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そのサイズ、米粒の
10,000分の1以下。
小さな力で世界を支え、
宇宙を拓く

私たちが毎日の暮らしで使うスマートフォンやPC、家電製品、自動車などは「動いて当たり前」。でも実は、その当たり前を実現するのは簡単なことではないことをご存知でしょうか。安定して動くこと、設計通りの性能を発揮すること――
それを支えているのは、米粒の10,000分の1ほどのサイズしかない「コンデンサ」という部品。コンデンサの商品技術を担当する山口さんと開発を担当する平井さんに、小さなコンデンサが叶える大きな未来、「Small is Dynamic.」にかける想いについてお聞きしました。

セラミックコンデンサ事業本部 販売推進統括部の山口さん(写真左)と同事業本部 技術開発統括部の平井さん(写真右)。

電化製品を正常に動かすための
「縁の下の力持ち」

―― コンデンサとは、どんな役割を持つ部品?

山口:もともとラジオで使われ始めた部品で、一時的に電気を蓄えたり放出したりする役割を持っています。実は電化製品の中に流れる電気は一定ではありません。電圧の変動やノイズが常に発生しているのですが、そのままの状態で電流を流しても電子回路がうまく働かないのです。そこでコンデンサが電圧のアップダウンを抑えたり、ノイズを取り除いたり、周波数に応じて信号をより分けたりして、うまく電化製品が動くように「電気の状態を整える」役割を担ってくれるんです。

平井:ラジオ以降は、テレビ、PC、携帯電話、スマートフォン……と電化製品が進化するとともに、中に組み込まれる半導体などの部品が増えて高性能化。それと同時に必要とされるコンデンサの数も増え、携帯電話では約250個、PCでは約750個、スマートフォンのハイエンドモデルではなんと約1,800個!これは組み込まれているすべての部品の大半を占める数。今や高性能の電子機器は「コンデンサの集合体」であり、コンデンサは私たちの暮らしに欠かせない存在だと思います。

――コンデンサそのものはどう進化してきた?

平井:ひと言で言うと、高電圧化と大容量化ですね。中に組み込まれる多くの高性能部品を安定して動かすためには、蓄えられる電気の容量を増やしたり、高い電圧や幅広い周波数をカバーしたりすることが必要になります。一方で、私たちが使っているスマートフォンはどんどん処理スピードが上がり、複雑な機能を持ち、バッテリーも長持ちするように進化していますが、サイズはほとんど変わっていませんよね。つまり“小型化”も同時に進める必要がありました。

山口:そうなんです。でも、小型化すると蓄えられる電気の量は少なくなってしまう。小型化と大容量化は相反するもののため両立させるのは非常に難しいのですが、それを実現したのが「積層セラミックコンデンサ(=以下、MLCC)」です。セラミックスのシートの上に電極のペーストを敷き、それらを何百層にも積み重ねてミルフィーユ状にしたことで、小型ながら大容量化・高性能化を実現したのです。

何層も緻密に重ね合わせることで大容量を実現するMLCC。
1,000層以上からなる製品も!

吹けば飛ぶほどの微小な部品が、
宇宙開発やウェルネスへの
大きな希望に

――コンデンサにおける「Small is Dynamic.」とは?

山口:当社が2024年9月に世界で初めて(※1)開発した、世界最小のMLCCはまさに“Small”。0.16mm×0.08mmと米粒の10,000分の1以下の大きさで、1辺の長さが髪の毛の太さほどしかないんです。このサイズになると鼻息でも飛んでしまうくらいの軽さなので、そもそも基板実装が非常に難しいんですよね。そこで当社では、すでに量産化されているMLCCについては、基板実装プロセスそのものを実装機メーカーと共同で開発。正直、こんなに小さいものが正しく配置されて実装されることができるなんて、と自分でも驚いています。
※1 2024年9月18日当社調べ。

平井:一方、“Dynamic”の観点だと、当社のコンデンサが人工衛星やH3ロケットなど宇宙で活躍する電子機器にも使われていること、でしょうか。どんな部品でも言えることですが、自動車など人の命が関わる製品に使用される部品には非常に高いレベルでの品質・性能が求められます。動かない、反応しないなどのトラブルが大きな事故に繋がりかねないからです。とくに宇宙では地球上とはまったく違う環境にさらされる上、簡単に取り替えができません。だからこそコンデンサにも長く安定して使える品質、厳しい環境でも長持ちする耐久性が求められます。要求される条件を満たすスペックが評価され、宇宙開発の一助となっていることを誇らしく思いますね。

山口:とくにMLCCは当社にとって世界シェアNo.1(※2)の製品。世界中のさまざまな製品に使われているコンデンサの“3つに1つは当社製”と言っても過言ではなく、これまでの販売累計は20兆個以上!非常に小さい製品にも関わらず、並べると地球から月を40往復できるくらいの量を供給しているんです。すでに当社のコンデンサは身近な電子機器のほとんどに使われていると言っても過言ではありません。普段目にすることがない“縁の下の力持ち”のような存在なので気づく人はいないと思いますが、世界中の人がムラタのコンデンサを使ってくれている――それもDynamicな一面だと感じますね。

※2 世界シェア率40%(2025年3月31日のデータより)

――今後、コンデンサで
どのような未来を実現していきたいですか。

山口:今後、コンデンサがさらに小型化していけば、超小型電子機器として人体に搭載されるなどウェルネスの領域でも社会に貢献できるかもしれません。また絶対零度に近い極低温でないと稼働できない量子コンピュータの電子部品に使える製品も探求してみたいですね。私たちの生活を劇的に変える電子機器に私たちのコンデンサが搭載される未来にワクワクしています。

平井:ウェルネス領域で言えば、コンデンサのさらなる小型化によって、今までになかったようなウェアラブル機器が生まれる可能性にも繋がっていると思います。また生成AIが急激に進化したことにより、これまで以上に高い性能を持った電子機器が出てくるかもしれない。ほんの小さな部品だからこそ、誰も見たことのない未来社会を実現する大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。