村田製作所のモノづくりの原点
「小集団活動」

村田製作所(以下、ムラタ)では、各拠点で現場改善を目的とした小集団活動が積極的に実施されており、拠点間のコミュニケーションも盛んに行われています。

本記事ではムラタのモノづくりの原点ともいえる、小集団活動の歴史や各拠点および全社的な考え方と取り組み、今後の展望などについて、大森・竹田・佐々木の3名が語り合いました。

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  • 岡山村田製作所(以下、岡山ムラタ):大森
  • 東北村田製作所(以下、東北ムラタ):竹田
  • 福井村田製作所(以下、福井ムラタ):佐々木

時代とともに磨かれてきた、小集団活動の確かな歩み

大森:
ムラタでの小集団活動の歴史は、「戦後のモノづくり」の歴史とつながっています。終戦後、物資が不足していた1950年頃の日本では、製品の質よりも量が重要でした。そこに海外から「品質管理(QC:Quality Control)」の考え方が輸入され、日本でも注目されるようになりました。
そんなQCを製造現場で実践するための活動が「小集団活動」です。
1962年頃、国内自動車メーカーを起点に小集団活動が全国に広がり、1969年からムラタでも活動を開始しました。福井ムラタから始まり、2004年に岡山ムラタ、2024年には事業譲渡で加わった東北ムラタと、各拠点で小集団活動が盛んになりました。
長い歴史の中で活動が一時休止することはあったものの、今につながっています。
佐々木:
小集団活動はモノづくりに必要不可欠なので、続いてきたのだと思います。
大森:
ただ、近年だとコロナ禍で活動休止の危機を感じました。ソーシャルディスタンスなどの制約で集まることもできませんでした。
しかし、ウェブやオンラインミーティングを駆使した新しい活動スタイルへと好転できました。以前よりも柔軟で活発な活動へと変化し、今は拠点間の距離が離れていても、広く交流するようになりました。
竹田:
普段の交流に加え、ムラタには国内外の拠点の人たちが集まる「全社小集団活動発表大会」もあり、今年で11回目の開催です。
佐々木:
こうした発表会が開催される理由は、ムラタが小集団活動を重視していることにあります。
大森:
2025年現在で、ムラタ全体において約40拠点、約3,000ものチームが小集団活動を行っています。
この数字から、私が想像していた以上に活動が広がっていることがわかり驚きました。
佐々木:
各現場で当たり前かのように改善活動を実施していますが、改めて考えてみると、ムラタの社是と密接に関わっていると感じます。
社是が自然と従業員に浸透しているのでしょうね。

各拠点の小集団活動について

【東北ムラタ】手探りの一歩から重ねた交流が、仲間と未来を育てる

大森:
東北ムラタは小集団活動を開始して2年目でしたね。
竹田:
はい。2017年9月にムラタに仲間入りし、2024年度から小集団活動を始めました。
事業譲渡以前にも似た活動はありましたが、トップダウンで報告することが目的化していました。
当時を知る製造部からは、報告のための活動はしたくないという意見があり、まずは“発表をしない”ことを前提に活動をスタートしました。
大森:
竹田さんは小集団活動にどのように関わっていますか。
竹田:
私は、事務局として活動に関わっています。
当初は東北ムラタには指導者がおらず、私自身も活動経験がない状態でした。
そこで、富山ムラタから講師に来ていただき、私は研修の企画や活動支援計画の立案に関わりました。また、他の事例を学ぶために、私だけでなく他の事務局やメンバーにも声をかけ、東北支部の発表会を聴講しました。さらに、本社主催の事務局対面交流会にも参加し、現場や事務局とのつながりを広げました。
こうした交流を通じて、人材育成の意味を私自身も、他の事務局メンバーも理解できるようになり、互いに成長することができました。
当初は発表をしないという方針でしたが、活動を続ける中で「成果を報告する場がほしい」とメンバーから要望があり、ポスターセッション形式の発表会を企画しました。
スタート時は活動に後ろ向きだったメンバーの上司からも、活動の支援・指導に対して「ありがとう」という言葉をもらうことができました。みんなが小集団活動の目的や意義を理解してくれたと感じました。苦労も多かったですが、良いスタートでした。
大森:
活動を通して「ありがとう」と感謝を伝える・伝えられることが多く、それがモチベーションにつながっています。
佐々木:
まさに、社是にある「感謝する人びととともに運営する」という言葉を体現しているといえますね。
竹田:
みんなで力を合わせて物事を進めることが、ムラタの良いところだと実感しました。
私も小集団活動は、社是につながる取り組みだと感じています。

