Leader Talk

MEMS技術の世界的な企業が参画、新たな技術と従来の技術の融合で新市場を切り開く

A new company having various technologies for improving automotive safety has joined Murata as the Group strengthens its commitment toward developing the market for in-vehicle equipment. As a supplier of various sensors with a focus on MEMS technology, Murata Electronics Oy, enjoys a high share of the world market. Murata Electronics Oy has become much needed reinforcement to the Murata Group at an optimal timing.

トミー ルンネ/Tomy RUNNE
General Manager MEMS Sensors Product Engineering Department Murata (China) Investment Co., Ltd.

1998年旧VTI Technologies Oy社に入社、カスタマーサービスを担当する。
2000~2004年アジアパシフィックエリアセールス担当、2004~2012年日本に駐在し、韓国と日本のセールスを担当。
2013年よりアジア地域ビジネスデベロップメント担当として中国に駐在。
趣味は、水泳とランニング。

前身のVTI Technologies Oyで、日本と韓国の自動車メーカーとティア1を担当してきた。
そして、これからは上海で中国を中心にした市場開拓の最前線に立つ。
世界から注目されている自動車産業において、製品供給を通じて安全を担ってきた実績がある。
ニーズの拡大する新興国市場において、いかに優位性をアピールしていくか。
太く、短いバリューチェーンでお客さまへつなげる。新しいチャレンジが始まっている。

MEMS技術を核とした新たな成長戦略

Murata Electronics Oyは、自動車の幅広い制御を行う加速度センサ、ジャイロセンサ、傾斜センサを主力製品としている。1991年に設立されたVTI Technologies Oyが前身で、本社はフィンランドにある。2012年1月からムラタグループに加わった。シリコンベースの各種MEMSセンサの開発、製造とマーケティングでは20年以上のキャリアがある。独自の3D-MEMS技術は、自動車向け、産業機器向け、医療機器向けで評価が高く、その技術を利用した製品は加速度、傾斜、衝撃、振動、圧力などの測定に利用されている。VTIが重点的に取り組んできた自動車市場の事業基盤が、ムラタの開発力や販売力と相まって、将来にわたる成長につながると期待している。クルマはより軽量化して燃費をよくする方向にあるので、部品点数は限りなく少なくしたいというニーズがある。こうした場面で、ムラタの材料から開発できる技術やパッケージ化の技術が生きてくる。VTIが保有していた技術とムラタ独自の技術の融合が、顧客にも複数のメリットをもたらすと思う。私自身がその橋渡し役として、いろいろな意味で貢献したいと考えている。

車載用ではESC、TPMSなど クルマの安全を担う製品群

われわれの技術は自動車の幅広い分野に応用されている。例えば、ESC (エレクトリック・スタビリティー・コントロール) は、急なハンドル操作時や滑りやすい路面を走行中に、車両の横滑りを感知して自動的に車両の進行方向を保つように制御する技術。曲がるときに前輪が外側に滑るアンダーステアなのか、後輪が滑るオーバーステアなのかを、0.数秒で計測する加速度センサを設計し、製造している。圧力センサは、タイヤの空気圧の計測に使われている。タイヤ内にセンサモジュール、車内に受信機を設け、走っているタイヤの状況をドライバーに知らせる。すでに航空機のタイヤ空気圧を計測するシステムとして数多くの実績がある。自動車のタイヤ空気圧監視システム (TPMS) に関しては、北米で2007年に法規制化され、欧州でも2012年11月以降販売される新車への搭載が義務化された。日本や中国でも法制化に向けての検討が開始されており、市場拡大が望める。今後は、エンジンの噴射圧力の計測や油圧の計測など、より使用環境の厳しいところでの採用も期待されている。

MEMS (メムス: マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)

微小電気機械素子とその製作技術のことで、センサ、アクチュエータ、電子回路などをひとつのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したデバイスを指すこともある。半導体プロセス技術を用いて形成した3次元微細構造を持つシステムで、ムラタではMEMSジャイロセンサの量産化に成功している。ジャイロセンサは回転が生じたときに発生する角速度を測る慣性力センサで、カメラの手ぶれ補正やカーナビゲーションシステムの位置検出精度の向上に使われている。

車載分野に関心を示す企業は多い、さまざまな企業が参入してくることでクルマは新たな成長を遂げると思う

今後はコネクティビティ 安全と楽しさがキーワード

これからの製品は、現行用途の拡大もあるが、もっと「人」にフォーカスしていきたいと考えている。センシングの技術を使ってマシン対ヒューマン、ヒューマン対ヒューマンのコネクティビティ (相互接続) を目指したい。クルマを買うのは人なので、技術だけではなく、人とクルマのかかわり方に興味を持っている。まだ具体的な製品にはなっていないが、例えば曲がろうとしているクルマが、他のクルマに情報を発信して、対向してくるクルマと接触しそうな場合にはブレーキ圧を自動で上げるとか、シートベルトをきつく締めるとか。事故を起こすと自動的に知らせる仕組みは実用化間近だが、アクティブ・セーフティ (予防安全) という観点から、居眠り運転の防止や飲酒運転の予防といったことも考えていく。クルマだけの制御ではなく、人もかかわったセンシングに取り組んでいきたい。製品化されるまでが長いことから考えて、少なくとも5年くらいはかかるだろう。基本は事故をなくすこと、事故死亡者数を減らすこと。「安全」と「楽しさ」がこれからのキーワードになると思う。

車載では中国がターゲット 異業種参入で自動車産業は面白くなる

2013年1月から上海に赴任し、日本と韓国を除いたアジア市場の新規開拓を担当している。車載という切り口では、やはり期待は中国市場。ローカルでティア0やティア1も増えていると聞く。われわれの製品が採用されるには、何らかのきっかけが必要だとは思うが、例えば国策として、ABS (アンチロック・ブレーキ・システム) やサスペンションセンサ、盗難防止機能の搭載など、車両制御システムを法制化するという方向に進めば、市場はますます面白くなる。すでに従来のティア0以外の企業でもクルマを作っている。自動車産業はひとつの変換点にきているとも考えられる。車載分野はエレクトロニクスを始め、異業種からの新規参入も多く、関心が高まっている。ムラタも車載用途を拡大しようとしている。従来の自動車関連の産業以外に、違う考えが入ってくることは、いい刺激になると思う。クルマを違う観点で見ることができるし、いろいろな人がかかわってクルマを作ったら面白いと考えている。これまで車載用センサの販売を担当してきた者として、ムラタと車載分野のコネクティビティ、その役割を担いたいと思っている。

Murata Electronics Oy

自動車、医療機器、産業用機器、コンシューマーエレクトロニクス向けの加速度センサ、傾斜センサ、ジャイロセンサが主力製品。これらのセンサは、安全性と快適性向上に貢献するさまざまな製品に幅広く利用されている。中でもシリコンMEMS容量式センサの評価は高く、3D-MEMS技術によって製造されている。ムラタの完全子会社であるMurata Electronics Europe B.V.によって、VTI Technologies Oyが2012年1月30日に買収され、2012年5月25日にMurata Electronics Oyに社名を変更した。ムラタが保有する製品群に、新たなMEMSセンサ製品群を加え、急速に拡大するMEMSセンサ市場において事業を強化、拡大している。

Murata Electronics Oy