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笈田 敏文/Toshifumi Oida 通信事業本部 コネクティビティ商品事業部 コネクティビティモジュール商品部 部長
1988年入社。積層コンデンサ計測技法開発を担当。 1992~1998年、セラミック多層基板、高周波デバイスの開発を担当、1998年より近距離無線商品に携わり、商品開発、セールスエンジニア、製造技術、品質管理業務に従事。2011年より現職。 趣味は音楽鑑賞、楽器演奏とドライブ。
コネクティビティモジュールはスマートフォンやタブレット市場の伸長も追い風に、高機能化、超小型化を実現しシェアを伸ばしている。もともと強かったセラミックスや高周波回路設計などのハード技術に加え、ソフトの技術も、社内外の英知を集めて果敢に取り込んできた。 そして、今では顧客製品のサポートとして、電波法やWi-Fi®認証サポートまでも行う。 ハード、ソフトの対応力に加え、サポート体制の充実が車載市場でも評価されている。 進化する自動車産業において、ますます通信が重要な役割を担う。
「コネクティビティ (相互接続) 」という耳慣れない言葉だが、世の中のあらゆるものをつなぐモジュールを開発している。Bluetooth®、Wi-Fi®などの近距離無線、GPSなども含めた、携帯電話回線ではない無線を使って、機器間の接続を行う。車載用では、カーナビゲーションやカーオーディオといった車載機器の中に組み込まれたBluetooth®で、電話の際のハンズフリーを可能にしたり、スマートフォンやメディアプレーヤーの中にある音楽データを、無線で車載機器に送り、車内で楽しんだりできるようにする。スマートフォン用には、小型で軽量、消費電力を抑えた製品を供給しているが、車載用は高信頼性が重要だ。性能面での信頼性を高め、自動車のライフサイクルに合わせた製品寿命設計を行っている。車載市場ならではの要求品質を実現し続けてきた結果、車載用コネクティビティモジュールを供給し始めてから約8年、累積で1,500万個以上の出荷実績につながっている。
もともとハードに強いメーカーであったが、車載市場へ参入するにあたり、クルマが走れる間は使えるモジュールを提供できるようさらに磨きをかけてきた。モジュール設計段階では、長期使用を意識した部品選定を行い、民生機器用途とは異なる車載向けの設計ルールを適用している。工程設計も一工夫凝らしている。車載用モジュール専用生産ラインを設け、専任の作業者、検査方法、トレーサビリティの仕組みなど、ゼロディフェクトの思想を追求する生産現場を構築した。現場をご覧になった顧客からは、多くの高い評価をいただいている。設計技術とモノづくり技術の融合で長期製品寿命が実現できる。確実にこなせる部品メーカーは意外と数少ない。高信頼性だけを追求しているのではない。私のチームではコネクティビティモジュールを扱うが、ムラタグループの中には、各種無線用デバイス、セラミックコンデンサ、EMIフィルタ、センサなどのチームがある。こういったチームとは車載用モジュールに適した部品の使いこなしなど密に連携する。そうすることで、より安定した無線性能を発揮するモジュールをリーズナブルに顧客へ提供できる。セクション内部と外部のコーディネート、つまりムラタ全体で最適なQCDSを実現している。
目指すのは、ムラタのモジュールを使うことで、全体のリソースがエコになる顧客価値を提供すること。これは車載市場に向けても同じだ。価値を高めていくために、ハードに加え、ここ数年はソフトにも力を入れてきた。ソフトはM&Aや業務提携した会社の技術を取り入れながら、市場で揉まれてきた経験も生かし、車載市場で求められる高信頼性を実現する。車載機器がつながる相手は多彩だ。例えばスマートフォンひとつとっても、毎年多くの機種が世界中でリリースされる。それらときちんとつながるためには、自動車環境での使われ方を想定したソフト設計、繰り返し評価・改善を行うことによる接続信頼性の向上が欠かせない。ムラタは車載以外にも多くの機器向けに顧客サポートしてきた実績とノウハウがあり、評価の勘所を押さえているのは強みだ。モジュールだけではなく、エンドユーザーの使用時と同様の環境での試験も行う。そうすると、顧客製品全体の不具合などもみえてくる。きちんとつながるソフト、顧客目線でのサポートやアドバイスは、顧客の開発現場のリソースを低減させ、顧客製品の完成度を高めることに貢献できる。ハードやソフトの提供に加え、顧客の製品の各種認証サポートにも力を入れる。例えば、Wi-Fi®のロゴを装置に付けるには、認証試験を行わねばならないが、その試験もムラタがサポートする。Wi-Fi®認証と同じ試験ができるような装置や技術を社内に準備している。この試験環境を使い顧客製品の性能を確認し、適切なテスト内容の設定、プリテストを行い、スムーズに本試験に合格できる完成度を実現する。こうしたサポート体制を敷くには、ある程度の年月がかかったが、顧客にはとても頼りになると喜んでいただける。ここまでやっている部品メーカーは他にはないと自負している。より顧客が導入しやすく、使い勝手のよい高信頼性モジュールを提供する上で、こうした総合力がひとつのソリューションだ。トータルで考えてムラタの存在価値が高まるよう、顧客へのメリット提供を追求する。
これからのクルマは、「つながる化」していくといわれている。今はまだ、車内でスマートフォンやメディアプレーヤーとつながるInfotainment (情報と娯楽) 用途がメインだが、コネクティビティ技術が使われる場面は広がりつつある。盗難されたクルマの追跡や、事故の際の緊急自動連絡などに使われ始めている。いずれはクルマ同士の車車間通信や路上機器とクルマの路車間通信が本格化するだろう。これらは、渋滞情報を得ると自動で減速する、曲がり角では車車間で情報のやり取りをして衝突事故を防止する、というように事故を減らしクルマの安全性を向上させる技術だ。やがて、クルマと家、クルマと人もつながっていくだろう。車内から車外へ。クルマが社会とつながっていく。コネクティビティ技術は日々革新が進む。2013年には、車載用Bluetooth®/Wi-Fi®のコンボモジュールを量産化した。これは通過点に過ぎない。車載への応用が検討されている通信技術はたくさんある。ムラタはBluetooth®、Wi-Fi®の他、低消費電力のBluetooth®LowEnergy、Zigbee®とセンサーノードの組み合わせで実現するセンサーネットワーク、ネットワークの出入り口を担うGatewayなど、さまざまな通信方式やシステムに対応し、ワールドワイドでイニシアティブを取ってきた。業界随一の対応力を生かし、クルマと社会がつながるための提案を続けていく。ビジネスチャンスは、まだまだ広がっていくと確信している。
米国に本拠を置く業界団体Wi-Fi Alliance®によって定められた無線LAN関連規格のIEEE 802.11を使用した、機器間の相互接続を行うための方式。無線LANとWi-Fi®の違いは、Wi-Fi®のロゴを使えるかどうか。製品に表示するには、認証を受ける必要があり、認証されていないものは機能が同じでもWi-Fi®とは名乗っていない。ムラタはハード・ソフトのサポートに加え、電波法やWi-Fi®ロゴ認証までを含めたトータルサポートを提供。付加価値の高いソリューションを実現している。
Wi-Fi Alliance® によるWi-Fi®認証のロゴ