グリーンサプライチェーン構築を目指して
〜水素燃料電池トラックを通じた環境と社会への貢献〜(後編)

3.エレクトロニクス産業のイノベーターとして行動を起こし、先進的な事例を作る

中華圏の営業拠点では、物流領域における温室効果ガス(GHG)排出量削減を重要テーマに掲げていましたが、ムラタ単独で行うには限界があり、フォワーダーの支援・協働が不可欠な状況にありました。そんなある日、日郵物流(中国)有限公司(以下「郵船ロジ」)から水素燃料電池トラックに関する提案を受けます。

高澤「走行中にCO2を排出せず、水素製造時もCO2を排出しない水素燃料電池トラックは、ムラタが掲げる重点課題(マテリアリティ)に合致し、中国政府の方針にも沿うものです。水素燃料電池トラックは中華圏ではあまり走っておらず、注目度が非常に高い点もポジティブな要素でした。当然、コストはかかりますが、ムラタのスローガンである『Innovator in Electronics』に照らし合わせたとき、環境や社会への貢献を真摯に考え、イノベーターとして行動を起こす価値は極めて大きい。水素燃料電池トラックは先進的な事例の1つになると考えました」

水素燃料電池トラックへの転換はGHG排出量の削減インパクトも大きいと高澤さんは続けます。

高澤「MCIと郵船ロジさんとのプロジェクトと並行して、無錫の工場では物流企業である江蘇佳利達国際物流股份有限公司(以下「JD-LINK」)と協業したプロジェクトが進んでいました。結果的に、郵船ロジさんの水素燃料電池トラック1台が無錫市の工場から隣接する蘇州市の倉庫までを走り、JD-LINKさんの水素燃料電池トラック1台が蘇州エリアの複数の仕入れ先を巡回して工場に納入するルートを毎日走っています。これらの走行距離や物量からCO2削減量を見える化しており、第一段階では従来のガソリン車と比べて炭素排出を50トン*近く削減し、無錫の生産拠点に年間2,518トン超の再生可能エネルギーによる輸送サービスを提供できる見込みです」
*内部路線の輸送量及び100キロの燃費に基づいて計算

4.従来のQCDSから発想を広げ、新たな価値を生み出していくことの重要性

水素燃料電池トラックの荷台に入っているムラタのロゴは、持続可能な未来を目指す当社の姿勢を象徴する重要なポイントです。

高澤「環境負荷低減の効果のみならず、こうした取り組みを社内外に広くPRすることも重要であると考え、ムラタのロゴが入った水素燃料電池トラックが誕生しました。ムラタのロゴと共にサステナブルなトラックが中国の街を走ることで、ムラタや環境への関心の輪が広がっていくことは、今回のプロジェクトの大きなポイントです。というのも、サプライチェーンの中でも物流領域はなかなか社外にPRする機会がなかったためです」

ムラタのロゴが入った水素燃料電池トラック

2024年5月6日には、政府関係者などを招いた水素燃料電池トラックの発車式を無錫市の工場で実施。多くのメディアに取り上げられるなど、大きな注目を集めました。

発車式の様子

高澤「エレクトロニクス産業のイノベーターとして先駆的かつ先進的な事例を作ると同時に、物流領域の取り組みを大々的にPRできたことの価値は極めて大きいと感じています。物流の現場で働く従業員のモチベーションも上がり、さまざまな好影響をもたらしています。また、郵船ロジさんやJD-LINKさんを通じて、ほかの企業も水素燃料電池トラックに興味を持ち始めているそうで、環境負荷低減の取り組みが広がっていくことで、環境に、社会に貢献できていると実感しています」

水素燃料電池トラックを通じたグリーンサプライチェーン構築に携わった経験から、高澤さんは発想の転換が重要であることを再認識したと言います。

高澤「物流領域は従来のQCDS(Quality/Cost/Delivery/Service)の発想がベースにあり、そこを高めることがビジネスへの貢献につながります。それに加えて、環境(Environment)も含めたQCDSEに発想を広げていくことも重要ですし、DXも欠かせません。こうしたファクターが増えることで、物流領域の現場での意識向上や新たなアイデアの創出につながってくると思います。そのために、今後も社内の横の連携を強化し、外部企業のプロフェッショナルな意見に耳を傾けながら、新たな価値を生み出すことにチャレンジしていきたいですね」

※掲載している情報は2025年2月時点のものです。

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