プロジェクト参加の経緯
村田製作所には、日常業務以外に新しい技術に挑戦する場があります。そのような企業文化の中に生きるエンジニアたちが、今回の挑戦への参加を決めた理由についてお伺いしました。
- 松岡:
- 総合リーダーの福永から声をかけられ、ふたつ返事で引き受けました。以前、福永はムラタセイサク君、ムラタセイコちゃんの開発に関わっており、その姿を見て技術者として憧れを抱いていました。番組では、極限状態に追い込まれる可能性があることも知っていました。しかし、そういう状況で自分にどんなことができるのか、福永のような経験をしてみたい、ということで参加を決意しました。
- 山口:
- 自分の能力がどこまで通じるのか、腕を試してみたいという欲求、さらに普段とは違う仕事に取り組めそうだという好奇心もあり参加しました。当時、私は日常の仕事に行き詰まりを感じていましたので、そのブレークスルーの意味も込めて参加を決めました。
- 青木:
- 他部署の人とコミュニケーションを取ることが好きでした。特に知見の異なる方々と関わることが好きな一面があり、今回のチームに参加することで、さらに広い分野の技術に出会えるという好奇心で参加しました。
- 中井:
- 学生時代からロボットが大好きでした。全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)に参加した経験もあります。実は、以前友人が魔改造に出場したのですが、高専ロボコンで優秀な成績を残した彼でも魔改造では優勝できませんでした。なので自分が出て勝ちたいという思いがありました。上長から打診があり、二つ返事で参加を決めました。
楽しかったこと、苦労したこと
今回は生産設備の開発という、言わばメーカーの中では黒子的な存在のメンバーが表舞台に立ちました。日常は表に出ることも少ないメンバーは、どのようなことに喜び、そして汗を流したのでしょうか。
開発中に楽しいと感じたことと苦しいと感じたことは?
- 松岡:
- 苦労が多かったと思います。特に直前まで飛ばなかったことが最も苦しかったです。普段行っている開発という業務は、結果が分からない技術を、時間をかけて作り上げて行きます。魔改造はそれに近い試みであり、さらに過去から社内に蓄積された知見が使えないという困難がありました。楽しかったことは勝てたこと。リーダーとして、それに尽きます。
- 山口:
- 技術面でもコミュニケーション面でも新しい発見の連続でした。楽しかったこととしては、普段関わらない人たちとの議論を通じて技術に対するさまざまな思いを知ることができたことです。しかし議論するということは、技術を取捨選択することでもあり、厳しいと感じることもありました。
- 青木:
- 楽しかったことは、意欲と能力が高いメンバーと一緒に作業できたことです。たとえば一夜にして形状や機能が新しくなっていくような、日常業務では考えられない事実の実現出来事の連続に、驚くと同時に楽しみを感じました。
- 中井:
- 苦しかったことは、年上の方々に無理を言って制作を依頼した部品が不要になってしまうなど、周りを振り回してしまったことです。また、技術的な意見の衝突もありました。楽しかったこととしては、「スピード感を持って思っていることを形にし、それを評価する」という日常業務にはない経験ができたことです。
改造期間での印象的なエピソード
マシンの開発という作業のなかでは、意外な出来事も多かったと思います。そのなかで起こった印象的なエピソードについて、お伺いしました。
- 松岡:
- 当初、発射速度が高いほどトイレットペーパーは遠くに飛ぶと思っていました。発射速度を最大300Km/hにまで高めることに成功しましたが、トイレットペーパーが切れて失敗。トイレットペーパーの発射速度と引っ張る力の関係、トイレットペーパーを巻き出すときの回転抵抗が逆向きに働くという物理現象の壁を感じました。
- 山口:
- 紙切り板が手投げで50m飛んだこと。「紙切り板」とはトイレットペーパーを切る板のことです。理想の飛ばし方を人の腕の動きからイメージするための試みでしたが、50mも飛んだときには人の腕の凄さに驚きました。
- 青木:
