2030年に向け、社会と産業はAI・デジタル技術の目覚ましい進展により変革期を迎えています。私たちの生活やビジネスの現場でも、フィジカル空間(現実空間)とサイバー空間(仮想空間)がリアルタイムで連携する「デジタルツイン」が活用され始めています。当社はこの変化を捉え、「イノベーションで社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献する」という企業としてのありたい姿を掲げています。今後も「Global No.1部品メーカー」を目指し、長期構想「Vision2030」の実現に向けて全社一丸となって取り組んでいきます。
2021年11月に発表した「Vision2030」では、2030年に向けた社会や産業の大きな変化を見据え、当社が果たすべき役割や成長戦略を明確化しました。電子部品業界を取り巻く事業環境は、ここ数年で急速かつ複雑に進化しています。なかでも、AIの進化と普及によってデジタルツインが実現され、社会や産業のあり方そのものを変えつつあります。
デジタルツインでは、フィジカル空間のあらゆるデータが、無線通信技術によってサイバー空間にリアルタイムで転送されます。サイバー空間では、AIが膨大なデータを解析し、シミュレーションを重ねたうえで最適な解決策や意思決定を導き出します。その情報が再びフィジカル空間にフィードバックされることで、私たちの日常やビジネスがより円滑になっていくのです。
こうしたデジタルツインは、すでに当社のモノづくり現場にも浸透しつつあります。例えば、スマートファクトリーの推進によって、生産ラインで発生する不良品の要因をデータで瞬時に分析し、その情報を直ちに現場にフィードバックすることで、発生要因そのものを未然に防ぐ「予知保全」の実現に取り組んでいます。現場の知見とAI・デジタル技術の融合は、製造業全体の高度化や効率化を着実に推し進めています。
また、近い将来では医療やウェルネスの分野においても、健康状態がリアルタイムでサイバー空間に送信され、AIが膨大なバイタルデータを解析することによって、最適な診断や治療が即時にフィードバックされる社会が実現するであろうと予想しています。これにより、予防医療の高度化や健康寿命の大幅な延伸が見込まれるなど、社会全体のウェルビーイング向上にも貢献できると考えています。
今後、デジタルツインでは、フィジカル空間における多様なデータ取得・デジタル化が一層重要性を増します。その中で当社が発揮できる強みは、「軽薄短小 / 小型大容量」「広域帯・低損失」「高効率・高電力密度 / パッケージ技術」といった技術領域です。これらの技術は、急速に発展するデジタル社会の基盤を支える存在として、ますますその価値が高まるものと確信しています。
当社はエレクトロニクス業界において、約15年周期で大きなイノベーションの波を経験し、その節目ごとに存在感を発揮してきました。1985年には家電の小型化ブームに応え、軽薄短小な製品で新たな市場を切りひらきました。2000年にはノートPCや携帯電話の進化に対応し、高周波対応のモジュール・フィルタをグローバルに展開し、2015年にはスマートフォン市場の急拡大とともに多くの製品を普及させてきました。こうした歴史は、当社が技術と市場の変化を的確に捉え、業界の変革を牽引し続けてきた証です。そして今、AIの進化による変革が予想以上に早いペースで進行しています。従来の「デジタルツイン」を超え、フィジカル空間とサイバー空間がリアルタイムでシンクロすることで、データの収集→分析・シミュレーション→フィードバックされた情報をもとにした最適化までを人の手を介さずに実行される未来「デジタルシンク※」の世界へと、さらなる進化が到来すると私は考えています。このような人々の生活や産業活動が無意識のうちに最適化される時代が迫りつつあります。
当社はこの新たな波にいち早く備え、短期的な成果だけではなく、長期的な視野で技術革新と価値創出の両立を図る経営を今後も継続することで「Global No.1部品メーカー」として、社会を支える価値を創出し続けていきます。
- ※「デジタルシンク」は当社独自の造語であり、同名または類似の「商号」や「商標」とは一切関係ありません。