【岡山ムラタ】楽しむ心が仲間をつなぎ、互いを高め合う力へと変わっていく

大森:
岡山ムラタでは2004年から小集団活動が始まりましたが、当初は結果重視でした。
拠点内の大会でも、金額的な効果が大きいチームが評価される状況が10~15年くらい続いていました。
そうした状況に違和感を抱いていたところ、同じような経験をした他企業の方々と交流させていただく機会があり、改めて「小集団活動=人材育成」だということに気付くことができました。
金額的な効果だけでなく、社是にある「信用の蓄積につとめ」「感謝する人びととともに運営する」ことの重要性に立ち返り、チームビルディングにも目を向けるようになりました。
竹田:
岡山ムラタではユニークなチームビルディングの手法も実践していますよね。
大森:
カードゲームやおもちゃを使った研修にも挑戦するなど、みんなが楽しんで取り組めるような企画も考えています。
竹田:
とても面白そうな企画ですね。
大森:
私自身これまでたくさん失敗しながら挑戦して、孤独に活動していた時期もありました。
しかし、これから小集団活動を始める人に私と同じ経験をしてほしくありません。だからこそ、楽しく取り組めるチームビルディングやリーダーシップの手法を伝えたいと思っています。

【福井ムラタ】現場で交わす小さな声かけが、信頼と変化を生む原動力になる

竹田:
佐々木さんは、福井ムラタで実際に現場の人たちと接していますね。
佐々木:
そうですね。私は毎日現場の人たちに声をかけたり、チームで会合を開いたりして、色々な悩みを聞いています。
相談窓口を設けてはいますが、そこに来ることをためらう人もいます。そこで、私は一人ひとりに対して「今、何か悩んでいることはないですか」と声をかけることにしました。
すると、普段は聞けない本当の悩みなど、素直な返答が得られるようになりました。
竹田:
福井ムラタはチームの数が多いですよね。何チーム程度あるのでしょうか。
佐々木:
福井ムラタは製造部の小集団活動だけで約140チームあります。
それ以外にも現場革新活動や安全衛生に関する5S活動なども含めると、約300チームにのぼります。
チームの数は多いのですが、できるだけ私から声をかけて、みんなに寄り添うようにしています。
竹田:
活動メンバーの心の内を引き出すには、信頼関係が大切ですよね。
佐々木:
私のような小集団活動の指導士やインストラクターは現場での認知度が低く、みんなは私の顔を知らないことが多いのです。
「では、私から顔を売りに行こう」と思ったのが、声かけのきっかけです。
知らない相手に、悩みを打ち明けることは難しいですから。
大森:
「全員を助けたい」という気持ちから来るものなのでしょうか。
佐々木:
人それぞれ悩みが違うので、できれば全員をサポートしたいと思っています。
みんなには、気持ちよく前向きに小集団活動に取り組んでもらいたいのです。
竹田:
小集団活動は業務とは異なる活動なので大変ですし、現場の苦労や悩みも尽きませんよね。
しかし、小集団活動で現場が改善すると、結果的に自分自身の負担軽減にもつながります。
自分たちで困りごとを解決すると、「やらされている感覚」もなくなりますよね。
佐々木:
そうです。現場に直接足を運ぶと、私自身も現場力の向上を肌で感じます。
「ここが良くなっている」「作業を削減できている」と実感できますし、個人の成長も見えるのです。
竹田:
個人はもちろん、チームの成長も見えますよね。
それに、現場の人たちが喜んでいる姿を見ると嬉しいです。
佐々木:
「小集団活動をやって良かった」と聞くと嬉しいですね。
ただし、その声は現場に行かないと聞けません。ずっと現場に寄り添っていないと、どこがどう成長しているのかわからないため、現場での声かけは長年続けています。
大森:
人の成長は、数値だけで測ることができませんので。
佐々木:
だからこそ、自ら現場に行き、現場力の向上や個人の成長の根拠を確かめる必要があるのです。
同時に、現場の変化が一目瞭然になるような小集団活動を目指すことも大切です。

