合材料として触媒を設計しています。 もともとムラタの電子部品における材料設計では、結晶構造中の元素を置き換えることで電気特性を制御してきました。その技術を応用し、ベース材料の結晶構造の中に活性元素を置換することで、高熱を加えても触媒としての特性を維持することが実現できました。貴金属を使わない貴金属レス設計は価格変動のリスクもなく、調達コストが安定することもメリットだと考えています。 これまでの開発の中で難しかった点としては、技術と用途とのマッチングです。今回は、RTOのように高温で運転する排ガス処理システムだからこそ我々の技術をうまく活用できましたが、この技術はすべての触媒反応に応用できるわけではありません。GHG削減という目的を掲げ、お客様や大学の先生をはじめ様々な関係者の協力を得ながら、材料開発と用途探索とを繰り返してきたからこそ辿り着いた結果だと考えています。」
安田:「実は、開発当初は小型の処理装置でテストをしていました。1台に1、2個のハニカム状の触媒が収まるくらいのサイズの、小規模な社内トライアルです。しかし、せっかくならもっと大きい処理装置の方がよいと思い、行き着いたのが1台数百から2,000個ほどのハニカムを使うRTOです。 RTO自体は、比較的、省エネな装置として多くの工場で採用されています。しかしそれでも、年間の燃料費は数百万〜数千万円、温室効果ガスの自社排出においては年間数百トンになっている工場も少なくありません。 そのため、耐熱セラミック触媒を活用することで燃料やGHGを削減できるならぜひやってみたい、というお客様の声は多く寄せられています。特に、高温で活用できることへの関心や、国内だけでなく海外の工場で活用したいといったお問い合わせをいただいています。」
後編では、日本と中国における実証データと、今後にむけた想いをお聞きします。
続けて読む: 村田製作所の耐熱セラミック触媒が燃料を大幅削減。Scope 1への挑戦(後編)
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