ムラタの金属材料設計技術の強みは、長年にわたり蓄積してきた材料科学の知見と高度な加工・制御技術を基盤に、用途や性能要求に応じた材料構成を精密に設計できる点にあります。特に、金属材料の加工前の状態と最終製品になるまでの中間状態を、よく観察・分析し、制御することで、理想的な性能を備えた金属材料へと仕上げています。
金属材料の性能を引き出す技術の強み:独自の粉体制御と混合技術を駆使し、用途ごとに最適な電気特性と高い信頼性を備えた電極を設計できる点にあります。長年蓄積してきた膨大な知見をもとに、材料選定から加工条件までを総合的に制御し、製品性能を最大限に引き出しています。
その一例がLCフィルタです。1つの製品の中に、①コンデンサを形成する容量電極、②インダクタを形成するライン電極、③層間を接続するためのビア電極、④製品を基板と接続する外部電極、という4種類の銅電極を組み込み、機能に応じて設計指針を変えています。例えば容量電極には薄く平滑でガラスセラミックスとの密着性が高い設計を用い、ライン電極には細く厚く大電流に耐えられる設計を採用します。
こうした機能の異なる金属材料は焼結温度が異なるため、微量添加物による成分調整や金属表面のコーティングによって、近い温度で焼結するよう制御します。さらに、製造プロセスでの安定性を考慮し、電極材料設計を最適化しています。
LCフィルタに限らず、ムラタのセラミック電子部品の全てにおいて同様の最適化が行われており、その過程で蓄積した長年の経験と技術知見の集合体こそが、「金属材料の性能を引き出す技術」の基盤となっています。
LCフィルタの断面構造図例
金属材料を複合化する技術の強み:金属と樹脂を組み合わせ、単一素材では得られない機能や性能を創出できることです。このためには、製造工程で生じる材料の変化を徹底的に分析し、金属材料と樹脂の界面状態を明らかにして、目に見えないミクロな構造を制御しています。
代表例が、パワーエレクトロニクス回路で使われるメタルアロイパワーインダクタです。金属磁性粉と絶縁性樹脂を組み合わせた複合材料に、熱と圧力を加えて充填率を高め、性能を向上させています。磁性コアの高性能化のためには、高信頼性の樹脂を金属粒子に均一に被覆させることが重要です。被膜が薄すぎても厚すぎても製品特性は劣化します。樹脂材料の選定や界面の制御方法、混錬方法の向上に取り組んでいます。
培った設計ノウハウにより、高効率で高信頼性の金属複合材料製品を提供しています。
メタルアロイパワーインダクタの断面構造図例
挿入画像の参照元: パワーインダクタ基礎講座-第1章
技術の進化
金属材料の性能を引き出す技術の進化:電子部品のさらなる小型化や高信頼性化の進展に合わせて進化してきました。1970年に積層セラミックコンデンサが実用化された当初、内部電極の厚さは10〜20µmでしたが、現在では最も薄いもので0.2µm以下にまで微細化されています。さらに、高周波帯で伝送ロスを低減するためには、内部電極には高い導電率と表面平滑性が求められます。このため、粗大粒子や不純物を極力減らし、より微粒な金属粉末を精密に制御することで、内部電極材料技術は進化を続けていきます。
また、持続可能な社会の実現に向けて、電極材料においても環境負荷の低減は避けられない課題です。リサイクル原料由来の金属材料の活用や、環境影響の少ない化学物質を用いた電極材料設計に取り組み、性能と持続可能性の両立を目指しています。
| 課題 |
技術の進化 |
| 内部電極の厚さ |
0〜20µmから最薄0.2µm以下へ |
| 高周波帯の伝送ロス |
粗大粒子や不純物の削減
微粒な金属粉末の精密制御
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| 環境負荷の低減 |
リサイクル原料由来の金属材料の活用
環境影響の少ない化学物質を用いた電極材料設計
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内部電極材料技術の進化
金属材料を複合化する技術の進化:金属材料を複合化する技術は、DC-DCコンバータに用いられるメタルアロイパワーインダクタの進化を支えています。
金属磁性粉は、電流による磁場で磁化・蓄エネルギーを行い、電流が減ると放出します。しかし、過大電流では損失増や磁化飽和が生じ、十分な蓄エネルギーが得られないという問題があります。このため、低損失材料の採用、表面絶縁性の向上、粒径分布の最適化などにより磁化飽和を抑制してきました。特に大粒径と小粒径の粉を組み合わせて充填効率を高め、磁束経路を改善することで対応できる電流を増加させています。
こうした工夫により、メタルアロイパワーインダクタは高効率かつ大電流に対応する部品へと進化してきました。AIの進化によりエレクトロニクスのエネルギー消費はますます深刻な課題となっていますが、ムラタはパワーインダクタの金属材料技術を一層進化させて持続可能な社会の実現に寄与していきます。
複合化状態と磁束との関係