- その投げ方ですが、横から投げたり手首のスナップを利かせたりなど、いろいろ試しました。
- 中井:
- 短期間でまったく新しいマシンを開発するという真剣な雰囲気の中にも、面白い言葉が書かれたTシャツを着ている人、疲れて床で眠ってしまう人など、癒しやユーモアがありました。
- 松岡:
- 機械の開発という観点ではほぼ共通です。しかし社内業務には、ムダを省き効率を高めるための多くの知見があります。今回の改造では特性が分からないメンバー、限りのある予算と時間、さらに世界で初めてのマシンの開発という点で、社内で培った知見やこれまでの経験とは大きく異なりました。
- 山口:
- 強度を高めてシンプルな構造で作るという点は共通でした。しかし限りある予算と時間のなか、素材の強度などを極限まで切り詰めるという、日常の業務では考えられない部分もありました。これは、年単位で安定した動作を保証しなければならない工場の設備と、一発勝負で勝たなければならない魔改造との違いでもありました。
- 青木:
- モノづくりに必要な工程は共通と感じました。スピード感を持って行動するということや、自分の役割が決まっていない状態でも、自分の役割を見つけ出すことなどは同じだと思いました。
- 中井:
- 違った点は、メカが中心であったということです。一方で、「制御のプロとして貢献できることは」と考えたときに、メカの要素を制御で詰めていくーたとえば「あと何分の一秒詰めればどう飛ぶか」を制御で詰めていくという点は、日常の業務と同じであると感じました。
改造を通して感じた「ムラタらしさ(ムラタの強み)」とは
自社に身を置いて日常の業務に励んでいると、自社の特徴や独自性に気が付きにくいこともあると思います。今回の挑戦を通じ、日常業務と異なる体験をされたなかで、メンバーはどんな「ムラタらしさ」や「ムラタの強み」を感じたのしょうか。
- 松岡:
- 技術に真剣に向き合う人の多さと、個人の技術力を尊重し結果を出す姿勢です。若手・ベテランの隔てなく、数多く提案されるアイディアをひとつでも多く汲み上げて最後はやり切って、勝っても負けても「ドヤ顔」で終わらせることです。
- 山口:
- 勝ち方への拘りです。トイレットペーパーはたるませてから飛ばす方が切れにくいのですが、それでは飛んだときの軌跡が乱れます。ただ成功するだけではない、美しい勝ち方こそがムラタらしさであり、ムラタの強みであると思っています。
- 青木:
- 高性能はもちろんなのですが、愛着がある見た目(龍)に拘りました。機械という冷たい存在に生き物の温もりのようなものを感じさせるという技術もムラタの仕事なのではないかと思っています。
- 中井:
- 一発勝負であることから、日常業務以上に数値や回路など仕様の確認を徹底しました。急ぐときほど慎重に、かつ丁寧な仕事を心がけ必ずやり切る。それがムラタではないかと思っています。
今回の改造を振り返っての学び、業務にどう生かしていけそうか
まったく新しいマシンの開発に、日常という枠から飛び出して挑戦しました。そのなかでメンバーは何を学び、何を今後の業務に役立てていこうと感じているのでしょうか。
- 山口:
- なんといってもスピード感です。議論より「試す」と「確認」を優先することを学びました。
- 中井:
- 初めてのことでも、プロとして自分の役割を果たせるようにならなければと感じました。分野外のことであっても、制御のプロとして向き合える、その大切さを学びました。
- 青木:
- 手を動かして「やってみる」ことの大切さを学びました。言葉を戦わせるより形にして可視化することで、業務の進捗をスムーズになるのではないかと感じています。また一方で、自分で抱え込まず相手の能力を信じて委託することの大切さも学びました。
- 松岡:
- 限られた予算と時間という極限状態に置かれ、反省しなければいけない部分も含め、いろいろな気づきがありました。今回の改造を振り返り、ムラタが持つ良い部分はさらに進化させ、反省すべき点は速やかに是正していけたらと思います。
最も強く感じたことは「みんな、技術が大好きなんだ」ということ。この経験を業務に活かして、さらなる高みを目指していきたいと思っています。