水素社会を見据えた挑戦―村田製作所、野洲事業所で水素実証実験を開始

村田製作所(以降、「ムラタ」)ではグループ最大の研究開発(R&D)拠点である野洲事業所(滋賀県)の敷地内で水素を生成し、事業所の空調に利用するという環境負荷に考慮したエネルギー循環にむけた取り組みを始めました。水素を生み出す水電解装置は太陽光発電で動かし、システム全体の制御には自社の統合型再エネ制御ソリューション「efinnos(エフィノス)」を活用します。未来を見据えた取り組みについて、担当者に狙いや想いなどを聞きました。

なお、本件のプレスリリースについては「野洲事業所で水素活用の実証を開始~独自の再エネ制御ソリューション「efinnos」を組み合わせた、最適な運用を検証~」をご覧ください。

1. 水素を自社で生成、一貫してサステナビリティ追求

「今後本格的に水素を活用する時代に備えて、自らの拠点で水素を生成し、その制御を通じてコストやメンテナンスのノウハウを蓄積しておくのは非常に重要だ」。今回の取り組みを進める狙いのひとつについて、技術・事業開発本部の向井氏はこう話します。
ムラタでは、このたびムラタ最大の研究開発拠点である野洲事業所で、水素を生成し、その水素でボイラーを動かし、事業所内の建屋の空調などに利用する実証実験を開始しました。

注目ポイントのひとつは、水素生成のための水電解装置を自社内に設置、その水電解装置を動かすための電力を太陽光発電で調達する点です。再生可能エネルギーを用いることで、生成過程でも温室効果ガス(GHG)を排出しない「グリーン水素」を生み出します。

太陽光発電により生成過程でもGHGを排出しない「グリーン水素」を生み出し、活用する

この「グリーン水素」を水素タンクにため、水素ボイラーを動かし、建屋の空調に使います。余剰分については研究・開発の施設で使うことも想定しています。このような体制を取ることで、水素の生成から消費にいたるまで一貫してGHGを排出しない仕組みを作ることができました。

野洲事業所に設置した水電解装置

2. 野洲事業所が水素活用に取り組む理由 攻めるファシリティとして

「事業所のインフラなどを手掛けるファシリティ部門というのは、石橋を叩いて渡るのが一般的。ただ、野洲事業所は『攻めるファシリティ』として、いろいろな技術に取り組んで、その成果をムラタ全体に広げていくような役割を担う存在でありたい」。野洲事業所管理部の神野氏は、野洲事業所で今回の取り組みを進めた理由をこう話します。

これまでもムラタでは太陽光発電といった方法で、事業所内発電におけるGHGの削減を進めてきました。しかし、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的なイニシアティブ「RE100」の達成を目指す中で、これら既存技術だけではなく、新たな技術への挑戦が必要となっていました。この状況下における野洲事業所の熱意が、今回の取り組みを進める原動力となりました。

3. 統合型再エネ制御ソリューションefinnosを活用 自社をショーケースに社会実装へ

こうした水素活用の取り組みを効果的に進めるにあたって、欠かせない存在がムラタ自社の統合型再エネ制御ソリューション「efinnos」の組込みです。太陽光発電と蓄電池の最適制御を実現するエネルギーマネジメントシステムとして、提供されています。

今回の野洲事業所の水素活用の実証実験においては、水素タンクの貯蔵量に応じて水素の生成量を制御するなどの用途で採用されています。神野氏は「水素を作り出す水電解装置は他社から購入したものだが、これを自社のシステムに組込んで最適制御しようというのはムラタならでは」と話します。

野洲事業所での実証実験のイメージ(※この動画に音声は含まれていません)

今後は、efinnosで太陽光発電の発電状況や系統電力の電気料金、事業所での水素需要も考慮に入れた分析をし、より最適な水素マネジメントにつなげる機能も実装していきたい考えです。

ムラタでは、自社工場の「ショーケース化」の取り組みを進めており、ムラタの自社商材をムラタ工場に導入し、お客様に見て・触れて・体験していただくことでビジネス機会の創出を狙っています。これまでefinnosはすでに金津村田製作所(福井県)やハクイ村田製作所(石川県)など、ムラタの5工場に導入され、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた再生可能エネルギーの導入を支えてきました。
向井氏は「efinnosは各地の自然環境や事業所の状況に合わせた最適な電力制御を実現してきた。今後は、水素においてもefinnosを活用し、Scope1の削減や水素社会の到来に備えた知見を蓄積し、水素社会の実現に共感いただける協業先とともに社会実装を加速したい」と力を込めました。

ハクイ村田製作所など多くのムラタ拠点でefinnosは導入されている
太陽光発電の様子などが一目で分かる

4. RE100達成時期を前倒し 目標へむけて挑戦し続ける

ムラタは2024年に前述のRE100について、事業活動における使用電力の100%再エネ化の目標を加盟当初の2050年度から15年前倒しし、2035年度とすることを発表しました。

再エネ導入比率100%の目標時期を前倒しした

あわせて2040年度に自社によるGHG排出量を実質ゼロに、2050年度にはサプライチェーンを含めたGHG排出量実質ゼロを目指す新たなカーボンニュートラル目標を設定し、気候変動対策の強化を掲げています。

今回の野洲事業所での水素実証実験の取り組みもこうした持続可能な社会の実現を目指すものです。水素活用の取り組みは始まったばかりですが、向井氏は「水素の活用が本格的に普及してきた際に、『ムラタの技術は水素分野でも有効である』と示せるように、先行して実証実験に取り組む。脱炭素社会の実現にむけた挑戦をし続けたい」と話します。

ムラタグループはグローバルの社会課題解決に貢献するために、「脱炭素社会の実現」を重要課題として設定しています。環境負荷の低減を通じた社会価値と経済価値の好循環を目指す中で、今後の環境取り組みの進展にご期待ください。

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