協力と感謝の輪が拠点を越え、組織をさらに強くしていく

竹田:
東北ムラタでの活動立ち上げ時は、私一人で行き詰まって苦しくなることも多かったです。
しかし、対面交流会で他の拠点の人たちと接するうちに、チーム内でカバーし合い、みんなで一丸となって改善する姿勢を学ぶことができました。小集団活動に関わるみなさんは、本当に優しくてポジティブです。
どの拠点の人も親切にサポートしてくれたことが印象的でした。
佐々木:
小集団活動以外の分野では、拠点間の交流があまりないのでしょうか。
大森:
拠点間の交流はありますが、小集団活動は特に関わりが密だと思います。
あと、竹田さんが言うように、みんなが優しいです。
小集団活動は、改善の手法だけではなく、チームワークも学ぶ取り組みです。チームワークの重要性を知っている人たちだからこそ、みんなが優しく、助け合いの精神を持っているのです。
竹田:
そうですね。困りごとがあれば、すぐにアドバイスがもらえます。
拠点間のつながりのおかげで、私は活動を続けて来られました。もしも私が東北ムラタに閉じこもって孤独に活動していたら、心が折れていたかもしれません。
佐々木:
とにかくつながりを作るという竹田さんの判断は正解だと思います。
小集団活動では、互いに感謝して協力し合いながら成長することで、成果もついてきます。
そうした点でもムラタの社是と小集団活動は親和性が高いと感じます。
大森:
ムラタの小集団活動は拠点によって特色が異なりますが、それぞれの拠点が刺激し合い、高め合っている気がします。
佐々木:
お互いを尊重し合っていますよね。誰も自分の価値観を押し付けませんし、特色が違っていても良いところは参考にし合っています。
大森:
たとえば、岡山ムラタと出雲ムラタでは拠点の特色がかなり異なっていながらも、「改善フェス」という地域イベントを共同開催しています。地域の他の企業や高校の方々にも参加していただき、とても良い刺激を受けました。
「改善フェス」での小集団活動は、社是にある「文化の発展に貢献し」という領域にも踏み込んでいると感じます。

変わらぬ姿勢で積み重ねていく未来

佐々木:
私は小集団活動の指導士として10年ほど活動してきました。経験やノウハウ、対応方法の引き出しは豊富なのですが、まだそれらを次世代に伝承できていません。経験から得た暗黙知などもたくさんあります。
それらを他の人たちに展開して、私が10年かけて得たものを、みんなが1~2年でマスターできるようにしたいと思っています。
こうしたスピード感のある人材育成で、現場を良くしていきたいです。
竹田:
東北エリアも、北陸エリアのように活動を盛り上げていきたいと思っています。
そのために東北エリア内の他の拠点とつながりを作りたいです。
改善活動(問題解決)を通じて成功体験を積むことができれば、従業員一人ひとりが成長を実感し、組織全体の改善が進むはずです。
独りで悩むことなく、チームで活動できる小集団活動を盛り上げ、現場力の向上に貢献していきたいです。
大森:
私も竹田さんのように孤独に活動していた時期もありましたが、小集団活動を通して様々な部門の人や他企業の事務局の方などとつながることで、考えが変わってきました。
普段関わらない人たちとつながって、自分の世界が広がったと感じています。様々な拠点の人たちとつながって、助け合えることが今すごく幸せです。
なので、今の自分のように幸せに働ける人を増やしたいと考えています。
小集団活動は、現場の一番小さな単位なので、そこで楽しく活動できれば、現場の人たちみんなが幸せになれるはずです。
「ムラタの人たちを幸せにしていく」ということが、自分の使命だと感じています。

海外拠点での取り組み

スッターチャイ

Murata Electronics (Thailand), Ltd.

スッターチャイ

Murata Electronics (Thailand), Ltd.(以下、タイムラタ)は、1997年に小集団活動を開始して以来、継続的な取り組みを行っています。2025年時点で2,128チーム、14,450名が活動に参加し、その成果は社内のみならずタイ国内においても高く評価されています。数々の受賞歴は、メンバーにとって大きな誇りであり、会社を代表して活動できることは、一人ひとりのモチベーション向上と仕事への責任感を育む原動力や誇りとなっています。

長年の活動を通じて高い参加実績を築いてきたタイムラタは、今後も一層の価値創出を目指し、QCツールや手法を正しく効果的に使いこなして、問題の真の原因を見極める分析力強化に重点を置いて取り組みます。私達も日本と同様、小集団活動は現場改善だけでなく、人材育成にもつながると考えています。今後も、タイムラタならではの特色やタイの文化を尊重しながら、日本を含む海外拠点との連携を深め、小集団活動に関する知識や実践事例の共有を通じて、互いに学び合うことを目指してまいります。

張

Wuxi Murata Electronics Co., Ltd.

Wuxi Murata Electronics Co., Ltd.(以下、無錫ムラタ)では2009年に品質保証部門を新設し、小集団活動を開始しました。翌2010年からは、日本からの支援・指導を受けながら、活動を全社へ段階的に展開し、推進体制と教育体制を整備してきました。

現在は半期ごとに、活動の進捗や成果を共有する発表会を開催し、チーム間の情報共有や相互学習を促進しています。またこれまで継続してきた小集団活動をさらに質の高いものへと発展させるため、DXを活用した活動管理システムを開発し、全てのプロセスのシステム化と管理効率の向上を目指しています。

日本国内における小集団活動は拠点ごとに特色があり、課題選定の方法やストーリー構成の論理性、QC手法の効果的な活用をはじめ、参考になる取り組みが数多く行われ、全体として非常に高いレベルを維持し、職場の雰囲気も活気に満ちています。無錫ムラタでもこうした事例から得た知見を活動改善に反映し、成果の向上と人材育成の両面でさらなる発展を目指してまいります。