振動子には、セラミックスと水晶の2種類があります。ムラタはセラミック振動子をセラロック®の名称で30年以上前に商品化しており、現在でも世界シェア70%を誇っています。特に車載市場でのシェアが高く、世界シェア90%を占めています。図2にセラミック振動子の評価回路図を示します。ICに印加する電圧や温度を可変しながら、発振振幅・発振波形・発振余裕度ほかを確認し、最適な抵抗値や容量値を決定しています。図3にセラミック振動子の評価結果一覧を示します。ムラタは発振回路が動作しているだけでなく、ICが安定に動作していることが必要と判断しており、電装市場向け振動子の判定基準に、製品の下限品での最低発振振幅を設定し、測定結果をお客様に報告しています。
次に発振回路の安定性だけでなく、セットの性能や電気特性を測定し、提供しているサービス例を3件説明します。まず1件目はHDDや光ドライブなどのPC用途で採用されている水晶振動子のUSB通信品質テスト結果です
(図4) 。USBやSATA通信に対応した機器は、その通信認証を取得するために必ず信号品質テストを実施しています。ムラタでは通常ICマッチングデータに加え、USBやSATA通信の信号品質の確認データなども取得し、提出しています。これにより、お客様での評価工数削減に貢献しています。
2件目は、2014年よりWi-Fi®などのRF市場向け高精度水晶振動子の量産を開始しており、トータル周波数精度±20ppm以下に対応したICマッチングサービスを行っています。RF市場ではスマートフォンのような電池駆動のセットが主流であり、セットメーカーやICメーカーは少しでも電池を長持ちさせるために短時間動作の低消費電力化にも力を入れています。図5にBLEモジュールにおけるμSスケールでの消費電流の測定結果を示します。BLEメーカーやICメーカーはこれらのデータを参考に使用する水晶振動子の周波数や製品サイズなどを決定しています。
3件目は、Wi-Fi®向けEVM測定サービスです。EVMとは無線信号の変調精度のパラメータであり、EVMの値がよいほど、無線の通信品質がよくなります。図6にEVM測定結果を示します。現在、振動子パラメータによるEVM改善を検討しており、発振回路定数でEVMが低減できないかを検討中です。またEVMを改善するための振動子のパラメータも明らかになってきており、それらのパラメータを新商品の仕様に反映させています。